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ワインガイド Vinotier
銘醸ワイン図鑑

プリオラート

Priorat / スペイン・カタルーニャ
産地
スペイン・カタルーニャ
スタイル
黒い粘板岩の急斜面が生む、濃く力強い山の赤
主な品種
ガルナッチャ・カリニェナ
青空の下、赤茶けた石だらけの急斜面に、支柱に沿って仕立てられた若いぶどう樹が並び、尾根に糸杉が立つ
青空の下、赤茶けた石だらけの急斜面に、支柱に沿って仕立てられた若いぶどう樹が並び、尾根に糸杉が立つ / Photo: “Vinyes del Priorat, Gratallops.” by Angela Llop, CC BY-SA 2.0(Wikimedia Commons)
このページの要点

プリオラート(Priorat)は、スペイン・カタルーニャ州タラゴナ県の山あいで造られるワインの原産地呼称です。2000年にカタルーニャ州の最上位格付けDOQ(Denominació d'Origen Qualificada)となり、スペインではリオハに次ぐ2番目の最上位産地です(国のDOCaとしての承認は2009年)。産地の面積は約1万7,600ヘクタール、そのうちぶどう畑は約2,200ヘクタール。リコレリャと呼ばれる黒い粘板岩の急斜面で、ガルナッチャとカリニェナを主体に、凝縮した力強い赤ワインを生みます。

この記事の目次

第65講「ノンアルコール&低アルコールワイン」の最後に、こう予告しました——今回の軽さの話とは、ちょうど反対側にある一本へ、と。

黒い岩の急斜面に、背の低い古いぶどうの株がしがみつくように並ぶ。一株から採れる実は1キロにも満たない。修道士が拓き、疫病と人口流出で見捨てられ、20世紀の終わりに数人の造り手が戻ってきたことで、わずか十数年のうちにスペインで二つしかない最上位の産地へ上りつめた——プリオラートは、「忘れられた山」が世界の注目を集めるまでの物語をそのまま抱えた産地です。土地、歴史、格付け、造り手の順に歩きます。

タラゴナの山あい、12の村

プリオラートは、地中海の港町タラゴナから内陸へ入った、タラゴナ県の中央部の山あいにあります。北をモンサン山塊の断崖が屏風のように囲み、西にフィゲラの山並み、東にモリョの丘。南はシウラナ川の流れに沿って開け、エブロ川の方角へ続いています。産地の地形の軸になっているのは、このシウラナ川とその支流が刻んだ谷です。

統制委員会の数字(2023年更新)では、産地の面積は1万7,629ヘクタール、そのうちぶどう畑は約2,197ヘクタール、栽培者は511。森と岩山と灌木のなかに、畑が点々と散らばる土地です(なお面積や生産者数は資料や年によって数字が揺れるので、「ぶどう畑2,000ヘクタール強」と覚えておくのが実際的です)。

原産地の区域は、9つの自治体——ラ・モレラ・デ・モンサン(スカラ・デイを含む)、グラタリョップス、ポレーラ、ポボレダ、トロジャ、ラ・ビレリャ・アルタ、ラ・ビレリャ・バイシャ、エル・リョアル、ベルムン——に、ファルセットの北部(マソス・デ・ファルセット)とエル・モラールの東部(ソラネス・デル・モラール)を加えたもの。これを格付け上は12の村と地区として扱います。

標高100メートルから750メートルまで。 統制委員会によれば、畑はベルムンやエル・モラールの低地の標高約100メートルから、ラ・モレラやポレーラの高地の約750メートルまで広がります。収穫もこの高低差どおりにずれ込み、低地のベルムンやエル・リョアルでは9月半ばに始まり、高地のポレーラやラ・モレラでは10月末から11月初めまで続きます。夏は35℃前後まで上がり、冬は氷点下になることもある、大陸性の強い地中海性気候とされ、年間の降水量は400〜600ミリほどと少なめです。

リコレリャ——黒く光る岩

プリオラートを語るとき、誰もが最初に口にするのがリコレリャ(llicorella)です。黒っぽい粘板岩(スレート)に石英が混じった岩で、雲母が光を反射して、斜面全体が鈍く光って見えます。薄く割れやすい岩の層の隙間に、ぶどうの根は水を求めて深く入り込みます。

