文月の斜面に開いた、2点のワイナリー
Due Punti Vineyards(ドゥエ プンティ ヴィンヤーズ)は、北海道北斗市文月189番地の1にあるワイナリーです。運営はDUE PUNTI株式会社。北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(2026年2月現在)によれば、ニュージーランド、イタリア、日本で醸造と栽培の経験を積んだ井坂真介さんが、2023年に北斗市に開設しました。醸造免許の取得も2023年です。輸入・販売店の紹介では、DUE PUNTIの設立を2020年としており、畑づくりから醸造所の開設までに数年をかけたことがうかがえます。
名前のDUE PUNTIはイタリア語で、直訳すると「2つの点(Two Points)」。北海道庁の紹介によれば、井坂さんがワイン造りで大事にしている「品質最優先」と「広い視野で」という2つの指針を表しています。
造り手、井坂真介さん
英国のワイン誌『Pellicle』の2026年7月の記事は、井坂さんがイタリアとニュージーランドでの経験を土台にしていると紹介しています。ニュージーランドでは、日本人の醸造家楠田浩之さんが営むKusuda Winesで働いていたといいます。輸入・販売店の紹介によれば、井坂さんはワインショップの経営、輸入、ソムリエ、生産者と、ワインに関わる仕事を一通り経験してきた人です。
同じ記事によれば、井坂さん自身は海外で醸造を学んだ経験から、これから北海道でワインを造る人が国内で学べる環境をつくりたいと考えており、すでに見習いをひとり雇っています。いずれはその人が自分のワインを造れるようにしたい、という話も紹介されています。
函館山を望む畑と、石灰岩の山
北斗市は、津軽暖流の影響を受けて、冬は北海道のなかでは比較的暖かい地域です。北海道庁の紹介によれば、畑は函館山を望むゆるやかな南南西向きの斜面にあり、大野平野と函館山、海の向こうの下北半島まで見渡せます。畑の裏の山側には、石灰岩を豊富に含む餓廊(がろう)鉱山があります。
畑の場所は、同じ北斗市文月で先にワイン造りを始めた農楽蔵(のらくら)の佐々木賢さん夫妻の助言を受けて選んだと、輸入・販売店は紹介しています。『Pellicle』の記事も、Due Puntiの畑は農楽蔵の道を挟んだ向かいにあると書いています。土地の成り立ちとワインの関係は第67講 土壌とテロワールでまとめています。
ピノ・ブランと、ピノ・ノワール
栽培面積は北海道庁の資料で2ha。主な品種はピノ・ノワール、ピノ・ブラン、シャルドネ、ツヴァイゲルト、メルローです。『Pellicle』の記事では、植えた樹は約6,000本で、中心はピノ・ノワールとピノ・ブラン。シャルドネ、ツヴァイゲルト、メルロー、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・グリはごく少量とされています。ソーヴィニヨン・グリは佐々木賢さんの助言で数年前に70本を植えたもので、井坂さんが将来に期待をかけている品種だと紹介されています。
『Fumizuki』と『Nostalgia Bianca』
自社畑のワインには、所在地の地名「文月」から取った『Fumizuki』の名が付いています。『Pellicle』の記事は、『Fumizuki Pinot Blanc』、3種類の黒ぶどうを合わせた『Fumizuki Rosso』、ピノ・ノワール単一の1本の3つを挙げています。輸入・販売店の『Fumizuki Pinot Noir 2024』(赤・750ml・アルコール13.5%、税込7,920円)の紹介では、発酵を始める前に酸化防止剤(SO2)をまったく加えず、それが張りつめた緊張感につながったとしています。
もうひとつの柱が、余市町のベテラン栽培農家のぶどうで造る白『Nostalgia Bianca』です。2022年はケルナーとシャルドネを使い、房のまま搾って低温で澱を沈め、上澄みの果汁を約8割は大樽、残りは樹脂製のキューブ型タンクで発酵させ、澱の上で寝かせています(税込5,126円)。『Nostalgia Bianca Aki 2023』は余市のケルナーで造り、ステンレスタンクで発酵させてから大樽で2か月ほど熟成させ、清澄もろ過もしていないと紹介されています(税込5,060円)。余市のぶどうについては、ドメーヌ・タカヒコなどの造り手も並ぶ第68講 北海道完全編にまとめています。
ワイン以外では、2025年7月の北海道新聞が、地元の大野農業高校の生徒が育てたりんごで造るシードル『Cider 2024』の商品化を伝えています。公式サイトのお知らせには、『stramatura 2025』の予約販売も告知されていました。価格や本数はヴィンテージで変わり、生産量が少ないため売り切れも早い傾向です。
訪ねるより、店とグラスで出会う
北海道庁の資料では、Due Punti Vineyardsは直売所なし、訪問・見学は不可です。ワイナリーでの試飲や販売、レストランや宿泊施設もありません。ワインは酒販店で扱われ、公式サイトにも取扱店のページがあります。現地を訪ねるより、北海道のワインに力を入れる酒販店やレストランで、グラスやボトルで出会う造り手です。
道南で畑と醸造所を見学したいなら、七飯町のはこだてわいんや、函館市桔梗町のド・モンティーユ&北海道が見学を受け付けています。函館山を望む斜面に、ブルゴーニュの名門と若い造り手が並んでピノ・ノワールを植えている。北斗と函館の境のあたりは、いま北海道のなかでも動きの目立つ一角です。
