
交配・交雑・クローン——まず言葉をそろえるCrossing, hybrid and clone
第68講北海道完全編で、十勝の山幸は清見とヤマブドウを掛け合わせた品種で、その清見はセイベル13053から選び出されたクローンだ、と書きました。この一文には、今回の主役がすべて出てきます。交配、交雑、クローン。どれも「品種がどうやってできたか」を表す言葉ですが、指しているものはまったく違います。
両親がともにヨーロッパ系のぶどう(ヴィティス・ヴィニフェラ)。花粉を別の品種のめしべにつけ、できた種を播いて育てる。種から育つ株は一本ごとに性質が違うので、その中から良いものを選んで新しい品種にする。例:ミュラー・トゥルガウ、ケルナー、ピノタージュ。
ヴィニフェラと、アメリカやアジアの別の種を掛け合わせたもの。病気や寒さへの強さを取り込むのが主な狙い。例:マスカット・ベーリーA(アメリカ系のベーリー×マスカット・ハンブルク)、山幸(清見×ヤマブドウ)、台木の多く。
新しい品種ではなく、同じ品種の中で選んだ一本の株を、挿し木や接ぎ木で殖やしたもの。遺伝子はほぼ同じで、房の大きさや熟す時期などに小さな差がある。例:ピノ・ノワールの「ディジョン・クローン115」。
いちばん大事な違いは、種を播くかどうかです。ぶどうは種から育てると、親とは違う性質の子になります。人間の兄弟が一人ずつ違うのと同じです。だから、ワイン用のぶどうは昔から枝を切って殖やしてきました。こうすれば、親とまったく同じ性質の株ができます。ピノ・ノワールという品種は、何百年も前に生まれた一本の株を、枝で殖やし続けてきたものなのです。
ところが、長く殖やし続けるうちに、ある株の芽に突然変異が起こることがあります。房が小さくなった株、早く熟す株、果皮の色が変わった株。こうした株を選んで殖やしたものがクローンです。変異が大きければ、別の品種として扱われることもあります。ピノ・グリとピノ・ブランがその例です。2012年の研究によれば、どちらもピノ・ノワールの芽に起きた突然変異から生まれました。色を決める遺伝子に変異があるだけで、品種の識別に使うDNA型では区別できません。
自然が交配した名品種——DNAがわかったことParents revealed by DNA
交配は、人がするものだけではありません。畑の中で、昆虫や風が運んだ花粉で、自然に交配が起きることがあります。落ちた種から芽が出て、誰かがその株を気に入って殖やす。世界の有名品種の多くは、こうして生まれました。その親がわかるようになったのは、1990年代にDNA鑑定の技術が使えるようになってからです。
カベルネ・ソーヴィニヨン——赤と白の子
1997年、カリフォルニア大学デイヴィス校のジョン・ボワーズとキャロル・メレディスが、カベルネ・ソーヴィニヨンの親はカベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランだと発表しました。世界でもっとも有名な赤ワイン用品種の片親が、白ぶどうだったのです。名前に「カベルネ」と「ソーヴィニヨン」の両方が入っているのは、偶然ではなかったことになります。いつ、どこで交配が起きたかはわかっていませんが、ボルドー周辺で自然に生まれたと考えられています(第5講「ボルドー完全編」)。
シャルドネ——「格下」の品種が親だった
1999年のScience誌の論文は、さらに大きな驚きでした。シャルドネ、ガメイ、アリゴテ、ミュスカデの品種ムロンなど16の品種が、すべてピノとグエ・ブランの子だったのです。グエ・ブランは中世のフランスで「質の低いぶどう」として、何度も栽培を禁じられた品種でした。ブルゴーニュの白の最高峰を生む品種の片親が、禁止された品種だった。第67講で触れた1395年のガメイ禁止令を思い出すと、歴史の皮肉を感じます(第4講「ブルゴーニュ完全編」)。
シラーとジンファンデル——伝説が消えた品種