この土は、ぶどうにとって楽な環境ではありません。保水力が乏しく、養分も少ない。そのうえ畑の多くは勾配15%を超え、最大で60%に達する急斜面です。統制委員会は、1株あたりの収量は平均して1キロに満たないと説明しています。房は小さく、粒も小さく、果汁に対して果皮の割合が高くなる——これが、プリオラートの赤の色の濃さと凝縮感の源です。

斜面は現地で「コステルス(costers)」と呼ばれ、機械の入れない急な場所では等高線に沿った段々畑も組まれます。こうした条件から、プリオラートは2013年に、急斜面や高地の「英雄的なぶどう栽培」を支える国際団体CERVIMに加わりました。花崗岩と片岩の違いはあれ、北ローヌのコルナスやコート・ロティの急斜面と通じる条件です(仕立てや畑仕事の基本は第59講「栽培編」でどうぞ)。

同じ「黒い岩」でも、読み方は二通り。 リコレリャを「ミネラル感の源」と説明する紹介をよく見かけます。ただ、岩の成分がそのままワインの味になるわけではない、というのが現在の科学の見方です。確かなのは、痩せて水はけのよい岩盤が、樹勢を抑え、収量を極端に低くすること。「石を思わせる」と表現される味わいは、その結果として生まれる凝縮と、酸と、タンニンの質感の話として受け取るのが無難です。

1194年の修道院と、「プリオラート」の名

石造りのアーチが二重に続く修道院跡の奥に、聖像を掲げた門と糸杉の並木、背後に切り立つ岩山が見える
スカラ・デイ修道院(カルトイシャ・デスカラデイ)の遺構。背後にそびえるのがモンサン山塊の断崖。1194年に創設されたこの修道院の所領「プリオラート」が、産地の名になった / Photo: “Escaladei - Cartoixa” by Lohen11 - Josep Renalias, CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

産地の名の起こりは、モンサン山塊のふもとに建てられたスカラ・デイ修道院です。統制委員会の説明では、カルトジオ会の修道院として1194年に創設され、修道士たちがプロヴァンスからぶどう栽培を伝えました。修道院の長であるプリオール(prior)が治めた所領が「プリオラート(修道院領)」と呼ばれ、それがそのまま土地の名前になりました。いまの区域のうち、ラ・モレラ・デ・モンサン、グラタリョップス、ポレーラ、ポボレダ、トロジャ、ラ・ビレリャ・アルタなどの6自治体が、この旧修道院領にあたります。

ラテン語の「スカラ・デイ」は「神の階段」の意味。修道院はのちに廃され、いまは写真のような遺構が残るのみですが、その名は集落エスカラデイと、ふもとの蔵セリェルス・デ・スカラ・デイに受け継がれています。

「1163年創設」は誤り。 日本の通販サイトなどで、スカラ・デイ修道院を「1163年創設」と紹介する例があります。統制委員会の歴史のページは1194年としており、本稿はこちらに従います。

見捨てられた山から、最上位の産地へ

中世から近世にかけて、プリオラートのワインは地域で知られた存在でした。転機は19世紀の終わり、ヨーロッパ中の畑を襲ったフィロキセラです。被害を受けた畑の多くは、植え直されることなく放棄されました。同じころ、カタルーニャでは繊維工業が栄え、若い働き手は急斜面の畑を捨てて都市へ移っていきました。統制委員会も、この人口流出が畑の再建を阻んだと説明しています。

それでも、原産地としての枠組みは早くから整えられていました。

  1. 1194年 スカラ・デイ修道院の創設。修道士がぶどう栽培を伝える
  2. 1924年・1928年 地元の村々が、産地としての公的な認定を請願
  3. 1932年 スペインのワイン法(ワイン憲章)で、保護される産地として認められる
  4. 1954年7月23日 原産地呼称(DO)の規則が承認される(官報掲載は8月11日)
  5. 1989年 グラタリョップスに集まった「5人組」が、最初の「クロス」を造る
  6. 1999年 統制委員会の本部が、レウスから産地内のトロジャへ移る
  7. 2000年12月18日 カタルーニャ州政府がDOQの規則を承認。リオハに次ぐスペイン2番目の最上位産地に
  8. 2009年 スペイン国としてDOCaに承認
  9. 2019年 格付け「土地の名前」を発表。2021年に最上位の3畑が決まる

