字名を社名にしたワイナリー
駒園ヴィンヤードの「駒園」は、甲州市塩山藤木に残る字名です。公式サイトによれば、創業前からここで甲州が育てられてきました。社名は畑の名前から来ており、会社の歴史より古い畑がワイナリーの中心にあります。
公式サイトは自らを「ブティックワイナリー」と呼びます。年間の生産は約15,000本で、全銘柄に山梨県産の原料ぶどうを100%使います。自社畑を中心に、地元の契約農家が育てたぶどうも仕込みます。
1952年の創業から、2019年の社名変更まで
会社概要によれば、始まりは1952年に設立された五味果汁工業株式会社です。1963年に果実酒製造免許を取得し、五味葡萄酒株式会社へ商号を変更しました。2019年に現在の駒園ヴィンヤード株式会社となっています。創業理念として公式サイトが挙げるのは、「自然に寄り添うワイン造り」です。
2026年11月時点の会社概要では、取締役会長が升本正さん、代表取締役社長が金子武志さんです。2023年2月の山梨県の記事では、栽培・醸造責任者として近藤社長の名前が紹介されていました。現在の栽培・醸造の担当者は、確認できた資料には書かれていません。事業内容には酒造業と果実酒製造販売に加えて、農地所有適格法人とあります。
自根の甲州が残る、標高460mの駒園圃場
公式サイトの畑のページには、2つの自社圃場が載っています。
駒園圃場は、1952年の創業以前から甲州を育てる自社最古の畑です。所在地は甲州市塩山藤木字駒園で、標高460m、砂壌土、面積は約40a。推定樹齢80余年の自根の甲州古木が生き続けていると書かれています。2016年からシングルヴィンヤード(単一畑)で仕込んでおり、『Tao 駒園 甲州』がその銘柄です。2023年2月の県の記事では、2016年ヴィンテージから6年連続で国際コンクールを受賞し、2022年は収穫量が例年の55%と少なく、凝縮感の高いワインになったと紹介されました。
川窪圃場は、笛吹川の左岸、甲州市塩山藤木字川窪にある砂質の畑です。標高440m、約75aで3区画あり、畑のページによれば国内改良品種4種と欧州品種4種を育てています。代表銘柄には『Taoシャルドネ』『Taoビジュ・ノワール』『Tao川窪』が挙げられています。
なお、HISTORYのページでは、栽培品種を甲州種、欧州系6品種、国内改良品種2品種としています。2つのページで数え方がそろっていないため、品種数は公式の最新の説明で確かめてください。
高い土地ではなく、低い土地に畑を開く
冷涼さを求めて標高の高い土地に新しい畑を開くワイナリーは多くあります。公式サイトによれば、駒園ヴィンヤードは逆に標高の低い地域に畑を開き、早生品種を植える方向を進めています。理由として挙げるのは、萌芽から収穫までのぶどうの生育の流れと、近年の気候の変化です。科学的な管理を控えながら健全なぶどうを収穫するための試み、と説明しています。
2023年2月の県の記事では、その例として西野圃場の名前が挙がっていました。山梨県の日本ワインコンクール2025の資料には、『Tao Caprice Blanc 2024』の原料として「山梨県南アルプス市西野産」のソーヴィニヨン・ブランと甲州が書かれています。一方で、公式サイトの現在の説明は自社圃場を「甲州市内に2か所」としており、西野の畑の位置づけや面積までは確認できませんでした。公式オンラインショップには『Pony 西野甲州』や『Cru Nishino』の銘柄が並びます。
同じ酵母で、畑の違いを見せる
公式サイトが掲げる考え方は、「Tao:道」と名付けた、天地自然の理に寄り添うワイン造りです。「その年の、その畑のぶどうとの出逢い、一期一会を大切に」という言葉は、サイトの見出しにも置かれています。
栽培については、ビオロジック(有機農法)を実践し、雑草を生やすことで土の環境を保つと書かれています。醸造ではニュートラルな酵母を統一して使います。2023年の県の記事によれば、産地ごと、畑ごとに仕込みながら、搾汁方法や発酵管理、酵母は産地や品種で変えません。造りの条件をそろえることで、気候、土壌、標高の差をワインに残す考え方です。同じ記事は、ぶどうの産地の標高差を280mから620mまでの340mとしています。
Pony、Tao、Cru Nishino
公式サイトでは2つのグレードを説明しています。Ponyはエントリーグレードで、全銘柄に契約農家が育てた山梨県産ぶどうを使います。Taoはスタンダードグレードで、地域別に仕込むシングルリージョンのワインです。少量生産のため完売することがあり、銘柄によっては造らない年もあると断っています。
2026年11月時点の公式オンラインショップの表示から、一部を挙げます(価格は一覧の表示で、変わることがあります)。
- Tao 駒園 甲州 2025── 3,960円。
- Tao 川窪 ビジュノワール 2024── 4,400円。
- Tao ピノノワール 2024── 4,400円。
- Pony 甲州 2025── 3,080円。
- Pony 甲州桜花 2025── 3,080円。
- Pony Caprice Blanc 2025── 3,300円。
- Pony Sparkling Petit Rosē 2025── 3,520円。
- Cru Nishino 甲州 2024── 3,960円。
- Cru Nishino シラー 2023── 5,060円。
- Cru Nishino ピノ・ノワール 2023── 5,500円。
銘柄の表記は、公式サイト内でも「Tao甲州駒園」と「Tao 駒園 甲州」のように分かれています。「Caprice」はフランス語で「きまぐれ」の意味で、県の資料によれば、その年の作柄に合わせて使う品種とブレンドの割合を変えます。
確認できた受賞
最近の受賞として、次の3つを確かめました。
- 日本ワインコンクール2026── 『Pony Caprice Blanc 2025』が銀賞(公式サイト、2026年7月18日のお知らせ)。
- フェミナリーズ世界ワインコンクール2026── 『Pony koshu桜花 2025』が金賞(公式サイト、2026年4月10日のお知らせ)。
- 日本ワインコンクール2025── 『Tao Caprice Blanc 2024』が金賞で部門最高賞(山梨県の資料)。部門は欧州・国内改良品種等ブレンド白です。ぶどうはソーヴィニヨン・ブラン、甲州、シャルドネを5対4対1で合わせています。
訪ねる前に
公式サイトの営業時間は10:00〜16:00です。休業日は、トップページに「定休日9月1日~10月31日(仕込期)と11月1日~8月31日の土日祝日は休みです。」、お問い合わせページに「定休日 土日・祝日」と書かれています。2つの文面だけでは仕込期の扱いを判断しにくいため、出かける前に電話(0553-33-3058)で確かめてください。
見学と試飲の案内は公式サイトにありません。県観光サイト(2022年12月時点)では、試飲・見学ともに「なし」、直営ショップは「あり」、駐車場は普通車2台で、「人数制限3名、要問合せ」と書かれています。少人数で買いに行く場所と考え、事前に連絡するのが確実です。ワインは公式オンラインショップでも買えます。
同じ塩山の造り手には、奥野田ワイナリーや塩山洋酒醸造があります。山梨全体の産地の成り立ちは産地:山梨と第70講 山梨完全編にまとめています。