シラーには、ペルシャのシラーズから来たという話や、十字軍が持ち帰ったという話がありました。けれど1990年代末のDNA解析で、親はデュレザ(アルデシュ地方の黒ぶどう)とモンドゥーズ・ブランシュ(サヴォワ地方の白ぶどう)だとわかりました。どちらもフランス南東部の品種です。シラーは、ローヌ地方の近くで生まれた品種でした(第8講「ローヌ完全編」)。
ジンファンデルは、アメリカ固有の品種と思われていた時期もありました。2001年、メレディスとクロアチアの研究者たちが、イタリアのプリミティーヴォやクロアチアの古い品種ツルリェナク・カシュテランスキーと同じ品種だと確認しました。さらに2011年の研究で、15世紀前半のクロアチアの文書に出てくる「トリビドラグ」とも同じだとわかっています。
DNA鑑定でわかるのは「どの品種とどの品種が親子か」までです。交配がいつ、どこで起きたかは、DNAからはわかりません。「◯世紀に◯◯で生まれた」という話を見たら、文書の記録があるのか、推測なのかを確かめてください。
人が交配した品種——研究所で生まれたぶどうBred by design
19世紀の終わりから、ヨーロッパ各地にぶどうの研究所ができ、人の手で交配が行われるようになりました。目的は、寒い土地でも早く熟すこと、たくさん実ること、病気に強いこと。そこで生まれた品種の中には、いまでは国を代表する品種になったものもあります。

交配品種の評価は、土地によって変わる
人が交配した品種は、ヨーロッパでは「量産向けの品種」と見られてきました。ミュラー・トゥルガウは、ドイツの安い甘口ワインの原料として大量に植えられた時代があります。ドイツのワイン法でも、最高位の産地で使える品種はリースリングなどの伝統品種に限られる例が多く、交配品種の評価はなかなか上がりませんでした(第11講「ドイツ完全編」)。
けれど、場所が変わると評価も変わります。ケルナーとツヴァイゲルトは、寒さに強く早く熟すため、北海道では主力品種になりました。国税庁の統計(2024年度)でも、ツヴァイゲルトは日本の赤ワイン用ぶどうの受入量で7番目に多い品種です。ツヴァイゲルトは本国オーストリアでも、いまでは最も多く植えられた黒ぶどうです(第24講「オーストリア完全編」)。ピノタージュも、南アフリカを代表する赤になりました(第23講「南アフリカ完全編」)。「交配品種だから格下」とは言えないのです。
ツヴァイゲルトについては、作出者のフリッツ・ツヴァイゲルトがナチス期に研究所の所長を務め、戦後に有罪判決を受けていることから、オーストリアでは品種名の変更を求める運動があります。2026年9月時点で、正式名は変わっていません。
種間交雑の光と影——病気に強いぶどうを求めてHybrids, rootstocks and PIWI
ヴィニフェラ以外の種との掛け合わせには、長く複雑な歴史があります。始まりは、19世紀後半にヨーロッパの畑を襲った害虫フィロキセラと、アメリカから入ってきたカビの病気でした。
- 1860年代〜アメリカから入ったフィロキセラ(根につく害虫)と、うどんこ病・べと病がヨーロッパ中に広がる。ヨーロッパのぶどうには、これらへの抵抗力がなかった(第43講「ワインの歴史」)。
- 1880年代〜二つの対策が進む。ひとつはアメリカの野生種の根(台木)にヨーロッパのぶどうを接ぎ木する方法。もうひとつは、ヴィニフェラとアメリカ系を掛け合わせて、病気に強いフランス系交雑品種(セイベル、セイヴ・ヴィラール、バコなど)をつくる方法。
- 1934年フランスが法律で、ノア、オテロ、イザベル、ジャケ、クリントン、エルブモンの6品種の栽培を禁止(施行は1935年。家庭での消費は1956年まで黙認)。量は多くても質の劣るワインが増えたことへの対策だった。
- 1950〜70年代ヨーロッパでは交雑品種が次々と抜かれ、接ぎ木したヴィニフェラが主流になる。一方、寒い日本やカナダ、アメリカ東部では交雑品種が生き残った。北海道の清見の元になったセイベル13053も、このとき生まれたフランス系交雑品種のひとつ。
- 2021年EUが規則(EU) 2021/2117で制度を改め、ヴィニフェラと他の種との交雑品種も、原産地呼称(PDO)ワインに使えるようになった。ただし、実際に使えるかどうかは各産地の規定しだい。

