塩尻で90年以上続く、ワインとジュースの老舗
株式会社アルプスは、長野県塩尻市塩尻町に本社工場を置くメーカーです。公式サイトの沿革によれば、1927(昭和2)年に「アルプス葡萄酒醸造所」として創業し、1947年にストレート果汁、1955年に濃縮果汁の製造を始めました。1962年に株式会社アルプスへ改組し、1974年に本社工場を現在地へ移しています。ワインだけでなく、ぶどうやりんごのジュース、ブランデーも造っており、須坂市にも工場があります。
名前がよく似たワイナリーに、山梨県笛吹市のアルプスワインがありますが、こちらは別の会社です。このページで扱うのは長野・塩尻の株式会社アルプスです。
塩尻市は、桔梗ヶ原を中心にメルロの産地として知られる土地です。同社は、1970年代に県内のぶどう栽培農家とアルプス出荷組合をつくり、原料を安定して確保してきたと紹介しています。塩尻市のふるさと納税の紹介ページでは、ワインの醸造量は県内でトップ、全国でも10本の指に入る規模とされています。
自社農園「アルプスファーム」
契約農家の高齢化や耕作放棄地の増加を受けて、同社は自社での栽培にも力を入れています。2008年に農業法人アルプスファームを設立し、2010年に塩尻市太田地区などで欧州系品種の植栽を始めました。2016年には芦ノ田地区などで、コンコードの垣根栽培にも取り組んでいます。公式サイトは、塩尻桔梗ヶ原を中心に耕作放棄地をぶどう畑に変えてきたと説明しており、ふるさと納税の紹介ページでは洗馬(せば)地区を中心に広い畑を持つとされています。
公式サイトが挙げる栽培品種は、メルロー、シャルドネ、ブラッククイーン、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ソーヴィニヨン・ブラン、シラー、ツヴァイゲルトレーベです。塩尻は日照が多く、収穫期の昼と夜の気温差が大きいことが、ぶどうづくりに向いていると紹介されています。
日本ワインのブランド「ミュゼドゥヴァン」
同社の日本ワインは「ミュゼドゥヴァン」のブランドで出ています。公式通販では、グレードが上からリーグアン、リミテッド、エトワール、ダイナスティ、マエストロと分かれ、さらにスパークリングの「オアシス」と、日常向けのミュゼドゥヴァンがあります(2026年10月時点の公式通販の掲載による)。
- 上位グレード──塩尻産のメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、シラー、カベルネ・フランなどを使う品種名のワイン。たとえばダイナスティの「塩尻メルロー」は720mlで4,499円(税込)
- オアシス──ブラッククイーンのスパークリングや、3品種をブレンドした「3(スリー)スパークリング」など。長野県の観光サイトは、3スパークリングをシャルドネ、ゲヴュルツトラミネール、ソーヴィニヨン・ブランのブレンドと紹介しています
- 日常向けのミュゼドゥヴァン──「松本平ブラッククイーン」「善光寺竜眼」「信州プレミアムコンコード」「信州プレミアムナイアガラ」「塩尻マスカットベーリーA」など、2,000円前後の銘柄が中心
ブラッククイーンは日本で生まれた黒ぶどう、竜眼は長野・善光寺周辺で古くから育てられてきたぶどうです。欧州系品種と、長野で長く栽培されてきた品種の両方を扱っているのが、このブランドの幅の広さです。
このほか、日本ワインとは別に「国産カジュアルワイン」として、酸化防止剤無添加の「あずさワイン」や有機ワインも販売しています。公式サイトによれば、有機ワインと有機ジュースには米国ワシントン州ヤキマバレーで育った有機ぶどうを使っています。国内のぶどうだけで造る日本ワインとは区別されるので、ラベルの表示を確かめて選ぶとよいでしょう。
日本ワインコンクール2019で金賞2本
山梨県が公表した日本ワインコンクール2019の資料によれば、同社は欧州系品種の白と赤の両部門で金賞を受けました。
- ミュゼドゥヴァン エトワール 塩尻ソーヴィニヨンブラン(ナイトハーベスト)2018──アルプスファームで夜間に収穫したソーヴィニヨン・ブランを低温で発酵させ、品種の香りを生かすため樽を使わずに仕上げたとされています
- ミュゼドゥヴァン ダイナスティ 塩尻メルロー&カベルネフラン 2017──アルプスファームのメルロー85%、カベルネ・フラン15%。フレンチオークの樽で18か月熟成したとされています
どちらも、2010年に植栽を始めた自社農園のぶどうから生まれたワインです。樽熟成が味わいにどう影響するかは、第63講「樽とオーク完全編」で詳しく扱っています。
買い方と訪ね方
公式サイトでは、本社工場の見学や試飲の案内は確認できませんでした。手に取って選ぶなら、塩尻駅ビル1階の直営店「野田屋」が便利です。会社案内によれば営業は10:00〜18:30、元日を除いて年中無休です。公式サイトの通販でも購入できます。本社工場はJR塩尻駅からタクシーで約15分、長野自動車道の塩尻ICから車で約20分の場所にあります。訪ねる場合は、事前に電話(0263-52-1150)で確認してください。
塩尻には、同じ桔梗ヶ原の井筒ワインや五一わいん(林農園)、片丘のドメーヌ・コーセイなど、個性の違うワイナリーが集まっています。塩尻と長野県全体の産地の流れは、第72講「長野完全編」にまとめています。