DOQとDOCaは、同じ最上位の等級を、カタルーニャ語とスペイン語で呼んだものです。州が2000年に、国が2009年に承認した——この二段階を分けて覚えておくと、資料によって年号が違う理由がわかります(ラベルの表記の読み方は第41講)。

1989年の「5人組」

放棄された古木の畑に目をつけたのが、のちに「5人組(ギャング・オブ・ファイブ)」と呼ばれる造り手たちでした。

  • ルネ・バルビエ(クロス・モガドール)——1979年にこの地へ来て、仲間を呼び集めた中心人物
  • ジョゼップ・リュイス・ペレス(クロス・マルティネット)——1981年にこの地へ来た
  • カルレス・パストラーナ(クロス・デ・ロバック)
  • アルバロ・パラシオス(クロス・ドフィ、のちのフィンカ・ドフィ)——リオハの醸造家一族の出身
  • ダフネ・グロリアン(クロス・エラスムス)

彼らは1989年ヴィンテージで、「クロス」を名に持つ5つのワインを世に出しました。最初期は、それぞれの畑のぶどうを持ち寄ってひとつのワインを共同で醸造し、5つのラベルで売ったと伝えられます(共同醸造が1989年だけだったのか、数年続いたのかは資料によって説明が分かれます)。

放棄されかけた古木のガルナッチャとカリニェナ、極端に低い収量、そこにカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーを加えることも辞さない柔軟さ。生まれたワインは、それまでの「田舎の濃い赤」とはまったく違う洗練を備え、海外の評論家から高い評価を受けます。2024年時点の集計では、ワイン・アドヴォケイト誌の100点を、クロス・エラスムスが4度、アルバロ・パラシオスのレルミタが3度、テロワール・アル・リミットのレス・マニェスが1度得ています。

この成功を見て、1990年代以降、新しい造り手が次々とプリオラートに入ってきました。そのうねりが、2000年のDOQ昇格へとつながっていきます。

ガルナッチャとカリニェナ

統制委員会が「推奨品種」と位置づける黒ぶどうは、ガルナッチャ(カタルーニャ語でガルナチャ)とカリニェナ(カリニェナ、サムソとも)の二つです。

品種プリオラートでの役割
ガルナッチャもっとも多く植えられる主役。完熟した赤い果実と、ふくよかな厚み、高いアルコールをもたらす。南ローヌのシャトーヌフ・デュ・パプでいうグルナッシュと同じ品種
カリニェナ酸とタンニン、色の濃さで骨格を支える。平地では大量生産向きとみなされがちな品種が、樹齢の高い古木と痩せた斜面で、力強く奥行きのある赤に変わる
国際品種カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、カベルネ・フラン、ピノ・ノワールなども許可品種。復興初期のブレンドに多く使われた
白ぶどうガルナッチャ・ブランカ、マカベウ、ペドロ・ヒメネスなど。少量ながら、厚みのある白も造られる

面白いのは、時代とともに主役の見え方が変わってきたことです。復興初期は、古木のガルナッチャとカリニェナに国際品種を加えて、力強さと洗練を両立させるのが一つの型でした。近年は、カリニェナの古木だけ、ガルナッチャだけで畑の個性を映そうとする造り手が増えています。マス・ドイシュの「1902」が1902年植樹のカリニェナ100%であること、テロワール・アル・リミットがガルナッチャのレス・マニェスとカリニェナのレス・トッセスを造り分けていることは、その象徴です。品種の性格は品種図鑑「グルナッシュ」でもまとめています。

格付け「土地の名前」——村名から特級畑まで

2019年5月17日、統制委員会はスカラ・デイ修道院で、新しい格付け「土地の名前(Els Noms de la Terra)」を発表しました。ブルゴーニュの村名・一級・特級のように、ワインがどの土地から来たのかを段階的にラベルへ書く仕組みです。

段名乗れるもの
グラン・ビーニャ・クラシフィカダ頂点の畑。2021年発表の3畑のみ
ビーニャ・クラシフィカダとくに優れた単一の畑
ヴィ・デ・パラッジェ459ある名前つきの区画(パラッジェ)
ヴィ・デ・ビラ12の村と地区の名。村名ワイン
DOQプリオラート産地名のみ