いちばん身近な種間交雑——台木
じつは、世界のワイン用ぶどうの多くは、根の部分が種間交雑です。フィロキセラへの対策として、アメリカの野生種を掛け合わせた台木に接ぎ木されているからです。たとえば101-14と3309Cはリパリア×ルペストリス、SO4はベルランディエリ×リパリアから選ばれた台木です。土の石灰分や乾燥への強さ、樹の勢いの強さで使い分けます。台木の選び方は、第59講「ぶどう畑の一年・栽培完全編」と第67講「土壌とテロワール完全編」で触れました。
いま再び注目される「PIWI」
20世紀の終わりから、ドイツやスイスを中心に、新しい世代の耐病性品種の育種が進みました。ドイツ語で「カビに強い」を意味する言葉を略してPIWI(ピーヴィー)と呼ばれます。病気に強ければ、農薬を散布する回数を減らせます。
| 品種 | 交配 | 親 | メモ |
|---|---|---|---|
| レゲント Regent(黒) | 1967年、ドイツ・ガイルヴァイラーホーフ研究所 | ディアナ×シャンブルサン | 品種保護は1994年、栽培の許可は1996年。ドイツのPIWIの代表格 |
| ソラリス Solaris(白) | 1975年、ドイツ・フライブルク | メルツリング×ガイゼンハイム6493 | とても早く熟すため、北欧など冷涼な産地で使われる |
| スーヴィニエ・グリ Souvignier Gris(白) | 1983年、ドイツ・フライブルク | セイヴァル・ブラン×ツェーリンガー | 以前はカベルネ・ソーヴィニヨンの子とされていたが、2016年のDNA解析で親が修正された |
| ヴォルティス Voltis(白) | フランス・INRAEのResDur計画 | —— | 2018年にフランスの品種目録に登録。シャンパーニュで初めて規定に入ったResDur品種 |
フランスの国立研究機関INRAEは2000年からResDurという育種計画を進め、2018年にアルタバン、ヴィドック(黒)、フロレアル、ヴォルティス(白)の4品種を、2021年にさらに5品種を公式の品種目録に登録しました。2022年2月には、シャンパーニュの原産地呼称の規定に、試験導入品種としてヴォルティスが加わっています。条件は、栽培面積は各経営の5%まで、ブレンドは10%まで、試験期間は10年(5年延長も可能)。シャンパーニュの伝統品種に代わるものではなく、将来に備えた試験という位置づけです(第6講「シャンパーニュ完全編」、第61講「気候変動」)。
クローン——同じ品種の中の、小さな違いClonal selection
ここからは、新しい品種ではなく同じ品種の中の選び方の話です。ラベルに「ディジョン・クローン」「クローン115」などと書かれたワインを見たことがあるかもしれません。
なぜクローンを選ぶようになったのか
フランスで国によるクローン選抜が本格的に始まったのは1962年です。いちばんの目的は、ウイルス病のない苗をつくることでした。ぶどうには、ファンリーフ病やリーフロール病など、枝で殖やすたびに広がってしまうウイルス病があります。病気の株から枝を取れば、病気もそのまま次の畑に移ります。そこで、畑の中から優れた株を1本選び、栽培と醸造の成績を調べ、ウイルスがないことを確かめてから殖やす。これがクローン選抜(セレクション・クローナル)です。
フランスではこれまでに約1,250のクローンが認可され、ピノ・ノワールだけで48のクローンが現在認可されています。国の保存園には約600品種、4,500を超えるクローンが保存されています(フランスワイン・ぶどう研究所IFV)。
優れた株を1本選び、調べてから殖やす。病気のない苗が手に入り、性質がそろう。そのかわり、畑の株がすべて同じ性質になり、多様性が失われるという批判がある。
自分の畑の中から良い株を何本も選び、その枝を混ぜて殖やす。昔ながらの方法で、畑の多様性を保てる。そのかわり、検査をしないとウイルス病を広げてしまうおそれがある。
