開拓地のりんご畑に建つワイナリー
信州まし野ワインは、長野県下伊那郡松川町大島3272にあるワイナリーです。公式サイトのトップは、南アルプスを望み、東向きに開かれたりんご畑の中にあると紹介しています。運営は信州まし野ワイン株式会社。会社概要によれば、代表者は宮沢喜好氏、設立は1991年、資本金4,000万円、従業員は10名(パートを含まず)です。
松川町は中央アルプスと南アルプスに囲まれた、南信州の町です。公式サイトのコンセプトページによれば、かつては養蚕が主な産業でしたが、昭和初期の世界恐慌と生糸の暴落で暮らしが揺らぎ、住民は「自力経済更生」を掲げて、りんごや梨の栽培を始めました。昼夜の寒暖差が大きいこと、日当たりがよいこと、段丘や山麓の扇状地があること。この土地の特性を生かした果樹栽培は町を挙げて広がり、およそ100年を経たいま、松川町は「くだものの里」として知られています。
ワイナリーがあるのは、町の西部の日当たりのよいまし野(増野)地区です。標高は700m以上(トップページでは「標高750mを超える」)。戦前までは未開の地でしたが、昭和22年に外地から引き揚げてきた人々が開拓団を結成し、山林を切り開いて果樹の苗木を植えました。公式サイトは、ワイナリーの周りを歩くと当時の開拓団の精神がいまも息づいているのが分かる、と書いています。
ジュース加工から始まった「農民資本のワイナリー」
平成3年(1991年)、信州まし野ワイン株式会社は、地域にある果実のジュース加工と販売を主な業務として設立されました。原料の果実は自社農園のものと、その年の収穫量に応じて近隣の農業者が育てたものを使います。公式サイトは目指す姿として、自然に感謝し「本物」「健康」を届けること、地域の農産物を安全においしく加工すること、そして「農民資本のワイナリー」として農民自らが立ち上がり開拓精神を受け継ぐことを掲げています。
いまもジュースとワインの製造に加えて、委託加工を大切な仕事にしています。りんご、ぶどう、洋梨、梅、かりんなど、地域の人から預かった果実を、少量からジュースや果実酒に加工して渡すというものです。松川町が国に出した「南信州松川町りんごワイン・シードル特区」の計画書では、町内のワイナリーは信州まし野ワイン株式会社の1社と記されており、農家が自分のりんごでお酒を造る動きを支えてきた存在でもあります。
ヤマブドウ、信濃リースリング、そしてりんご
信州まし野ワインのこだわりは「単一品種と土地性」です。地域で採れた果実を新鮮なうちに加工し、果実の個性を感じられるジュースと果実酒を造る、と公式サイトは説明しています。
- ワイン── ヤマブドウや信濃リースリングといった個性的なぶどうで醸す、純国産・長野県産のワイン。信濃リースリングは、リースリングとシャルドネを掛け合わせた長野生まれの白ぶどうとされます。国内で育ったぶどうだけで造るワインの表示ルールは用語:日本ワインで解説しています。
- りんごジュース── ふじ、王林、シナノスイートなど、りんごの品種ごとに分けて搾ったジュース。
- りんごのお酒── 南信州のりんごを使ったシードル。国税庁関東信越国税局の酒蔵マップでは、代表銘柄として「ピオニエ シードル」が載っています。洋梨のお酒ポワレや蒸留酒にも取り組んでいます。
2023年6月20日には新シリーズ「MASHINO りんごワイン」(500ml・1,650円税込)を発売しました。生食用として人気の高いりんごを6品種選び、それぞれの個性が出る造り方を開発していると紹介されています。公式サイトは、りんごのお酒は鉄分を含まないため魚介と合わせても生臭さを感じにくく、幅広い料理に合わせやすいと説明し、炭酸が苦手な人やワイン・日本酒のように飲みたい人に向けた、シードルの姉妹品と位置づけています。
ピオニエ蒸留・醸造所
2018年には、プレミアムシードルとアップルブランデーの製造に向けたクラウドファンディングを実施し、受付を終えたと公式サイトで報告しています。同じ年の7月には、果実酒と蒸留酒を造れる新工場「ピオニエ蒸留・醸造所」が完成しました。「ピオニエ」は仏語で開拓者を意味する言葉で、まし野の開拓の歴史を思わせます。公式サイトによれば、国内でも数少ないブランデー蒸留器を、ガラス張りの建物の外から見学できるとのことです。
訪ねる前に
公式サイトのアクセスページによれば、ワイナリー直売店の営業時間は10:00〜16:00、定休日は火曜日です。年末年始やお盆、そのほか臨時休業の場合もあるため、事前に電話(0265-36-3013)で確かめるよう案内されています。2024年12月の告知では、年末年始は12月28日〜1月5日の休業で、雪の影響で臨時休業になる場合もあるとしていました。試飲や見学ツアーについては、公式サイトに案内がありません。
アクセスは、電車ならJR飯田線の伊那大島駅からタクシーで約15分。車なら中央自動車道の松川ICから約3km・約5分で、駐車場は約10台です。標高が高いため、冬は路面が凍結している可能性があると注意が添えられています。訪問の心得は第51講 ワイナリー訪問へ。
同じ松川町には、りんご農家から生まれたワインとシードルの醸造所VinVie(ヴァンヴィ)があります。天竜川沿いを北へ上がれば、伊那市に夫婦二人で営む伊那ワイン工房も。長野の産地の全体像は産地:長野と第72講 長野完全編で整理しています。

