果実生産者組合から生まれた蔵
塩山洋酒醸造は、山梨県甲州市塩山の千野(ちの)にあるワイナリーです。正式な社名は塩山洋酒醸造株式会社で、英語名は Enzan Wine Co., LTD。公式サイトの冒頭では、旧塩山市(いまの甲州市塩山)で果実生産者組合を母体に、果樹栽培の振興と農産物の加工を目的として設立されたと説明されています。ぶどう栽培が主な産業である土地で、農産物の加工を通じて地域に貢献したい、というのが会社の考え方です。
設立の時期は、公式サイトのトップページでは昭和32年4月、会社概要のページでは昭和34年4月(1959年)とされていて、同じサイトのなかでも記載が分かれています。このページでは創業年を一つに決めず、両方の記載があることだけを記しておきます。
代表取締役は萩原弘基さん。山梨県の観光サイトでは、ワインを愛する「3代目」の萩原さんとして紹介されています。同じ観光サイトによれば、醸造から出荷までをすべて自社で行い、ラベルも手で貼っているそうです。創業当時のままの醸造所に、コンクリート製の昔の貯蔵タンクや広い地下貯蔵室が残っていることも紹介されています。
自園農場と契約農家のぶどう
公式サイトでは、自園農場と契約栽培農家で育てた山梨県産のぶどうを使ってワインを造っていると説明しています。ただし、ネットショップの商品説明を見ると、一升瓶の「赤ワイン 赤ラベル」だけは原料に「輸入原料・国産ぶどう」と書かれています。買うときは、ラベルや商品説明の原料表示を確かめてください。山梨県産ぶどうだけで造られ、山梨県内で醸造されたワインには「日本ワイン」の表示がつきます(用語:日本ワイン)。
商品説明から読み取れる品種は、白が甲州、デラウェア、シャインマスカット、赤とロゼがベーリーアリカント、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、巨峰です。ベーリーアリカント、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーンは、いずれも新潟の川上善兵衛が交配した日本生まれの品種です。交配品種の考え方は第69講 交配品種とクローンでくわしく扱っています。
重川沿いの自社畑
この蔵の甲州を代表するのが、甲州市を流れる重川(おもがわ)沿いの自社農園です。ネットショップの説明によれば、この畑のぶどうは発酵に必要な栄養分が多かったため、2009年から単一の畑として別に仕込んでいます。それが「甲州 重川」で、日本ワインコンクールの甲州辛口部門で入賞を重ねていると紹介されています。
代表的なワイン
公式サイトの商品紹介とネットショップに並ぶ主なワインは次のとおりです(味わいの表現は蔵の説明によります)。
- 甲州 重川──重川沿いの自社畑の甲州100%。洋梨や和柑橘の香りとすっきりした酸の辛口の白
- SALZ BERG Koshu──ステンレスタンクで発酵させた甲州に、別に8か月樽で熟成させた甲州を合わせた辛口。国産ワインコンクール2013で銀賞、日本ワインコンクール2015・2016・2018・2019で銅賞
- 樽甲州──果皮を果汁に漬け込んだあと、アメリカンオークの樽で発酵・熟成させた、ボリュームのある辛口の白
- 甲州 Sur Lie/甲州 おりがらみ──澱(おり)を引かずに寝かせるシュール・リーの辛口と、澱ごと瓶に詰めたにごりタイプの中口
- BLANC──甲州市産の甲州とシャインマスカットの辛口の白
- ORANGE ROUSSI──果皮と一緒に発酵させた甲州によるオレンジワイン
- ベーリーアリカント──ベーリーアリカント100%のフルボディの赤。ふつうはブレンドに使う品種で、蔵は「100%の商品を造ったのは弊社が最初だと言われている」と説明しています
- Japanese Blend──ブラック・クイーン、ベーリーアリカント、マスカット・ベーリーAを樽で熟成させてから合わせたミディアムボディの赤
- Enzan Rouge/Dry Rose──ブラック・クイーンとマスカット・ベーリーAの軽やかな赤と、巨峰とマスカット・ベーリーAの辛口のロゼ
- DELA KOSHU SPARKLING──デラウェアと甲州の辛口のスパークリング
- 一升瓶ワイン──甲州などを合わせた中口の「白ワイン 金ラベル」と、自社農園のベリーアリカントを合わせた「赤ワイン 赤ラベル」
このほか、商品紹介には「Lespedeza Koshu」という甲州のワインも載っていますが、くわしい説明は確認できませんでした。山梨県の観光サイト(2022年時点)では、ワインは20種類、一升瓶ワインは6種類を造っているとされ、ベリーアリカント100%のワインが「大正ロマン・ベリーアリカント」の名で紹介されていました。
訪ねる前に
- 営業時間:平日9:00〜17:00(公式サイト。県の観光サイトでは8:00〜17:00)
- 休み:土曜・日曜・祝日(公式サイト。県の観光サイトでは日曜・祝日・年末年始)
- 工場見学:可(要予約、10名程度まで。県の観光サイト・2022年10月時点)
- 試飲:要問い合わせ。料金は公式サイトに記載なし
- 購入:ワイナリーでの直接販売のほか、2026年9月に開設された公式ネットショップ(BASE)、電話・FAX・問い合わせフォームでの注文
週末は休みなので、旅行の日程と合わせるときは注意が必要です。公式サイトと観光サイトで営業時間や定休日の記載が違うため、訪ねる前に電話(0553-33-2228)で確認するのが確実です。運転する人と20歳未満は試飲できません。
アクセスと周辺
公式サイトによれば、JR中央本線の塩山駅から車で約3分(県の観光サイトでは徒歩15分)。塩山駅から県道201号線を北へ進み、上赤尾交差点、千野駐在所前交差点を左折、JAの共選所を過ぎて橋立天神を右折した先にあります。中央自動車道の勝沼ICからは車で約15分(県の観光サイト)。駐車場はありますが、県の観光サイトでは普通車3台分とされています。
塩山には、塩山駅から歩ける甲斐ワイナリーや、家族で営む機山洋酒工業もあり、平日に合わせて回ることができます。勝沼の大きなワイナリーとは違い、組合から生まれた地元の蔵の一升瓶と単一畑の甲州を並べて飲むと、山梨のワインの幅広さがよくわかります。産地の全体像は産地:山梨で、訪問の心得は第51講 ワイナリー訪問完全編でどうぞ。