1990年代以降、同じクローンばかりが植えられることへの反省から、セレクション・マッサルを見直す造り手が増えています。とはいえ、どちらが優れているという話ではありません。クローンを何種類も組み合わせて植えれば、多様性をある程度保つことができます。飛騨高山ワインアポセカリーのように、シャルドネを5つのクローンに分けて植える日本のワイナリーもあります。
名前を知っておきたいクローン
ブルゴーニュでレイモン・ベルナールが選抜したクローン。1984年に113・114・115が、1988年に667・777とシャルドネのクローンがオレゴンへ送られ、1989年にオレゴン州立大学で検疫を終えた。オレゴンのピノ・ノワールが1990年代に変わった理由のひとつとされる。
ディジョン以前にアメリカで広まったクローン。ヴェーデンスヴィルは1952年にスイスの研究所から導入され、1965年にデイヴィッド・レットがオレゴンに持ち込んだ。ポマールは1950年代にブルゴーニュのポマールから導入されたもの。
ウェンテ・クローンは、1882年にムルソーから輸入された苗が源流とみられ、1908年にアーネスト・ウェンテが選抜した。メンドーサ・クローンは1961年にアルゼンチンから届いたもので、粒の大小がまじる房になりやすいと言われる。
アメリカでは、正規の検疫を通さずに持ち込まれた苗を「スーツケース・クローン」と呼びます。北米で「828」として出回るピノ・ノワールの多くはこれだと言われます。クローン番号は、正規の苗であることの証明でもあるのです(第28講「オレゴン&ワシントン」、品種:ピノ・ノワール)。
日本の交配品種——寒さと雨に挑んだ百年Japan's own crossings
日本は、交配品種がとくに大きな役割を果たしてきた国です。雨が多く湿度の高い夏は、ヨーロッパのぶどうには厳しい環境でした。その中で、日本の気候に合うぶどうを人の手でつくろうとした人たちがいます。
川上善兵衛と、1万回を超える交配
新潟県上越市の岩の原葡萄園を1890年(明治23年)に開いた川上善兵衛は、生涯で1万311回の交配を行ったと伝えられています。その中から1927年に生まれたのが、マスカット・ベーリーAです。親はアメリカ系の交雑品種ベーリー(母)とマスカット・ハンブルク(父)で、DNA解析でも確かめられています。同じ1927年にはブラック・クイーン(ベーリー×ゴールデン・クイーン)も交配されました。1940年には、坂口謹一郎らとの評価を経て、推奨する22品種を公表しています(特集:日本ワインの父・川上善兵衛)。
マスカット・ベーリーAは2013年に、甲州に続いて日本の品種として2番目にOIV(国際ぶどう・ぶどう酒機構)に登録されました。2020年には、北海道池田町の山幸が3番目の登録品種になっています。
名前の色がピンクのものは、ヴィニフェラ以外の種が入った種間交雑です。信濃リースリングは、両親ともヴィニフェラの交配品種です。
清見と山幸——クローン選抜と交配の二段構え
北海道の池田町は、1966年にフランス系交雑品種のセイベル13053を導入しました。その畑の中で性質の良い枝変わりの株を見つけ、クローンとして選び出したのが清見です(1975年ごろ)。さらに、清見に寒さに強い野生のヤマブドウを掛け合わせて生まれたのが山幸です。1978年に開発を始め、2006年に品種登録されました。同じ清見×ヤマブドウからは、清舞という品種も生まれています。クローン選抜で清見を選び、交配で山幸をつくった。この講の二つのテーマが、ひとつの町の歴史の中にそろっています(産地:北海道)。
甲州は「交配」ではなかった
では、日本でいちばん多く使われる白ワイン用ぶどうの甲州はどうでしょう。2015年の研究によれば、甲州の祖先の約70%はヴィニフェラ、残りの約30%は東アジアの野生種に由来すると推定されています。母系はトゲブドウ(V. davidii)か、その近縁の種と考えられています。つまり甲州は、人が意図して交配した品種ではなく、長い年月をかけて自然に交雑しながらシルクロードを渡ってきたぶどうだと考えられます(第9講「日本ワイン産地巡り」)。
統計で見る、日本のワインを支える品種
