ブルゴーニュの名門が、函館に拓いた畑
ド・モンティーユ&北海道は、北海道函館市桔梗町にあるワイナリーです。北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(2026年2月現在)では、所在地は函館市桔梗町604番地3、運営は株式会社ベルヴュ。ただし公式のレストランのサイトは、農地のなかのワイナリーのため正確な住所がないとしていて、車やタクシーで行く人には地図での確認を勧めています。
始まりはブルゴーニュです。公式サイトによれば、ドメーヌ・ド・モンティーユはブルゴーニュで300年の歴史を持つ家族経営のワイナリーで、ヴォルネイ村に本拠を置いています。現当主のエティエンヌ・ド・モンティーユは、日本のワインの質の高さと多様性、そして北海道の気候がピノ・ノワールとシャルドネに合うことを確信し、2016年にこのプロジェクトを立ち上げました。公式サイトは、外国のワイン生産者が日本で最初に拓いたぶどう園と位置づけています。ドメーヌ・ド・モンティーユがピュリニー・モンラッシェにも畑を持つことは、銘醸図鑑:ピュリニー・モンラッシェで触れています。
なぜ函館だったのか
nippon.comの2022年の記事によれば、エティエンヌが北海道のワインに出会ったのは、家族でニセコへスキーに来たときでした。ブルゴーニュ大学と組んで北海道と長野の地質・土壌・気候を調べ、北海道がピノ・ノワールに向くと判断したといいます。函館を選んだ背景には、ブルゴーニュで経験を積み、函館で農楽蔵を営む佐々木賢さんとの親交もあったと、同じ記事は伝えています。この記事の時点で、取得した農地は約30haでした。
日本の運営会社は、エティエンヌが立ち上げた農地所有適格法人の株式会社ベルヴュです。北海道銀行と日本政策金融公庫の2024年2月の発表によれば、設立は2017年8月、代表取締役は矢野映さん。醸造用ぶどうの栽培面積は2023年時点で約13haでした。同じ発表は、世界的な名門を率いるエティエンヌが、国外で初めてのぶどう栽培とワイン醸造の地に函館市を選んだことを「歴史的な出来事」と位置づけています。
余市で5年、学んだワイン
公式サイトによれば、函館の畑で植樹が始まったのは2019年です。畑が実をつけるまでの2018年から2022年には、余市の木村農園や安芸農園からぶどうを分けてもらい、栃木のココ・ファーム・ワイナリーと、岩見沢の10R Wineryのブルース・ガットラヴさんとの協力で、少量のワインを造ってきました。北海道のぶどうをどう醸すかを学ぶための5年間だったと、公式サイトは書いています。
この5つのヴィンテージは、年ごとに感じたことを漢字1字で表したラベルで出ています。
- 2018年『豪 Oser』 ── ブルゴーニュの生産者が北海道でワインを造るという、前例のない挑戦への意欲。
- 2019年『驚 Surprise』 ── 暖かい年で、ぶどうがよく熟したことへの驚き。
- 2020年『學 Etude』 ── コロナ禍での収穫と醸造で学んだこと。
- 2021年『理 Comprendre』 ── 2024年4月発売。多くの気づきを得た年。
- 2022年『探 Recherche』 ── 余市産ぶどう100%の最後のヴィンテージ。
『望 Espoir』、函館のぶどうへ
ワイナリーは2023年11月30日に竣工しました。北海道銀行などの発表によれば、事業費は約7億円、延べ床面積は約1,423㎡で、1階が醸造施設、2階がテラスとレストランです。酒類の製造免許は2023年10月4日に取得し、同じ10月から醸造施設の一部を動かして、自社の畑で育てた2023年産のピノ・ノワールとシャルドネの仕込みを始めました。2025年12月に発売された2023年産には、未来への望みを託して『望 Espoir』の字が選ばれました。シャルドネは函館産100%、ピノ・ノワールは約3分の1が函館産で、ケルナーはぶどうの質の高さから引き続き余市の安芸農園のものを使っています。
2026年9月には2024年産が発売されました。公式サイトによれば、シャルドネとピノ・ノワールはどちらも函館の自社畑のぶどう100%。2023年は鳥の害で収穫が減り、2024年はスズメバチの被害で収穫時により厳しい選果をしましたが、収穫できる面積が増えたため量は2023年を上回りました。いずれも函館のワイナリーで、天然酵母で発酵させています。この年から、わずかながらフランスを中心に輸出も始めています。
畑は北海道庁の資料で15ha。ぶどうの樹は接ぎ木の割合が低く、自根の割合が高いのが特徴とされます。公式サイトも、接ぎ木と挿し木の2種類の樹からなる区画があり、フィロキセラのリスクを承知のうえで、ヨーロッパ系品種の根が吸い上げる函館の土地の個性を感じてほしいと書いています。公式サイトのテイスティングノートでは、ピノ・ノワールは淡いガーネット色で赤い果実と花の香り、冷涼な土地らしいエレガントさを持ち、6〜10年の熟成で香りが開いていくとされています。英国の『Pellicle』の2026年7月の記事は、2024年の収穫から造られた7,000本はすでに行き先が決まっていると伝えていました。
ビストロ・ベルヴュと、見学
ワイナリーの2階には、2024年12月に開いたレストラン「ビストロ・ベルヴュ」があります。Bellevueはフランス語で「美しい眺め」。標高230mの丘から、昼は函館湾を、夜は函館の「裏夜景」を眺めながら、フランス、アメリカ、日本の3か国のワインと和洋折衷の料理を合わせます。ランチ(12:00〜15:00)は2026年から始まり、ディナーは17:00〜22:00。どちらも前日12:00までの予約制で、水曜(ディナーは日曜も)が休みです。
ガイド付きの見学は1人1,500円、見学日の2日前までの予約制です。10:45、13:15、16:15の1日3回(日曜は13:15の回なし)、各回3組まで、所要約40分。テラスから畑を眺め、2階の展示スペースでワイナリーとワイン造りの説明を受けます。1階の醸造施設と畑には、作業と衛生面の理由で入れません。見学に参加するとグラスワインが特別価格になり、軽いつまみ付きの3か国飲み比べセットもあります。シャルドネのセットなら、函館の『望』、ブルゴーニュのクロ・デュ・シャトー、カリフォルニアのサンタ・リタ・ヒルズを50mlずつ並べて5,000円。同じ造り手が3つの土地で造る同じ品種を比べられるのは、ここならではの体験です。
ワイナリーで買えるボトルは、ドメーヌ・ド・モンティーユとラシーヌのワインだけで、北海道産ワインのボトル販売はまだ行っていません。ブルゴーニュの土地ごとの違いは第4講 ブルゴーニュ完全編、ワイナリーを訪ねるときの心得は第51講 ワイナリー訪問にまとめています。
行き方
最寄りはJR函館本線の桔梗駅です。見学でテイスティングセットを頼む人や、ディナーを利用する人は、桔梗駅からの無料送迎を予約できます(便と条件は公式の案内で確認を)。運転代行やタクシーの手配にも応じています。車なら、nippon.comの記事では函館ICから約8分。ワイナリーの入口に、15台ほど停められる砂利の無料駐車場があります。入口には5段の階段があり、バリアフリーには対応していません。
近くでは、北斗市文月のDue Punti Vineyardsも函館山を望む斜面でピノ・ノワールを育てています(見学は不可)。道南で工場見学と無料試飲を組み合わせるなら、七飯町のはこだてわいんへ。北海道の産地の全体像は第68講 北海道完全編で。
