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ワインガイド Vinotier
日本のワイナリー

サドヤワイナリー

sadoya / 創業 1917年
産地
山梨県甲府市
訪問
見学ツアー・試飲・ショップ・レストラン・カフェ
代表銘柄
シャトーブリヤン(赤・白)・Liel 明野シャルドネ
サドヤワイナリーの門(SADOYA)
サドヤワイナリーの門(SADOYA) / Photo: “Kofu sadoya 20250922” by 南の風(風力3), CC0(Wikimedia Commons)
どんなワイナリー?

サドヤワイナリーは、JR甲府駅北口から徒歩5分という立地が個性の、1917(大正6)年創業の都市型老舗ワイナリー(株式会社サドヤ)。1936年に開墾した自家農園でフランスから取り寄せた欧州系品種を育て、戦後に看板「シャトーブリヤン」を世に出しました。約700坪の地下セラーを見学ツアーで公開し、フランス料理のレストランも併設しています。

この記事の目次

駅から歩いて行ける老舗

ワイナリーは山あいにあるもの——その常識を覆すのがサドヤワイナリーです。場所はJR甲府駅から徒歩5分。1917(大正6)年の創業以来、市街地でワインを造り続けてきた都市型の老舗で、電車だけで訪ねられるのが何よりの強み。試飲を楽しんでも運転の心配がいりません。

油屋「佐渡屋」から、ワインの蔵へ

屋号の「サドヤ」は、江戸時代から続いた油屋「佐渡屋」に由来します。明治の終わり、1909(明治42)年に家業を洋酒・ビールの代理店「サドヤ洋酒店」へ転じ、1917(大正6)年、店を営んでいた今井精三がワインの醸造販売を始めました。これが同社の創業です(同社の年表では精三を「1代目」と数えています)。

はじめのうち、ワインは勝沼のぶどう園と契約して育てたぶどうから造られ、「甲鐵天然葡萄酒」の商標で売られていました。甲州やアメリカ系品種が中心だった当時の山梨では、ごく一般的なやり方です。

1936年、フランスから40品種——善光寺農場の開墾

転機は昭和の初めに訪れます。2代目となる今井友之助が中心になり、1936(昭和11)年、甲府市善光寺に自家農園を開墾しました。友之助はフランスの苗木商と手紙をやり取りし、醸造用のヨーロッパ系品種を約40種類取り寄せたと同社は記しています。

甲府市の取材記事によれば、友之助は、のちに巨峰を生み出すことになる大井上康に教えを受け、醸造用に加えて生食用もおよそ40種を導入。1939(昭和14)年にカベルネ・ソーヴィニヨンとセミヨンでの醸造に成功したとされます。同社の年表でも、1939年に欧州種による醸造を始め、1940年に宮内庁への納入を始めたと記されています。甲州が主役の山梨で、戦前から欧州系品種に取り組んだ系譜は、この蔵のいちばんの個性です。

戦争と「ロッシェル塩」、そして1950年の「シャトーブリヤン」

戦時中のサドヤには、ワイン以外の顔もありました。国税庁の資料によれば、ワインの醸造でできる酒石を原料とするロッシェル塩は、潜水艦などを探知する水中聴音機に使われる軍需物資で、サドヤ醸造場は国内で唯一これを製造できる場所でした。1943年からは、海軍が全国の粗酒石をサドヤに集めて精製させたといいます。ワインが「軍需産業」に組み込まれた時代を伝える、甲府ならではの史実です。

1945(昭和20)年の甲府空襲で、醸造場は全焼しました。それでも蔵は再起し、1946年に仕込んだワインを、1950(昭和25)年に「シャトーブリヤン1946」として発売します。

名前の綴りはChâteau Brillant。ボルドーの「オー・ブリオン(Brion)」とは関係なく、Brillant(輝き)に「輝き続けるように」という願いを込めたと同社は説明しています。以後、シャトーブリヤンはサドヤの看板として受け継がれ、3代目の今井裕久は1966年に渡仏してモンペリエの国立高等農学校に学ぶなど、フランスとのつながりを深めていきました。

