南アルプス市の、小さなドメーヌ
ドメーヌ ヒデは、山梨県南アルプス市小笠原436-1にある小さなワイナリーです。運営するのは株式会社ショープルで、日本ワイナリー協会には「株式会社 ショープル/ドメーヌヒデ」の名で載っています。山梨県ワイン酒造組合のワイナリー一覧では「ショープル ドメーヌ ヒデ」と表記されています。
南アルプス市は、甲府盆地の西側、南アルプスの山並みのふもとに広がる町です。サクランボや桃、スモモなどの果樹の産地として知られ、ぶどうも栽培されています。勝沼や甲府のワイナリー集積地からは少し離れた場所にある一軒です。
日本ワイナリー協会の掲載によれば、年間の生産量は約8,000本。大手とは桁の違う、小さな規模のワイナリーです。
50歳から、ワインの道へ
代表は渋谷英雄氏です。地元の報道(2021年・2024年)によれば、渋谷氏は空港の管制官やダイビングスクールの創業、臨床心理士といった経歴を持ち、東日本大震災をきっかけに、50歳でワインの道に入ったといいます。勝沼のワイナリーで3年間修業したのち、2015年に南アルプス市へ移り、ワイナリーを構えました。
会社勤めや別の仕事を経て、人生の後半にワイン造りを始める。日本ワインには、そうした「二つ目の人生」から生まれた造り手が少なくありません。ドメーヌ ヒデも、その一軒です。
無農薬・有機栽培の畑
公式サイトは、畑を「完全無農薬・有機栽培」と説明しています。肥料には、ワインを搾ったあとの搾りかすと、剪定した枝を焼いた炭だけを使う、循環型の栽培です。剪定は、新月の引き潮の時間帯に行うとしています。月の満ち欠けに合わせて畑仕事の日を選ぶ考え方は、ヨーロッパのビオディナミにも見られるものです。
報道によれば、2024年にはクラウドファンディングを使って、1.2haの畑を無農薬・無肥料・雨よけなしで再生する計画も進めていました。雨の多い日本で、農薬も雨よけも使わずにぶどうを育てるのは簡単なことではありません。自然派と呼ばれるワインの考え方は、第47講 醸造完全編でも触れています。
足踏み破砕と樽熟成、マスカット・ベーリーAの赤
主な品種は、日本生まれの黒ぶどうマスカット・ベーリーAです(日本ワイナリー協会)。
公式サイトによれば、ぶどうは足で踏んで破砕し、樽熟成を中心に仕上げます。「教科書よりワインの心に従う」という言葉で、自らの造り方を表しています。日本ワイナリー協会の掲載によれば、赤ワインは、発酵中の果汁の一部を引き抜いて残りを濃くするセニエという方法で、果汁の引き抜きが50%を超えるといいます。果皮に対する果汁の量を減らすことで、色や味わいの濃い赤になります。
公式サイトに載っているシリーズは、「アート&プレミアムラベル」「月」「フラッグシップ」「しろしろ(白・オレンジ)」です。白やオレンジのワインも造っていることが分かります。個別の銘柄名と価格は公式サイトには載っていないので、購入するときは販売先で確認してください。
マスカット・ベーリーAは、新潟の川上善兵衛が交配で生み出した品種で、山梨ではワインに使われるぶどうの約2割を占めます。いちごのような甘い香りと、渋みの少ない軽やかな味わいが一般的な姿ですが、造り方次第で濃い赤にもなります。品種の特徴は品種:マスカット・ベーリーAで紹介しています。
ワインを買うなら、カフェ「月晴れる」へ
公式サイトによれば、醸造所での直売はありません。ワインは、南アルプス市中野316にある系列のカフェ「月晴れる」で販売しています。カフェではランチとカフェの時間が設けられていますが、営業日は公式サイトの中でも記載が分かれているため、出かける前に公式サイトで最新の案内を確認してください。
醸造所の見学や試飲については、案内が分かれています。
- 山梨県の観光サイト── 見学・試飲は酒類の専門家のみ、要予約。日・月曜休み
- 日本ワイナリー協会── 事前予約で見学・試飲とも無料
一般の方が醸造所を訪ねたい場合は、必ず事前に問い合わせましょう。小さなワイナリーは、仕込みや畑仕事の時期には対応が難しいこともあります。訪問の心得は第51講 ワイナリー訪問完全編にまとめました。
アクセス
山梨県の観光サイトによれば、醸造所へは中部横断自動車道の南アルプスICから車で約5分、JR身延線の東花輪駅からタクシーで約15分、路線バスなら「市役所」バス停から徒歩約2分です。駐車場は3台。試飲をするなら、運転しない人を決めておきましょう。
甲府盆地の西側にも、個性的な造り手がいます。山梨のワイン産地の全体像は、第70講 山梨完全編と産地:山梨で見わたせます。

