32戸の集落の名を持つワイナリー
新巻葡萄酒は、山梨県笛吹市一宮町の新巻(あらまき)という地区にあるワイナリーです。ワイン専門メディアTerroir.mediaの取材記事によれば、新巻は32戸ほどの小さな集落で、社名はこの地名からとられています。同じ集落には、もう1軒ワイナリーがあります。
公式サイトによれば創業は1930(昭和5)年。正式な社名は新巻葡萄酒株式会社で、ワインには「ゴールドワイン」というブランド名が付けられています。
取材記事によれば、醸造免許を取ったのは現在の社長の曾祖父にあたる創業者です。その起源は、戦前の山梨で見られた「ブロックワイナリー」にあると紹介されています。近くの農家がそれぞれの畑のぶどうを持ち寄り、自分たちで飲むワインを造る施設のことで、新巻葡萄酒もそうした農家の醸造から始まりました。もともとは生食用のデラウェアなどを育てるぶどう農家で、先代のころから醸造用のぶどうの割合を増やしてきたといいます。
いまは4代目の中村紀仁さんが代表を務めています。山梨県の観光サイトによれば、醸造から瓶詰めまでを夫婦で手がけています。
ぶどうはすべて自社の畑から
公式サイトは、使うぶどうを100%自社栽培とし、原料を仕入れていないことを掲げています。取材記事によれば、自社畑は2021年時点で約1.5ヘクタール。畑はすべて新巻地区の中にあり、甲府盆地の東側の、西を向いたなだらかな斜面に広がっています。公式サイトは、周りを山に囲まれた水はけのよい扇状地と説明しています。
2021年時点の品種構成は、デラウェアが約5割、甲州が約4割、マスカット・ベーリーAが約1割でした。現在はこれにシラーが加わっています。公式ブログによれば、シラーの畑は標高約420メートルの西向き斜面の黒ボク土で、平棚に枝を長く残すX字型の剪定で育てられています。デラウェアはすべて醸造用で、種のある状態で育てているそうです。
公式サイトは、自社で使う電力を発電していることや、剪定した枝を炭にして畑の土に戻す活動にも触れています。
代表的なワイン
公式サイトに並ぶ主なワインは次のとおりです(価格は2026年10月時点の公式サイトの税込希望小売価格)。
- 新巻ワイン(デラウェア)──デラウェア100%の辛口白。720ml 1,694円、一升瓶 2,904円。その年の新酒は秋に発売され、2026年は10月2日に「新巻ワイン2026」が出ました
- ゴールドワイン甲州──甲州100%の辛口白。720ml 1,903円、一升瓶 3,520円。毎年11月3日に発売
- ゴールドワイン マスカット・ベーリーA──辛口の赤。720ml 1,903円、一升瓶 3,520円。12月に発売
- ゴールドワイン 新巻シラー──シラー100%をフランス産のオーク樽で1年熟成させた、ワイナリー限定のシリーズ。720ml 3,300円
- ゴールドワイン 新巻シラー クラレット──赤とロゼの中間の色合いに仕上げたシラー。2024年産が2026年3月に発売
一升瓶でも売られているのは、山梨の古くからのワインの飲まれ方を伝えるものです。蔵で長く寝かせてから出す「Reserve」の甲州やマスカット・ベーリーAが発売されることもあります。公式ブログによれば、地理的表示「山梨」(GI Yamanashi)の認証を受けたワインもあります。
年中無休の店頭で、無料試飲
公式サイトによれば、工場見学は受け付けていませんが、店頭で無料試飲ができます。
- 営業時間:9:00〜16:00(公式サイト。冬季の11月1日〜3月31日も9:00〜16:00と案内)
- 定休日:なし(年中無休。元日は10時開店)
- 支払い:クレジットカード、PayPayなどのキャッシュレス決済に対応
- その他:英語対応可、駐車場あり。電話・FAX・注文フォームでの通信販売も受け付け
山梨県の観光サイトには、営業時間を8:00〜18:00、見学を「可(要予約)」とする記載がありますが、公式サイトの案内とは異なります。2025年には家族の入院で一時的に営業時間を短くしていた時期もあったので、訪問前に公式サイトか電話(0553-47-0071)で確かめるのが確実です。運転する人と20歳未満は試飲できません。
アクセスと周辺
山梨県の観光サイトによれば、JR中央本線の山梨市駅から車で約20分。取材記事では、中央自動車道の一宮御坂ICから車で約9分とされています。駐車場は県の観光サイトで普通車2台分とされているので、グループで訪ねるときは注意しましょう。
同じ一宮町には、石蔵発酵槽で知られるルミエールワイナリーがあり、笛吹市の石和温泉の近くにはマルス山梨ワイナリーもあります。大きなワイナリーと、農家から始まった家族の醸造所をあわせて訪ねると、山梨のワイン造りの幅がよくわかります。産地の全体像は産地:山梨と第70講 山梨完全編で、訪問の心得は第51講 ワイナリー訪問完全編でどうぞ。