上の段ほど、樹齢の条件が厳しく、収量の上限が低く、ガルナッチャとカリニェナの比率が高く求められる仕組みと説明されています(具体的な数値は、紹介する資料によって食い違いがあるため、ここでは挙げません)。

最上位のグラン・ビーニャ・クラシフィカダに選ばれた3畑は次のとおりです(2021年4月の統制委員会発表)。

  • レルミタ(アルバロ・パラシオス/グラタリョップス)——2017年ヴィンテージから
  • マス・デ・ラ・ロサ(バル・リャック/ポレーラ)——2019年ヴィンテージから
  • 1902 トッサル・デン・ボウ(マス・ドイシュ/ポボレダ)——2019年ヴィンテージから
夕日に赤く染まる丘の斜面に、支柱で支えられたぶどうの株が等間隔に並び、尾根に糸杉と木々が立つ
グラタリョップス、レルミタ周辺の斜面の畑。石の多い赤茶けた土に、背の低い株が一本ずつ立つ。この村から、1989年の最初の「クロス」が生まれた / Photo: “Vinyes del Priorat, l'Ermita, Gratallops” by Angela Llop, CC BY-SA 2.0(Wikimedia Commons)
もうひとつの格付け「VFQ」。 紛らわしいのが、カタルーニャ州全体の単一畑格付け「ヴィ・デ・フィンカ・クアリフィカダ(VFQ)」です。プリオラート独自の「土地の名前」とは別の制度で、州の醸造研究機関INCAVIが管轄します。最初のVFQはクロス・モガドール。プリオラートではほかに、バル・リャックの「マス・デ・ラ・ロサ」、マス・デン・ジルの「クロス・フォンタ」と白の「コマ・ブランカ」が認められています。「マス・デ・ラ・ロサ」は、両方の頂点を兼ねる畑ということになります。

店頭で村名ワイン(ヴィ・デ・ビラ)を見かけたら、ラベルの村名に注目してみてください。グラタリョップスの重厚さ、標高の高いポレーラの張り、低地ベルムンの熟度——同じ造り手の村名ワインを並べると、12の村の違いが少しずつ見えてきます。

力強さと、軽やかさのあいだで

プリオラートの赤は、長く「濃くて強いワイン」の代名詞でした。暑く乾いた夏、実を小さくする岩盤、低い収量——条件がそろえば、ぶどうの糖度は上がり、アルコールは高くなります。14.5%前後は珍しくなく、アルバロ・パラシオスの「レス・テラッセス」2022年も14.5%です。第65講で見た「もともと軽いワイン」の、ちょうど反対側にあると言えるでしょう。

一方で、この20年ほどのあいだに、「強さ」だけではないプリオラートを目指す動きがはっきりしてきました。

  • 標高の高い畑、北向きの斜面を選ぶ(レルミタは北東〜北向き)
  • 収穫を早める、抽出を穏やかにする
  • 新しい小樽を減らし、大樽やコンクリート、アンフォラを使う
  • 国際品種を外し、ガルナッチャやカリニェナ単独で畑を表現する

テロワール・アル・リミットは、こうした方向の代表としてよく名前が挙がります。同じ「プリオラート」でも、造り手によって重厚なものから透明感のあるものまで、振り幅が大きくなっているのが今の姿です。

選び方と、食卓

日本でプリオラートを選ぶときは、次の三段で考えると迷いません。

  1. まず入口を一本 アルバロ・パラシオス「カミンス・デル・プリオラート」(2,700〜3,500円前後)のような、造り手の入門キュヴェで産地の輪郭をつかむ。ぐっと価格を抑えたいなら、隣のDOモンサンも同じ品種の手ごろな選択肢です
  2. 次に、同じ造り手で階段を上る 「レス・テラッセス」(8,000〜9,000円前後)、村名ワイン、「フィンカ・ドフィ」(9,000〜1万2,000円前後)と上がっていくと、樹齢と畑が味をどう変えるかがわかります
  3. 記念の一本に、復興の立役者を 「クロス・モガドール」(1万2,000〜1万8,500円前後)やマス・ドイシュの古木のキュヴェは、プリオラートの歴史を背負った一本。開けるなら、大ぶりのグラスで時間をかけて