三つの農場——善光寺・明野・東光寺

現在、同社の公式サイトが紹介する自社農場は3か所です。

農場所在地・標高面積主な品種・仕立て
サドヤ農場 善光寺甲府市善光寺・300〜350m3.0haメルロ、タナ、ソワノワール、セミヨン、甲州、マスカット・ベーリーAなど。1936年開墾の原点の畑。長梢棚仕立て
サドヤ農場 明野北杜市明野町・670〜740m3.0haカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラー、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、シェンブルガー。2024年1月取得。長梢平垣根
サドヤ農場 東光寺甲府市東光寺・264m0.2ha甲州ほか。研修用の農場

注目は明野です。北杜市の標高700m前後の冷涼な土地に垣根仕立ての畑を構えたことで、盆地の底にある善光寺の棚仕立てとは違う性格のぶどうが手に入るようになりました。同じ蔵の中に、甲府盆地の伝統と、高地の新しさが並んでいるわけです。棚と垣根の違いは第59講「ぶどう畑の一年」で詳しく扱っています。

地下に広がる700坪のセラー

地上からは想像できませんが、地下には約700坪のセラーが広がります。樽貯蔵庫、一升瓶貯蔵庫、そしてかつての貯蔵用タンクの内部をそのまま使った展示室。ワインの造り方や昔の醸造機械、オールドヴィンテージの展示なども見どころとして紹介されています。

面白いのは、看板のシャトーブリヤン赤が、樽で熟成したあと「一升瓶」で寝かされていることです(同社の2026年2月の発表による)。日本のワイン蔵らしい一升瓶の文化と、フランス式の樽熟成が一本のワインの中で出会っている——第63講「樽とオーク」を読んでから訪ねると、樽貯蔵庫の見え方が変わるはずです。

ワインのラインナップ——四つの入口

公式オンラインショップ(2026年9月時点・税込)をもとに、選び方の目安を整理します。

シリーズ主な銘柄価格帯こんな人に
シャトーブリヤン赤・白(2022年)、ミュール赤・白、ロゼ スパークリング2012(限定)3,300〜11,000円蔵の歴史ごと味わいたい、贈り物にしたい
Liel(リエル)明野シャルドネ、明野カベルネ・ソーヴィニヨン&メルロ、明野ソーヴィニヨン・ブラン&シェンブルガー、甲府甲州、高山村シャルドネほか2,970〜5,500円畑の個性を比べたい。産地名を掲げたシリーズ
オルロージュ赤・白・ロゼ、甲州醸し、マスカット・ベーリーA 樽熟成1,980〜2,750円日本の品種を気軽に試したい
一升瓶ワインモンシェルヴァン 赤・白(1,800ml)1,980円山梨の地元流で、たっぷり普段飲みを

初めてなら、まずシャトーブリヤンの赤で蔵の「背骨」を知り、次にLielの明野シリーズで新しい畑を、そして一升瓶ワインで甲府の日常の味を——という順に進むと、この蔵の100年を超える歩みがそのまま舌でたどれます。

受賞歴——ベーリーAの3年連続銀と、明野シャルドネの金

日本ワインコンクールでは、近年の受賞が続いています。

  • オルロージュ マスカット・ベーリーA 樽熟成が2023・2024・2025年と3年連続で銀賞(国内改良等品種 赤、2022・2023・2024年ヴィンテージ)。
  • 2025年は甲府甲州2024が銀賞、オルロージュ 甲州醸し2024とロゼスパークリング2024が銅賞。
  • 2026年はLiel 明野シャルドネ2025(生産1,187本)が欧州系品種 白で金賞を受けたと同社が発表しています。

2024年に取得した明野の畑にとって、取得から2年目のヴィンテージでの金賞です。また、サクラアワード2026ではシャトーブリヤン赤2022がダブルゴールドを受けたとも発表されています。マスカット・ベーリーAの樽熟成が安定して評価されている点も、樽の使い方を見るうえで興味深いところです。

