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ワインガイド Vinotier
日本のワイナリー

能登ワイン

noto wine / 創業 2004年
産地
石川県穴水町
訪問
見学ツアー・試飲・ショップ
代表銘柄
樽熟成 心の雫・クオネス ヤマソーヴィニヨン
どんなワイナリー?

能登ワインは、能登半島の中ほど、石川県鳳珠郡穴水町旭ケ丘の丘に立つワイナリーです。「過疎が進む地域社会をワイン造りという産業で元気にしたい」という願いから、2001年に町でぶどうの植栽が始まり、2004年に会社を設立、2006年に醸造所が完成してワイン造りが始まりました。穴水町の特産である牡蠣の殻を畑にすき込む土壌づくりと、山ぶどうの血を引く交配品種ヤマソーヴィニヨンが看板。加熱処理をしない「生ワイン」を掲げ、収穫はすべて手摘みで行われます。

この記事の目次

「絶対失敗する」と言われた丘から

能登ワインがあるのは、能登半島の中ほど、穴水町の旭ケ丘という丘の上です。風がほどよく抜ける斜面に、垣根仕立てのぶどうがどこまでも並びます。けれどこの場所は、もともとぶどう畑ではありませんでした。関係者の回想によれば、着手前は一面にセイタカアワダチソウが生い茂る土地で、検討委員会では反対意見が相次いだといいます。それでも町が後押しし、計画は動き出しました。

歩みを並べると、次のようになります。

  • 2001年——穴水町で最初のワイン用ぶどうを植栽
  • 2004年7月——能登ワイン株式会社を設立
  • 2006年——醸造所が完成し、最初のワインが世に出る
  • 2026年8月——創業20周年の記念行事を開催(石川県知事も出席)

公式サイトが掲げる動機は、はっきりしています。「過疎が進む地域社会をワイン造りという産業で元気にしたい」。日本の新しいワイナリーには、個人の情熱から始まる蔵と、地域の産業づくりから始まる蔵の二つの型がありますが、能登ワインは後者の代表例といえます(日本ワイン全体の流れは第9講「日本ワイン産地巡り」と用語:日本ワインで扱っています)。

牡蠣の殻を、畑に還す

この蔵を語るときに必ず出てくるのが牡蠣殻です。穴水町は七尾湾の牡蠣の名産地で、むき身にしたあとの殻は処理に困る副産物でした。能登ワインはその殻を畑にすき込みます。公式サイトは「牡蠣殻を活用した土壌で能登産葡萄を育てる」と記し、狙いとして挙げられているのは二つ——土の水はけをよくすることと、海のミネラル分・カルシウム分を土に補うことです。

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。「土のミネラルが、そのままワインの味になる」わけではありません。土壌の成分がぶどうの果汁に移って「ミネラル感」として舌に届く、という説明は、地質学の側からは否定されています。土が効くのは、もっと間接的な経路——水はけ、保水力、根の張り方、そして樹の健康を通じてです。貝殻を砕いて混ぜることは、粒の大きな資材で土に隙間をつくり、水を抜けやすくする、きわめて物理的な作業でもあります。この話は第67講「土壌とテロワール完全編」で詳しく扱っています(用語:テロワールもどうぞ)。

いずれにせよ、地域で余っていたものを畑が引き受ける、という循環そのものが、この蔵の性格をよく表しています。

畑と、手摘みの収穫

畑の広さについて、公式サイトはヘクタールではなく「東京ドーム6個分」という言い方をしています。取材記事では自社農園と契約農家を合わせておよそ24〜25haとされ、数字は媒体によって幅があります。仕立ては垣根式。町内の契約農家からもぶどうを受け入れており、公式によれば自社畑の収穫はおよそ20トン(約10万房)、契約農家の分と合わせて年におよそ120〜140トンを仕込みます。

栽培しているのは、黒ぶどうがヤマソーヴィニヨン、マスカット・ベーリーA、メルロー、白ぶどうがシャルドネ、ナイヤガラ、ソーヴィニヨン・ブラン。商品としてはサペラヴィ(ジョージア原産の黒ぶどう)の赤も並びます。マスカット・ベーリーAとシャルドネは日本ワインの定番ですが、ヤマソーヴィニヨンとサペラヴィが揃う蔵は多くありません。

そして収穫はすべて手摘みです。村山社長は取材で「機械収穫と違い、1つの房でも熟し過ぎた部分はカットするなど、こだわった細かい仕事をしています」と語っています。醸造の側では、加熱処理をしない「生ワイン」であることを前面に掲げ、時間とともに味わいが動いていくワインであると説明しています。年間の生産量は、品目別の数字を足し合わせるとおよそ13万本です。

ヤマソーヴィニヨン——能登の代名詞

看板品種のヤマソーヴィニヨンについて、公式サイトはこう説明しています。「山梨大学がカベルネソーヴィニヨンに山ぶどうを交配して改良した赤ワイン用品種」。日本の野生種である山ぶどうの血を引くため、病気や寒さに強く、酸がしっかり残るのが特徴です。

