高擶の土蔵から——天童ワインの成り立ち
天童ワインは、山形盆地の中ほど、天童市大字高擶南(たかだまみなみ)に蔵を構えるワイナリーです。公式サイトの会社概要に記された創立は1984年(昭和59年)7月、業務内容は「果実酒類の製造販売」。オンラインショップの特定商取引法の表記には、運営統括責任者として佐藤政宏さんの名前があります。
この蔵を特徴づけているのが土蔵です。山形県ワイン酒造組合の紹介ページでは、良質なぶどうを温度・湿度の安定した土蔵で静かに熟成させていると書かれ、看板の『天童ワイン(株) 赤』も公式の商品説明で「土蔵で熟成させたライトタイプの辛口」と紹介されています。同じページは天童を、開花から収穫までの雨が少なく日照時間の長い盆地で、ぶどう栽培に適した土地と説明しています。
原崎・山口・荒谷原——天童の地区名を背負うぶどう
公式オンラインショップの商品説明を読むと、天童市内の地区名がいくつも出てきます。『原崎シャルドネ』は原崎地区で栽培したシャルドネを使い、果実香と樽香、高めのアルコールによるボリューム感がある一本と紹介されています。ギフトセットに入る『シャルドネ樽熟成』は、昔から果樹栽培が盛んな山口地区のシャルドネを樽で貯蔵したあと瓶で寝かせたもの。『荒谷原マスカットベリーA』は荒谷原地区の原料で、アルコール発酵のあとにマロラクティック発酵を行った軽やかなタイプと説明されています。
公式サイトの「ぶどう自慢」では、4月中旬の萌芽から開花、結実までの畑の様子を写真付きで追い、霜に弱い芽をビニールで覆う対策や、成熟期に鳥や害虫から実を守る苦労も書かれています。使う品種は、デラウェア、ナイアガラ、マスカット・ベーリーA、ヤマ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、そして紅色の生食用ぶどうオリンピアまで。山形の果樹地帯らしい顔ぶれです。
主な銘柄と参考価格
公式オンラインショップ(2026年11月1日時点)に並ぶ主な銘柄です。価格はいずれも720mlの税込価格で参考です。
- 『天童ワイン(株) 赤』——マスカット・ベーリーAとヤマ・ソーヴィニヨン、土蔵熟成の辛口。1,672円(参考)
- 『天童ワイン(株) 白ドミセック』——山形産デラウェアのやや辛口。1,672円(参考)
- 『原崎シャルドネ』——原崎地区のシャルドネ。2,398円(参考)
- 『アサンブラージュ』——山形県産メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド。2,180円(参考)
- 『山形メルロー』——2,180円(参考)
- 『ナイアガラ』——低温発酵、香りと甘みのあるタイプと紹介。1,749円(参考)
- 『山形ヌーヴォー2026 白』——2026年産デラウェア100%の新酒。1,672円(参考)
『天童ワイン 赤』と『白ドミセック』は、山形県ワイン酒造組合のページで山形GIの認定ワインとして掲載されています。『山形ヌーヴォー2026 白』の商品説明には、モーツァルトのセレナーデ第13番K.525を聴かせながら発酵させたとあります。ほかに『レゼルブ シャルドネ』『山形シャルドネ』『マスカットベリーA樽熟成』、甘口の『わんだふる』、天童らしい『さくらんぼワイン』『ラ・フランス』『オリンピアワイン』も並びますが、確認時点で品切れの銘柄もありました。
訪ねる——団体の工場見学と、随時の売店
公式サイトの「工場見学(要予約)」によれば、見学は10名以上30名までの団体向け。ワインの製造工程の説明、約5種類の試飲、飲み方や利き酒の仕方を交えたミニ講座で約45分、参加費は無料です。受け付けは1〜12月(12月31日〜1月3日を除く)の9:00〜17:00。電話か見学予約フォームで申し込み、20歳未満は参加できません。「ワイナリー見学取材日記」には、地元紙主催のバスツアーで40名以上が訪れた日や、宮城・茨城からの団体が山寺や銀山温泉と組み合わせて立ち寄った様子が記録されています。
個人での立ち寄りについては、「試飲、売店(常時営業)」のページで販売を随時行っていると案内しています。ただ、売店の営業時間・定休日、個人での試飲の料金は公式サイトでは確認できませんでした。交通手段や駐車場の案内も見当たらないため、訪ねる前に電話(023-655-5151)で確かめてください。条件は変わることがあります。
山形のワインの中で
山形県ワイン酒造組合の分類では、天童ワインは村山エリアの造り手です。同じ天童市の荒谷には、2022年に会社を設立した小さなワイナリードメーヌ・ケロスがあり、西へ向かえば月山のふもとに月山トラヤワイナリー。置賜の高畠ワイナリーのような大型の観光ワイナリーとは違い、土蔵と地区名のぶどうで日常の一本を造り続けてきた地元の蔵です。県全体の産地像は山形の産地ガイドに、日本ワインの見取り図は第9講にまとめています。


