広告の世界から、角田浜の赤ワインへ
カンティーナ・ジーオセットを開いた瀬戸潔さんは東京の出身。公式サイトによれば、26年間勤めた広告業界を2010年に離れ、その秋に新潟へ移り住みました。学んだ場所は、角田浜のすぐ近くにあるカーブドッチワイナリー。ぶどうの栽培とワインの醸造を一から身につけ、2011年にワイナリー建設用地を取得して法人(株式会社セトワイナリー)を設立、2013年5月に果実酒製造免許を取得しています。自園のぶどうで造るワインのリリースは2014年から。栽培と醸造は、いまも瀬戸さん自身が担っています。
この蔵の軸はイタリアにあります。公式サイトのコラムで瀬戸さんは、ワインの入り口がイタリアワインだったこと、ピエモンテのバルベーラ・ダルバやバローロ、バルバレスコに心を動かされたこと、友人と電話しながら開けたランブルスコの記憶を綴っています。食卓を楽しくするワインとしてのイタリア——それが、角田浜で赤を造る理由になっています。
約9割が赤。砂丘の産地で赤に賭ける
公式サイトは、この蔵を「生産量の約90%を赤ワインが占める、全国でも珍しい赤ワイン特化型のワイナリー」と紹介しています。
角田浜は、標高421mの角田山のふもと、日本海の海岸線に位置します。畑は海抜およそ20m、水はけのよい砂地。収穫期は8月下旬〜10月上旬と比較的早く、公式サイトは「糖度の熟度に果皮や種子の熟度が追いつきにくいため、本来は白ワイン向きの産地とも言える」と率直に書いています。そのうえで、日本ワインの評価の主軸がまだ白にあることを踏まえ、地域に根ざした赤ワイン文化をもつイタリアを手本に日本の赤の品質を上げることを目標に掲げています(土地と味わいの関係は用語:テロワールも参照)。
畑と品種——ツヴァイゲルトから始まったイタリア品種への挑戦
畑は3カ所・合計約1ヘクタール(100m×100m相当)。公式サイトに載る植え付けの順は次のとおりです。
- 2012年——ツヴァイゲルト(苗1,300本)
- 2013年——ネッビオーロ、カベルネ・ソーヴィニヨン
- 2014年——バルベーラ、ランブルスコ・グラスパロッサ
- 2020年——マスカット・ベーリーA(テスト栽培中)
最初にツヴァイゲルトを選んだのは、地域で栽培実績があったから。オーストリアを代表する黒ぶどうで、公式サイトによれば新潟では1990年代から栽培され、県内では3軒がこの品種でワインを造っています。瀬戸さんは研修先のカーブドッチで、理想とするピエモンテのドルチェットに最も性格が近いと判断したと書いています。
一方で、気候の変化も率直に語られています。夏の暑さが残る新潟の9月前半に収穫を迎えるぶどうには年々厳しさが増しており、いま取り組むイタリア品種はすべて10月収穫の中生・晩生種。酸が豊富で病気にも強い手応えがある一方、まだ若木で土地との相性は評価しきれない、と。2022年2月付の文章は「可能性がゼロになるまで挑戦を続けていきたい」と結ばれています。
主な銘柄と価格の目安
ラインナップは大きく三つの系統に分かれます(価格は2026年11月1日時点の公式オンラインショップ、税込・参考)。
- ツヴァイゲルト(フラッグシップ)——自社畑のツヴァイゲルト。2020年までは「ガッロ・ヴェルデ」の名で、2021年ヴィンテージから「カンティーナ・ジーオセット/ツヴァイゲルト」に改称。2024年が4,620円。
- テッレニイガターネ——「新潟の大地」を意味する造語を冠したネッビオーロなどのシリーズ。エチケットには瀬戸さんの妻・多恵子さんの日本画が使われています。
- ミリオーレアミチ/オノマトペ——友人たちのぶどうで造るシリーズ。「ネッビオーロ2023 須坂&角田浜」(6,820円)は長野県須坂市の佐藤果樹園産と自社農園産を合わせたもので、比率は須坂65%・角田浜35%と記されています。ほかにネッビオーロ&カベルネ・ソーヴィニヨン2024(6,930円)、サンジョヴェーゼ&メルロー(4,400円)、サンジョヴェーゼのロザート(3,300円)など。
生産本数は少なく、旧ヴィンテージの多くは完売表示です。ネッビオーロについて公式サイトは、飲み頃をバルバレスコ同様に「ひとまず5年後」としています。気になる一本は見つけたときに押さえるのが確実です。公式サイトによると、日本ワイナリーアワード2026ではコニサーズワイナリー部門に選ばれ、7年連続の受賞とされています。
訪ねる——直売所は「不定期営業」、見学はなし
所在地は新潟市西蒲区角田浜1697-1。公式サイトには「ワイナリー直売所は不定期営業」「見学及び案内=不可」と明記されています。営業日と時間は、サイトのINFORMATION欄に月ごとの直売所情報として掲載される仕組みです。
2026年10月分の案内では、仕込み期間中は無休で14:00〜16:00の営業としつつ、醸造作業や出張による臨時休業日が入り、「11月以降はあらためてご案内」とされていました。来客対応は瀬戸さん自身が行うため、急な作業で店を開けられない日もあると書かれています。出かける前に必ず最新の告知を確認してください。試飲を常設しているかどうかは公式に記載がありません。
直売所に合わせられないときは、カーブドッチ敷地内のコテアコテマルシェやそら野テラスなど、公式サイトに挙がる近隣の販売所が頼りになります。東京では文京区白山のワインショップ&バーなどでのイベント出店も告知されています。
新潟ワインコーストのなかで
角田浜・越前浜の一帯は新潟ワインコーストと呼ばれ、公式サイトは「新潟県内にある10のワイナリーのうち、6場がこの角田浜地区にある」と紹介しています。新潟県ワイナリー協会の会員一覧でも、西蒲区にはカーブドッチ、カンティーナ・ジーオセット、ハッコーショオ(旧ドメーヌ・ショオ)、フェルミエ、ルサンクワイナリー、レスカルゴが並びます。アルバリーニョや白が語られることの多い砂丘の産地で、赤、それもイタリア品種に軸を置く一軒です。ツヴァイゲルトの造り比べなら、同じ県内の胎内高原ワイナリーも手がけています。産地全体の流れは新潟の産地ページと第76講「新潟完全編」にまとめています。


