さくらんぼの町から、天童温泉のそばへ
フルーツワイナリー エスプリは、山形県天童市老野森にある果実酒のワイナリーです。始まりは、さくらんぼの産地として知られる隣の東根市。公式サイトの会社概要によれば、2015年7月に地元の農家とさくらんぼを収穫して山梨県で委託醸造を始め、同年11月に「東根リッチチェリーワイン」を発売しました。2016年3月に合同会社東根フルーツワインを設立し、同年10月に果実酒製造免許を取って自社での醸造に入っています。
代表は阿部利徳氏。オンラインショップの紹介によれば、創業者は名古屋大学や山形大学農学部で研究に携わっていた人物です。
2025年10月31日、醸造所と併設店舗を東根市高崎地区から天童温泉の近くへ移し、社名を「フルーツワイナリー エスプリ」に改めました。お知らせによれば、移転作業に5日ほどかかり、実際の営業再開は11月5日。同じ日にマスカット・ベーリーAやアルバリーニョなど5品種の仕込みを始めたと書かれています。山形県ワイン酒造組合のワイナリー一覧ではいまも東根市として載っていますが、同組合のメーカーページと公式サイトの住所は天童市です。
果実は収穫から2日以内に
公式サイトのこだわりのページが掲げるのは、地域の果樹農家と組み、収穫から2日以内の果実で仕込むという方針です。濃縮果汁の還元や人工甘味料・香料・着色料は使わないと書かれています。
中心にあるのはさくらんぼ。東根市のさくらんぼは地理的表示(GI)の産品で、エスプリはその佐藤錦と、果皮の赤い紅さやかをそれぞれ100%使ってワインにしています。
ぶどうでは、山形の果樹地帯で長く育てられてきたデラウェアやナイアガラ、マスカット・ベーリーA、シャインマスカット、ヤマブドウ、その交配品種のヤマソービニオンに、ピノ・ノワールやメルローも。2026年10月のブログでは、東根市神町営団地区と村山市の農家から集めたナイアガラ約300kgを、10月8日に仕込んだ様子が書かれています。
もう一つの柱が成分分析です。山形大学と共同で、ポリフェノールやアミノ酸、有機酸などを測り、日本ブドウ・ワイン学会で2018〜2020年に発表してきたと公式サイトにあります。分析の数値はサイトで公開されていますが、ここでは健康への効果には触れません。
主な銘柄
価格は2026年11月1日時点の公式オンラインショップのもの(税込・参考)です。
- 佐藤錦100%ワイン(500ml・やや甘口)4,400円——FOODEX JAPAN 2019「ご当地フードグランプリ」アルコール部門で金賞と地元審査員賞(公式サイト)。
- 紅さやか100%ワイン(500ml・やや甘口)4,400円——ルクセンブルグ酒チャレンジ2022で金賞(公式サイト)。
- シャインマスカット100%ワイン(500ml・白・やや甘口)3,850円——ボルドー酒チャレンジ2021で金賞(公式サイト)。
- 山形県産メルロー100%ワイン(750ml・赤・辛口)3,850円——亜硫酸無添加と表示。
- 山形県産ピノ・ノワール100%ワイン、やまぶどう100%ワイン(各750ml・赤・辛口)3,850円。
- ラ・フランス100%ワイン(500ml・甘口)2,750円。
GI山形の認定銘柄の一覧には、デラウエア、ナイアガラ、マスカット・ベーリーA、ヤマブドウ、シャインマスカット、東根ヤマソービニオンのワインが並びます。なお、さくらんぼや西洋梨のワインはぶどうのワインではないため、ラベルに日本ワインとは表示されない種類の果実酒です。
訪ねる
- 所在地:山形県天童市老野森1丁目15番20号(TEL 023-608-1186)
- 電車:さくらんぼ東根駅から車で約10分(公式サイト)
- 空路:山形空港から車で約20分(公式サイト)
移転のお知らせによれば、併設店舗は社員のアイデアで整え、ワインに合うおつまみを添えて試飲を出しています。一方で、営業時間、定休日、試飲の料金、駐車場の有無は、2026年11月1日時点の公式サイトでは確認できませんでした。オンラインショップには来店予約のページへのリンク(旧名「東根フルーツワイン」の表記)がありますが、予約が必須とは書かれていません。見学の案内もないため、訪ねる前に電話で確かめるのが確実です。
山形の中での位置づけ
天童市は、将棋駒と温泉の町であると同時に、果樹の町でもあります。市内には1984年創立の天童ワインや、2022年設立の会社が営む荒谷のドメーヌ・ケロスがあり、そこへ、さくらんぼを主役にしたエスプリが加わりました。
山形のワインが欧州系品種やデラウェアで語られることが多いなか、エスプリの軸は「ぶどうに限らない山形の果実」です。果実酒としてのさくらんぼワインや梨のワインの位置づけは、シードルとフルーツワインの講座で整理しています。