能登ワインは開業にあたって約20品種を試したとされ、そのなかでこの品種が最も力強く育ちました。今では「能登ワインの代名詞」と紹介されるまでになっています。その土地でよく育つ品種が、結果としてその土地の顔になる——日本ワインではしばしば起きることです。ヨーロッパの銘醸地が何百年もかけて見つけた品種と土地の相性を、日本のワイナリーは数十年で探しています。

シリーズと価格の目安

ラインナップは、おおよそ次の四つの層に分かれます(価格は2026年9月時点の公式オンラインショップ、税込)。

  • ノトワイン——ブラン/ロゼ/ルージュ、各1,815円。毎日の食卓向けの基本ライン
  • NselecT(エヌセレクト)——ヤマソーヴィニヨン2,090円、スパークリングロゼ2,640円。単一品種の個性を素直に見せるシリーズ。ハーフボトル(1,320円)もある
  • 心の雫——ヤマソーヴィニヨンの樽熟成赤、3,520円。この蔵の代表銘柄
  • クオネス(Quones)——上級キュヴェ。ヤマソーヴィニヨンの樽熟成で6,600円

このほか、品種名を冠したシャルドネとサペラヴィが各2,750円、秋には能登ワインヌーボー(赤・白、各2,035円)の予約販売もあります。ブレンドで量を調整せず、品種名をラベルに出す——それが自分たちの特徴だと社長は語っています。なお2024年5月と2025年4月に価格改定が行われているため、最新の価格は公式ショップで確かめてください。

会員制度もあります。ワイン友の会「和飲会」(1口10,000円で1年間、12,000円相当のワインが届く)と、「ぶどうの木オーナー」(1口10,000円。NselecT ヤマソーヴィニヨン5本、オリジナルラベルの貼り替え、10月上旬の収穫体験つき)です。

コンクールでの評価

公式サイトの会社概要には、受賞歴が年ごとに並んでいます。とくに光るのが上級キュヴェクオネスで、日本ワインコンクール(旧・国産ワインコンクール)では次の二つの金賞があります。

  • 2013年——「2011 クオネス ヤマソーヴィニヨン(赤)」金賞
  • 2018年——「2015 クオネス ヤマソーヴィニヨン(赤)」金賞

ほかに2011年の銀賞(2009 クオネス)、2019年の銀賞(2017 クオネス)、マスカット・ベーリーAのロゼや心の雫、シャルドネの銅賞など、2008年の初出品以来ほぼ毎年のように名前が並びます。サクラアワードや「日本で飲もう最高のワイン」でも受賞しています。また日本ワイナリーアワード2026では★★★に選ばれました。ただし公式サイトの受賞歴は2020年で更新が止まっているため、それ以降のコンクール成績はここでは触れません。

2024年、そしてそれから

2024年1月1日の能登半島地震で、この蔵も被害を受けました。公式ブログが震災直後に伝えた内容は、具体的です。ステンレスタンクから約10,000リットルのワインが流出(流れたのはマスカット・ベーリーAの赤と報じられています)、熟成樽が2樽落ちて割れ、ギャラリーは天井にひび割れが入り、照明が落ちました。断水も続きました。

一方で、救いもありました。畑に大きな被害はなく、「地割れが懸念されましたが、大きな被害はありませんでした」と報告されています。そしてスタッフは全員無事でした。

そこからの歩みは、次のとおりです。

  • 2024年1月中旬——オンラインショップの販売を再開
  • 2月18日——通水。「本当に大きな1歩でした」
  • 2月26日——震災後はじめての瓶詰め。約8,000本
  • 4月30日——天井のクロスを全面貼り替え、能登ワインギャラリーの営業を再開

同じ2024年の9月には奥能登豪雨がありましたが、公式ブログは「能登ワインは豪雨の被害はほとんどありませんでした」と記しています(一部の社員の居住地域に被害があったとのことです)。

そして2026年9月時点、公式ブログは「能登ワインはシルバーウィークも元気に営業しています」と伝え、団体の来訪が増え「コロナ前のような賑わいを見せる日もある」と書いています。2026年8月には創業20周年の記念行事が開かれました。訪ねることが、そのまま応援になる——能登のワイナリーについては、その言葉がいまも当てはまります。

訪ねる

能登ワインギャラリーは展示販売のスペースで、現行商品の購入と数種類の試飲ができます。地元・能登の特産品も並び、蔵コンサートや作品展の会場になることもあります。営業は9時〜16時30分(冬季=12月1日〜2月28日は9時〜16時)、休みは12月31日〜1月3日。ぶどうが色づく季節には、発泡性の「ペルレ」が現地で供されることもあります。

見学について、公式サイトの案内は「前日までの予約制・無料・11時/14時・所要約20分・各回約40名」で、醸造設備と樽熟成庫を回りながら工程の説明を受けられる、とされています。ただし2024年4月の営業再開の告知では「工場見学は当面の間、受付停止」と明記されており、その後に再開を明示した案内は確認できませんでした。見学が目当てなら、必ず事前に電話(0768-58-1577)で確認してください。