飲み方のこつは、温度を上げすぎないこと。アルコールの高い赤は、室温が高いと重く感じやすいので、16〜18℃くらいから始め、少しずつ温度が上がるのを楽しむのがおすすめです(温度とデキャンタの基本は第26講)。若いうちは、デキャンタで空気に触れさせると香りが開きます。

料理は、カタルーニャの山の食卓から。炭火で焼いた子羊やソーセージ(ブティファラ)、ねぎの炭火焼きカルソッツに添えるロメスコソース、きのこや猪の煮込み。日本の食卓なら、炭火の焼き鳥(タレ)、スペアリブ、ジビエ、牛すじの煮込みあたりがよく合います。凝縮した果実と高いアルコールには、焦げ目の香ばしさと、しっかりした脂をぶつけるのが基本です(ペアリングの考え方は第27講)。

スペイン全体の地図は第14講「スペイン完全編」で、熟成で語るもう一つの最上位産地は銘醸図鑑「リオハ」でどうぞ。同じ最上位の格付けを持ちながら、熟成期間で階段を作るリオハと、土地の名前で階段を作るプリオラート——並べて読むと、スペインワインの二つの顔が見えてきます。

主要生産者と作風

※各ドメーヌの作風は一般的な評価に基づく傾向です。キュヴェやヴィンテージにより表情は変わります。

復興の起点となった家

クロス・モガドール

Clos Mogador / ルネ・バルビエ

1979年、ルネ・バルビエ・フェレールと妻のイザベル・メイヤーがグラタリョップス村に興した蔵です。バルビエは、1980年代末にこの山へ造り手たちを呼び集めた中心人物として語られ、いわゆる「5人組」のひとりに数えられます。1999年からは息子のルネ・バルビエ・メイヤーも加わりました。看板の「クロス・モガドール」は、カタルーニャ州独自の単一畑格付け「ヴィ・デ・フィンカ・クアリフィカダ(VFQ)」の最初の銘柄として認められています(「スペイン初の単一畑格付け」と紹介されることがありますが、正確にはカタルーニャ州の格付けとして最初です)。重厚さのなかに、ハーブや石を思わせる複雑さを備えた赤と評されます。

「レルミタ」の造り手

アルバロ・パラシオス

Álvaro Palacios

リオハの醸造家一族に生まれたアルバロ・パラシオスが、1989年にグラタリョップスで設立しました。5人組のひとりで、当初「クロス・ドフィ」と名づけた一本は、のちに「フィンカ・ドフィ」へ改名されています。頂点の「レルミタ(L'Ermita)」は1993年が初リリース。北東から北向きの急斜面、標高約350〜430メートルにある樹齢の高い株仕立てのガルナッチャが中心で、2021年に発表された最上位格付け「グラン・ビーニャ・クラシフィカダ」の3畑のひとつ(2017年ヴィンテージから)です。下には「カミンス・デル・プリオラート」「レス・テラッセス」、村名ワインの「グラタリョップス」と、プリオラートの格付けそのままの階段が並びます。2000年からは実家のリオハの蔵も率いています(銘醸図鑑「リオハ」参照)。

17の段々畑の小さな蔵

クロス・エラスムス

Clos Erasmus / Clos i Terrasses

5人組のひとりダフネ・グロリアンが、グラタリョップスで17の段々畑を手に入れたことから始まった小さな蔵です(蔵の名はクロス・イ・テラッセス)。生産量はごく少なく、看板の「クロス・エラスムス」は、2024年時点の集計でワイン・アドヴォケイト誌の100点を4度(2004・2005・2013・2020年)得ています。セカンドワインは「ローレル」。濃さよりも、張りつめた緊張感と香りの複雑さで語られることの多い一本です。日本での流通はきわめて限られます。

5人組の一角と、娘の代

マス・マルティネット

Mas Martinet / ペレス家

1986年、ジョゼップ・リュイス・ペレスとモンセ・オベへロが創業し、5人組のひとりとして「クロス・マルティネット」を世に出しました。現在は娘のサラ・ペレスが率い、畑の生態系全体を重んじるアグロエコロジーの考え方で栽培を進めています。親から子へ、復興の第一世代が次の世代に受け継がれた蔵のひとつです。

