「東電マンの夢」から生まれたワイナリー
東夢ワイナリー(株式会社東夢)は、山梨県甲州市勝沼町勝沼にあるワイナリーです。日川(にっかわ)のほとり、いくつものワイナリーが集まる「勝沼ワイン村」の中にあります。
その始まりは、少し変わっています。日本ワインの専門メディアの取材記事によれば、勝沼町出身で東京電力に勤めていた髙野英一さんら、東京電力のOBたちが、勝沼の鳥居平(とりいびら)にあった耕作放棄地を開墾して、ぶどう作りを始めました。社名の「東夢」は「東電マンの夢」から。ふるさとの荒れた畑をよみがえらせたいという思いが、ワイナリーの名前になっています。
百科事典などの資料によれば、開墾を始めたのは2002年。2004年に最初の収穫を迎え、同じ年の12月に会社を設立しました。はじめは醸造を外に委託し、2007年に自社の醸造所を建てています。2024年には設立20周年を迎えました。髙野さんは現在も代表取締役を務め、勝沼ワイン村そのものも髙野さんが立ち上げた施設です。専門メディアは2024年の記事で、ワイン村に9軒のワイナリーなどが入っていると伝えています。
甲州とビジュノワール
畑は、甲州ぶどうの栽培発祥の地とされる日川の谷と、勝沼の銘醸地として知られる鳥居平にあります。専門メディアの取材では、地元の農家から借りた畑が多く、山梨で一般的な棚仕立てが中心とされます。白は甲州、モンドブリエ、シャルドネ、プティ・マンサン、赤はビジュノワール、マスカット・ベーリーA、メルロー、アルモノワール、タナなど、日本で生まれた交配品種を多く含む顔ぶれです。
看板は、山梨県の観光サイトによれば「東夢甲州」と「勝沼ビジュノワール」。ビジュノワールは、山梨県で生まれた黒ぶどうの交配品種で、色が濃く、早く熟すのが特徴とされます。山梨県が公表している日本ワインコンクール2023の結果では、東夢の「2021年 樽熟成 勝沼ビジュノワール」が国内改良等品種・赤の部門で奨励賞を受けました。
公式オンラインショップには、このほか「樽熟成 河原の甲州KAZAMA」(白)、微発泡の「kila-kila」、そして甲州のスパークリングとビジュノワールを上日川ダムのトンネルで約1年貯蔵したシリーズなどが並びます。ダムのトンネルを貯蔵庫に使う、ほかではあまり見かけない取り組みです。
ワインとブランデーの「葡蘭酎」
東夢ならではのお酒が、葡蘭酎(ぶらんちゅう)です。ワインに、甲州100%で造ったブランデーを合わせた独自のお酒で、赤の「葡蘭酎20」と白の「葡蘭酎25」があります。公式オンラインショップでは、720mlが2,860円、320mlが1,760円(いずれも税込)。直営ショップでは、ビジュノワールと並ぶ主力の商品です。ワインにブランデーを加えるお酒は、ポートワインのような酒精強化ワインに近い発想で、造りの違いは第15講 酒精強化ワインも参考になります。
ぶどう畑の中の「ワインの宿」
ワイナリーには、ぶどう畑の中に泊まれる「ワインの宿 東夢」が併設されています。公式サイトによれば、日川沿いの畑の中にコテージが5棟(1棟に大人4名まで)あり、料金は1棟あたり平日20,000円から、休日の前日や繁忙期は30,000円から(税込)で、ウェルカムワインが付きます。テントサイトも4区画あり、宿泊は15時から翌10時、日帰りのデイキャンプは10時30分から14時30分まで。バーベキューの道具などを借りることもできます。繁忙期は9月17日〜11月10日とお盆・ゴールデンウィークで、12月26日〜1月6日は休業です。食事の提供やチェックインの時刻は公式サイトに載っていないため、予約のときに確かめましょう。
訪ねる前に・アクセス
直営ショップの窓からは、日川越しにぶどう畑と南アルプスが見渡せると公式サイトは紹介しています。直営店だけで扱う商品もあります。山梨県の観光サイト(2022年時点)では、ワイナリーの見学はできず、試飲はできるとされています。
注意したいのは、営業時間と定休日です。公式の会社概要は「平日10時〜17時、定休日は水曜・年末年始・臨時休業」、県の観光サイトは「10時〜16時、火曜・水曜休み」と、資料によって違います。週末に訪ねる予定なら、なおさら電話(0553-44-5535)で確かめてから出かけるのが安心です。県の観光サイトでは、駐車場は普通車5台・バス1台とされています。
最寄り駅はJR中央本線の勝沼ぶどう郷駅です。駅から勝沼ワイン村までは数kmあるので、タクシーか車で向かうのが便利です。試飲をするなら、車の運転はしないこと。ワイナリーを訪ねるときの心得は第51講 ワイナリー訪問へ。
同じ甲州市の勝沼には、半導体の会社が始めたMGVsワイナリー(マグヴィス)などもあります。山梨の産地全体は第70講 山梨完全編と産地:山梨へ。