レストランやカフェの併設はありません。アクセスは、穴水町の案内でのと鉄道 穴水駅から車で約12分。飲む日は、車のハンドルを置いていきましょう(複数の蔵を巡る計画の立て方は第51講「ワイナリー訪問とワインツーリズム」に)。

合わせたい料理

酸のはっきりしたヤマソーヴィニヨンは、ジビエや鴨、きのこ、しょうゆ味の煮込みのように、旨みと甘辛さのある料理によく寄り添います。樽熟成の「心の雫」なら、能登牛のステーキや鴨のローストといった一段しっかりした皿へ。マスカット・ベーリーAのロゼは、能登の地の魚や寿司・刺身、焼き魚と好相性です。そしてシャルドネは、穴水の牡蠣と。畑にすき込まれた殻の持ち主が、グラスの隣に戻ってくる——この蔵でしか成立しない一皿です。石川を訪ねるなら、ぜひ確かめてみてください。

よくある質問

能登ワインの歴史は?
2001年に穴水町でワイン用ぶどうの植栽が始まり、2004年7月に会社が設立され、2006年に醸造所が完成して最初のワインが世に出ました。「過疎が進む地域社会をワイン造りという産業で元気にしたい」という思いが出発点で、公式サイトは「葡萄栽培もワイン醸造もすべてイチからのスタートでした」と振り返っています。2026年8月には創業20周年の記念行事が開かれました。
牡蠣殻を使うとは?
穴水町は牡蠣の名産地で、その殻を畑にすき込む土壌改良を続けています。公式サイトは「牡蠣殻を活用した土壌で能登産葡萄を育てる」と記し、狙いとしては土の水はけをよくすること、そして海のミネラル分・カルシウム分を含んだ土でぶどうを育てることが挙げられています。処理に困っていた殻を畑が引き受けるという、地域の中で循環する仕組みでもあります。
ヤマソーヴィニヨンとはどんな品種?
公式サイトの説明によれば、山梨大学がカベルネ・ソーヴィニヨンに山ぶどうを交配して改良した赤ワイン用品種です。能登ワインでは約20品種を試した中でこの品種が最もよく育ったとされ、今では「能登ワインの代名詞」と紹介されています。カベルネ・ソーヴィニヨン譲りの香りと、山ぶどう由来のしっかりした酸が持ち味です。
代表的なワインと値段の目安は?
2026年9月時点の公式オンラインショップ(税込)で、普段使いの「ノトワイン」ブラン/ロゼ/ルージュが各1,815円、「NselecT ヤマソーヴィニヨン」が2,090円、「シャルドネ」「サペラヴィ」が各2,750円、樽熟成の「心の雫」が3,520円、上級キュヴェの「クオネス ヤマソーヴィニヨン」が6,600円です。2024年と2025年に価格改定が行われているため、最新は公式ショップで確認してください。
受賞歴は?
日本ワインコンクール(旧・国産ワインコンクール)で、2013年に「2011 クオネス ヤマソーヴィニヨン」が、2018年に「2015 クオネス ヤマソーヴィニヨン」が金賞を受賞しています。ほかに銀賞・銅賞も多数。日本ワイナリーアワード2026では★★★に選ばれています。なお公式サイトに掲載されている受賞歴は2020年までで更新が止まっているため、それ以降の受賞は確認できていません。
2024年の能登半島地震の影響は? 今は訪問できますか?
公式ブログによれば、ステンレスタンクから約10,000リットルの赤ワインが流出し、熟成樽2樽が落ちて割れ、ギャラリーの天井にもひび割れが生じました。一方で畑に大きな被害はなく、スタッフは全員無事でした。2024年1月中旬にオンライン販売を再開、2月18日に通水、2月26日に震災後初の瓶詰め(約8,000本)、そして4月30日にギャラリーの営業を再開しています。2026年9月時点でも公式ブログは「元気に営業しています」と伝えています。
見学や試飲はできますか?
ギャラリー(ショップ)では数種類のワインの試飲と購入ができ、公式の見学案内は「前日までの予約制・無料・11時/14時・所要約20分・各回約40名」となっています。ただし2024年4月の営業再開時に工場見学の受付をいったん停止した告知が出ており、その後「再開」を明示した案内は確認できません。見学を目的に訪ねるなら、事前に電話(0768-58-1577)で確認することをおすすめします。
アクセスは? 食事はできますか?
穴水町公式の案内では、のと鉄道 穴水駅から車で約12分です。レストランやカフェは併設されておらず、ギャラリーでワインケーキやワインようかんなどの加工品と地元の特産品を販売しています。飲む予定があるなら、車ではなくタクシーや同行者の運転で訪ねてください。

最終更新: 2026-09-20 / 編集: Vinotier編集部