野沢温泉スキー場の中の、1975年からの宿
ペンション・シュネーは、長野県の北のはずれ、野沢温泉村のスキー場の中にある小さなペンションです。所在地は下高井郡野沢温泉村豊郷8276。公式サイトによれば1975年から営業していて、場所は日本スキー博物館の隣。夏は噴水と花畑のある芝生の公園を眺めながら食事ができ、冬はスキーを履いたまま出入りできます。
長野県のNAGANO WINEサイトの紹介では、オリンピアンの古川年正さん・美雪さんが営んできた宿で、2代目オーナーの知也さん・美樹さん夫妻が、ワイン造りに乗り出しました。公式サイトで夫妻は「私達は、実はソムリエです」と書いています。宿が売りにしているのは自然派ワインで、常に約400種類をそろえていると案内しています。
「野沢温泉ハウスワイン特区」という仕組み
ワイン造りの土台になっているのが、国の構造改革特別区域(特区)の制度です。国税庁の資料によれば、特区の中で農家民宿などを営む農業者(特定農業者)が、自分で育てた果実を原料に果実酒を造る場合、製造免許に必要な最低製造数量(6キロリットル)の基準が適用されません。ふつうなら年に6キロリットル、750mlの瓶でおよそ8,000本分を造れる規模が求められるところを、宿が自分の畑のぶどうで、自分の店で出す量だけ造れるようにする特例です。
野沢温泉村は、村の全域をこの特区とする計画を立てました。ペンション・シュネーの公式サイトによれば、「野沢温泉ハウスワイン特区」の認定は2020年12月11日。そして宿は2025年9月16日に果実酒の製造免許を取りました。特区の免許なので、ワインの販売はペンション・シュネーのレストランの中だけという条件がつきます。公式サイトはこれを、村に来なければ飲めない「まさに、地酒」と表現し、昔から村に続く野沢菜にたとえています。
なぜ、在来のヤマブドウなのか
夫妻はもともと、ヨーロッパ系の品種でワインを造ろうと考えていたそうです。考えを変えたきっかけとして公式サイトが挙げるのは、いちばん好きな造り手だというフランスのフィリップ・ジャンボンさんとの出会いでした。ぶどうのほかに何も入れずに造る人で、会ったときに「ワインがすごいだけで、私はすごくない」と話していたといいます。その話を聞いて、野沢温泉村のぶどうで造らなければ、と感じたと書かれています。
選んだのは、村に昔からあるヤマブドウです。挿し木や接ぎ木の方法もあるなかで、村に100年、200年と根づいてほしいという願いから、種から育てると決めたそうです。それには長い時間がかかるため、それまでは今ある山ぶどうの挿し木や、山ぶどう系の品種で収量を確保していく計画です。
畑については、公式サイトの「自然農法」のページに方針がまとめられています。肥料、農薬、除草剤は使わず、土も耕さない。虫や動物も土や空気の流れを整える仲間と考え、雑草の様子から畑の状態を読むといいます。山ぶどうのほか、野菜やりんご、梨、すもも、かりんも育てています。醸造では、人工の酵母も酸化防止剤も使わない方針です。
2026年の初仕込みを目指して
公式サイトによれば、免許を取った2025年は、ぶどうの出来がよくなかったため仕込みができませんでした。家族の体調不良も重なったと書かれています。いまは2026年に初めて仕込むことを目指している段階で、ワインの名前は「無添加 山ぶどう ハウスワイン」と案内されています。まだ飲める一本があるわけではないので、宿を訪ねるときに提供が始まっているかどうかを確かめてください。宿のブログ「ずくなしevery day」でも、山ぶどうの花の様子などが折々に書かれています。
ワイン造りの夢として、公式サイトはもうひとつのことを書いています。村の誰もが野沢菜を漬けて、家ごとに違う味が出るように、村の誰もがワインを造り、それが新しい村の文化になってほしい、と。造りの考え方が近いワインは第45講 自然派ワイン完全編でまとめています。
泊まる前に知っておきたいこと
宿の予約は、基本的にメール(pensionschnee@yahoo.co.jp)です。農作業や料理の仕込みで電話に出にくくなったためで、メールが難しい人は電話(0269-85-2012)でも相談できます。部屋代の全額前払いで予約が確定し、支払い後はキャンセルや日にちの変更でも返金されません。公式サイトの客室ページでは、冬のハイシーズン(12〜5月)は1部屋1〜2名で、バス・トイレ付きが45,000円〜、バス・トイレ共同が40,000円〜(素泊まり朝食・税別、別に宿泊税3.5%)です。予約の受付は泊数によって始まる時期が違い、1泊なら1か月前から、5泊以上なら6月中旬からです。
チェックインは15:00〜20:00、チェックアウトは10:00。朝食は7:30〜8:30のビュッフェで、自家製パンやスープが並びます。夕食は宿泊者だけで、木曜〜月曜の18:00から、前菜の盛り合わせ・スープ・肉料理・デザートの4皿が1人6,000円(税込)。チェックインの14日前までの予約が必要で、火曜・水曜は休みです。レストランとバーへの飲み物や食べ物の持ち込みはできません。公式サイトのRestaurant・Barのページでは、春〜秋のランチ(11:00〜)・ディナー営業は2026年は基本休みで、2027年に再開予定と案内されています。
飯山駅から、冬は雪の上を迎えに
電車なら、北陸新幹線の飯山駅から「野沢温泉ライナー」で終点の野沢温泉へ。野沢温泉観光協会によれば所要約25分、大人600円です。冬は温泉街から動く歩道「遊ロード」(無料・日中のみ)に乗り、降り場から圧雪した道を5分ほど歩きます。迎えを頼みたい場合は、バスに乗る前に電話して、バス停「新田」で降りるよう公式サイトは案内しています。
車なら、夏は宿まで乗り入れられ、駐車場は無料です。冬は村の柄沢第二駐車場(スキー場の有料駐車場)に停めて電話すると、雪上車などで迎えに来てくれます。往復で少なくとも30分かかるとのことです。北信州のほかの造り手では、中野市のたかやしろファーム&ワイナリーがあります。長野の産地の全体像は産地:長野と第72講 長野完全編へ。