訪ね方——ツアー、ショップ、レストラン

地下セラー見学ツアーは、2026年9月時点の公式案内で予約必須・所要40分程度・各回定員15名・料金1,000円(中学生以下無料)。実施時刻は月・水・木・金が11時と13時30分、土日祝が11時・13時・14時・15時・16時で、ツアーの最後にその時期のおすすめワインを1杯試飲できます(飲めない人はぶどう液)。ツアー中の動画撮影と飲食物の持ち込みは断られているので注意してください。

ショップ「サドヤ ワインブティック」は平日10〜17時、土日祝10〜18時、火曜定休。有料で他のワインを1杯ずつ試飲することもできます。

食事は、フランス料理のレストラン「レアル・ドール(Real D’or)」へ。ランチとディナーの営業で、ディナーは前日までの完全予約制、火曜定休(祝日は営業)。2階には個室もあります。敷地には貸切ウエディング会場「サドヤ シャトー・ド・プロヴァンス」もあり、ワイナリーでありながら甲府の街の社交場としての顔も持っています。

電車で山梨を巡るなら、午前中に勝沼の蔵を回り、夕方に甲府へ戻ってサドヤで締めるという組み方が便利です。勝沼側の老舗まるき葡萄酒と合わせると、勝沼の甲州の伝統と、甲府の欧州系品種の伝統という、山梨ワインの二つの流れを一日で比べられます。巡り方のコツは第51講「ワイナリー訪問」、食事で選ぶならレストラン・カフェ併設のワイナリー特集もどうぞ。山梨の産地ガイドとあわせて、甲州勢との違いを楽しんでください。

よくある質問

サドヤワイナリーはどこにある?
山梨県甲府市北口3丁目、JR甲府駅から徒歩5分ほどの市街地にあります(改札を出て北口方面)。駅近でアクセスしやすく、電車での山梨ワイナリー巡りの起点・締めくくりに組み込みやすい一軒です。
見学はできる?
できます。約700坪の地下セラー(樽貯蔵庫や一升瓶貯蔵庫、貯蔵タンクの内部を使った展示室)を巡る約40分のツアーが、予約必須・各回定員15名で開催されています。2026年9月時点の公式案内では料金1,000円(中学生以下無料)で、最後にその時期のおすすめワイン1杯の試飲付き(飲めない人はぶどう液)。実施時刻は平日と土日祝で異なります。最新の催行情報は公式サイトでご確認ください。
どんなワインが有名?
看板は「シャトーブリヤン」。1946年産を1950年に発売したのが始まりで、現行の赤2022は善光寺農場のカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロから造られています。近年は北杜市明野の畑による「Liel(リエル)」シリーズも評価を高め、「Liel 明野シャルドネ2025」が日本ワインコンクール2026で金賞を受けたと同社が発表しています。
「サドヤ」という名前の由来は?
江戸時代から続いた油屋「佐渡屋」がルーツです。1909(明治42)年に洋酒・ビールの代理店「サドヤ洋酒店」へ転業し、1917(大正6)年に今井精三がワインの醸造販売を始めました。屋号がそのままワイナリーの名前として残っています。
「シャトーブリヤン」はボルドーのシャトー・オー・ブリオンと関係がある?
ありません。綴りは「Brillant(輝き)」で、「Brion」ではありません。同社は「輝き続けるように」という願いを込めた名前だと説明しています。
値段の目安は?
公式オンラインショップ(2026年9月時点・税込)で、一升瓶ワイン「モンシェルヴァン」が1,980円、「オルロージュ」シリーズが1,980〜2,750円、「Liel」シリーズが2,970〜5,500円、「シャトーブリヤン」2022年の赤・白が各6,600円です。普段飲みから贈答用まで幅広く揃います。
食事はできる?
敷地内にフランス料理のレストラン「レアル・ドール(Real D'or)」があります。ディナーは前日までの完全予約制です。火曜定休(祝日は営業)。貸切ウエディング会場「サドヤ シャトー・ド・プロヴァンス」も併設されています。

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最終更新: 2026-09-14 / 編集: Vinotier編集部