「クロス・デ・ロバック」の家

コステルス・デル・シウラナ

Costers del Siurana / Clos de l'Obac

1987年、カルレス・パストラーナ(とマリオナ・ハルケ)がグラタリョップスで創業しました。5人組の一角で、看板は「クロス・デ・ロバック」。ガルナッチャとカリニェナに、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなどを加えるブレンドで知られ、復興初期のプリオラートが国際品種も取り込みながら新しい赤を探った時代の空気を伝える一本です。蔵の名は、産地を流れるシウラナ川の斜面(コステルス)に由来します。

1902年植樹のカリニェナ

マス・ドイシュ

Mas Doix

1998年、ドイシュ家とリャゴステラ家がポボレダ村で設立しました。銘柄名の数字に注意が必要で、「1902 トッサル・デン・ボウ」の「1902」はヴィンテージではなく植樹の年。1902年に植えられたカリニェナ100%の区画(標高約420〜510メートル)から造られ、最上位のグラン・ビーニャ・クラシフィカダに認められています(2019年ヴィンテージから)。同じく植樹年を名に持つ「1903 コマ・デ・カセス」はビーニャ・クラシフィカダ。ほかに「レス・クレステス」「サランケス」「ドイシュ」と続きます。古木のカリニェナの力を見せる造り手と評されます。

歌手が興した、ポレーラの蔵

バル・リャック

Vall Llach

カタルーニャの歌手リュイス・リャックと公証人エンリック・コスタが、ポレーラ村で1990年代半ばに共同で設立した蔵です(1996年とされることが多い一方、1990年代初めとする資料もあります)。看板の「マス・デ・ラ・ロサ」は、グラン・ビーニャ・クラシフィカダ(2019年ヴィンテージから)であり、同時に州の単一畑格付けVFQにも認められています。村名ワインの「バル・リャック」、「イドゥス」「エンブルイシュ」と続くラインナップで、標高が高く冷涼なポレーラの性格を伝えます。

抽出を抑えた、新しい世代

テロワール・アル・リミット

Terroir al Límit

2001年、ドイツ出身のドミニク・フーバーと南アフリカの醸造家エベン・サディが設立し、ポレーラで2年醸造したのちトロジャ村へ移りました。代表銘柄はガルナッチャの「レス・マニェス」とカリニェナの「レス・トッセス」。レス・マニェス2016年はワイン・アドヴォケイト誌で100点を得ています。重さや樽よりも、透明感と香りを重んじるスタイルと評され、「濃いプリオラート」のイメージを塗り替えつつある一群の代表格です。

修道院の名を継ぐ蔵

セリェルス・デ・スカラ・デイ

Cellers de Scala Dei

産地の名の起こりとなったスカラ・デイ修道院のふもと、同名の集落にある蔵です。1970年代前半に現在の名称で再出発し、2000年には大手コドルニウのグループが資本参加しました(出資比率は資料により表現が異なります)。主な銘柄は「プリオール」「カルトイシャ」「マスデウ」。5人組が現れる前から、修道院以来の土地で造り続けてきた系譜を感じさせる存在です。