国税庁の統計(2024年度、国産の生ぶどうの受入量)で、赤ワイン用の上位を見てみましょう。
白ワイン用では、甲州3,567t、ナイアガラ1,559t、シャルドネ1,408t、デラウェア1,052tの順です。出典:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和7年アンケート)」。上位7品種のうち、ヴィニフェラの伝統品種はメルローとピノ・ノワールの2つだけです。
赤ワイン用の1位は、日本で生まれた交配品種のマスカット・ベーリーAです。上位の多くは、交配品種、交雑品種、アメリカ系の品種が占めています。日本のワインは、交配と交雑に支えられていると言ってもよいでしょう。
よくある質問Frequently asked
違います。 交配は、ある品種の花粉を別の品種のめしべにつけて種をとる、昔からある方法です。自然の中でも起きていて、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネもそうして生まれました。遺伝子組み換えは、遺伝子を直接操作する技術で、これまで紹介した品種はいずれもその方法ではつくられていません。
目安にはなりますが、決め手にはなりません。 たとえばピノ・ノワールのディジョン・クローン777は色が濃く果実味が強い、などと語られることがあります。けれど、実際の味は畑の土、気候、樹齢、造り方の影響のほうがずっと大きいと考えられます。クローン番号は、造り手がどんな狙いでその苗を選んだのかを知る手がかりとして読むのがよいでしょう。
日本ならマスカット・ベーリーAと、北海道のケルナーかツヴァイゲルト。どれも手ごろな値段で見つかります。海外なら南アフリカのピノタージュと、オーストリアのツヴァイゲルト。親の品種と並べて飲むと、たとえばピノタージュとピノ・ノワール、ケルナーとリースリングで、何を受け継ぎ、何が変わったのかがよくわかります。
品種は、見つかるものであり、つくられるものでもあるVarieties are found, and made
この講で伝えたかったのは、ぶどうの品種は変わらないものではないということです。カベルネ・ソーヴィニヨンもシャルドネも、畑の中で偶然に起きた交配から生まれました。DNA鑑定が進んだことで、シラーの伝説は消え、ジンファンデルは古い名前を取り戻しました。19世紀の終わりからは、研究所で人の手による交配が始まり、ミュラー・トゥルガウ、ツヴァイゲルト、ピノタージュ、ケルナーが生まれました。
アメリカ系の種との交雑は、フィロキセラの危機を救う一方で、フランスでは一部の品種が禁止される歴史もたどりました。けれど台木という形で、いまも世界中の畑の根を支えています。そしてPIWIやResDurの品種が、農薬を減らすための新しい選択肢として戻ってきました。同じ品種の中でも、ウイルスのない苗を求めて始まったクローン選抜が、ディジョン・クローンのような名前をワインの世界に広めました。
日本では、川上善兵衛のマスカット・ベーリーAから、池田町の清見と山幸まで、交配と選抜で寒さと雨に挑んできた百年があります。赤ワイン用ぶどうの1位が日本生まれの交配品種であることは、その成果を表しています。
次の一本。 今回は親子で並べてください。おすすめは、南アフリカのピノタージュと、同じくらいの価格帯のピノ・ノワール。ピノタージュの濃い色と、ピノ・ノワールの繊細な香りのどちらが子に受け継がれているか、確かめてみてください。日本のワインなら、マスカット・ベーリーAと甲斐ノワールの組み合わせもおもしろいでしょう。親のブラック・クイーンがベーリーの子なので、甲斐ノワールはマスカット・ベーリーAの「いとこ」のような関係です。
次回は銘醸図鑑へ。第23弾は「クロ・ド・ヴージョ」。第67講でも触れた、14世紀に石の壁で囲まれたブルゴーニュの特級畑です。ひとつの壁の内側を数多くの所有者が分け合い、同じ名前のワインでも造り手によって味が大きく変わる畑。クロ・ド・ヴージョの壁の内側で、何が味を分けるのかをたどります(第4講「ブルゴーニュ完全編」と銘醸図鑑:ヴォーヌ・ロマネもあわせてどうぞ)。