よくある質問

プリオラートとはどんなワインですか?
スペイン・カタルーニャ州タラゴナ県の山あいで造られるワインの原産地呼称です。産地の面積は約1万7,600ヘクタール、ぶどう畑は約2,200ヘクタール、栽培者は約510(統制委員会、2023年)。「リコレリャ」と呼ばれる黒い粘板岩の急斜面で、ガルナッチャとカリニェナを主体にした、色が濃く力強い赤ワインが中心です。2000年にカタルーニャ州の最上位格付けDOQとなり、リオハに次ぐスペインで2番目の最上位産地になりました。
DOQとDOCaは違うものですか?
同じ等級を指す、言語違いの呼び名です。DOQはカタルーニャ語の「Denominació d'Origen Qualificada」、DOCaはスペイン語の「Denominación de Origen Calificada」の略。プリオラートは2000年12月にカタルーニャ州政府からDOQの規則承認を受け、スペイン国としてDOCaに認められたのは2009年です。ラベルにはどちらの表記も見られます。
「リコレリャ」とは何ですか?
プリオラートを特徴づける土壌で、黒っぽい粘板岩(スレート)に石英が混じり、雲母が光を反射してきらきらと光ります。薄く割れやすい岩の隙間に根が深く入り込み、保水力が乏しいため、ぶどうは少量の凝縮した実しかつけません。統制委員会によれば、1株あたりの収量は平均1キロに満たず、畑の多くは勾配15%を超え、最大60%に達します。
「プリオラート」という名前の由来は?
1194年に創設されたカルトジオ会の「スカラ・デイ修道院」に由来します。修道院の長(プリオール)が治めた所領が「プリオラート(修道院領)」と呼ばれ、それがそのまま地名になりました。修道士たちはプロヴァンスからぶどう栽培を伝えたとされます。いまのDOQの12の村と地区のうち、6つの自治体がこの旧修道院領にあたります。なお「1163年創設」とする紹介も見かけますが、統制委員会は1194年としています。
1980年代末の「復興」とは何があったのですか?
フィロキセラの被害と、カタルーニャの繊維工業への人口流出で、19世紀末以降プリオラートの畑の多くは植え直されずに放棄されていました。1980年代、ルネ・バルビエを中心に、ジョゼップ・リュイス・ペレス、カルレス・パストラーナ、アルバロ・パラシオス、ダフネ・グロリアンの5人がグラタリョップス村に集まり、1989年ヴィンテージで「クロス」を名に持つ5つのワインを世に出しました。最初期はぶどうを持ち寄って共同で醸造し、5つのラベルで売ったと伝えられます。これが国際的な評価を呼び、放棄された古木の畑が見直されるきっかけになりました。
プリオラートの格付けはどうなっていますか?
2019年に「土地の名前(Els Noms de la Terra)」と呼ばれる5段階の仕組みが発表されました。下から、産地名だけのDOQプリオラート、12の村と地区の名を名乗る「ヴィ・デ・ビラ(村名)」、459の名前つき区画を名乗る「ヴィ・デ・パラッジェ」、さらに「ビーニャ・クラシフィカダ」、頂点の「グラン・ビーニャ・クラシフィカダ」です。最上位は2021年に3畑が発表されました。アルバロ・パラシオスの「レルミタ」、バル・リャックの「マス・デ・ラ・ロサ」、マス・ドイシュの「1902 トッサル・デン・ボウ」です。上の段ほど樹齢や収量の条件が厳しくなると説明されています。
アルコール度数が高いと聞きましたが本当ですか?
高めの傾向があります。暑く乾いた夏と、実を小さく凝縮させる痩せた土壌のため、ぶどうの糖度が上がりやすく、14.5%前後のワインはごく普通に見られます(例:アルバロ・パラシオス「レス・テラッセス」2022年は14.5%)。ただ近年は、標高の高い畑や北向きの斜面、早めの収穫、抽出を抑えた醸造で、軽やかさと香りを重んじる造り手も増えています。
日本ではいくらくらいで買えますか? はじめの一本は?
2025〜26年の日本の実勢(税込)で、入門のアルバロ・パラシオス「カミンス・デル・プリオラート」が2,700〜3,500円前後、「レス・テラッセス」が8,000〜9,000円前後、「フィンカ・ドフィ」が9,000〜1万2,000円前後、「クロス・モガドール」が1万2,000〜1万8,500円前後。最上位の「レルミタ」は16万〜24万円台です。はじめてなら「カミンス・デル・プリオラート」で産地の輪郭をつかみ、次に同じ造り手の「レス・テラッセス」へ進むと、格付けの階段が味の違いとしてわかります。
隣の「モンサン(Montsant)」とはどう違うのですか?
DOモンサンは、プリオラートをほぼぐるりと取り囲む別の原産地呼称です。旧DOタラゴナのファルセット地区が独立したもので、2001年に州の承認を受け、2002年から「モンサン」表示で売られています。ガルナッチャとカリニェナを主体にする点は共通しますが、格付けはプリオラートより一段下のDOで、日本の店頭でも手ごろな価格帯のものが多く見られます。プリオラートの雰囲気を日常の価格で味わう入口として選ばれることもあります。

最終更新: 2026-09-18 / 編集: Vinotier編集部