3mの雪に埋もれる畑から
越後ワイナリーがあるのは、新潟県南魚沼市浦佐。八海山、中ノ岳、駒ケ岳の越後三山を望む魚沼の盆地です。公式サイトは、直営の畑が八海山麓の扇状地に広がり、真冬には3メートルの豪雪に埋もれると書いています。初冬から翌年の春耕まで雪の下。日本の多くの産地とくらべても、ぶどうにとって条件の厳しい土地です。
運営は株式会社アグリコア。会社情報のページは、ワイン造りの根っこは農業であり、農作物に醸造という人の技と知恵を加えた「1.5次産業」だと位置づけています。掲げるのは「良いワインは良いワイン専用ぶどうから」。地元の農家と協力しながら造りを続けてきました。
創業者・種村芳正さんと、1975年の「越後ワイン」
公式サイトの「越後ワイナリーの歩み」によれば、創業者の種村芳正さんは1928年、新潟県南魚沼の生まれ。地域の活性化を目指してワイン造りに挑み、1973年にぶどう栽培の技術を学ぶためフランスのボルドーへ渡りました。そこで「品質こそ全て」を貫く醸造家たちに出会い、帰国後に準備を進めて、1975年10月、わずか5人で前身の「越後ワイン」を立ち上げます。従業員は種村さんを、年を重ねても栽培者と一緒に畑に出る、フットワークの軽い人だったと振り返っています(行年99歳)。現在の代表取締役社長は種村成德さんです。
同じページは、寒冷地で育つ品種を見極める試行錯誤、霜や雪害との戦い、収益の上がらない最初の数年といった苦労にも触れています。2025年に50周年を迎え、公式サイトには「越後ワイン50周年ヒストリー」の動画も載っています。
畑と品種 ── 垣根仕立てとレインカット
公式サイトによれば、越後ワイナリーは1975年の創業以来、新潟県で最初にヨーロッパ式の垣根仕立てによるワイン専用品種の栽培に取り組んできました。栽培地は新潟県内の南魚沼市(大和地区・塩沢地区)のみで、面積は自社農園4.7ha、契約農園1.7ha。
- 赤:メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン
- 白:シャルドネ、ケルナー、ソーヴィニヨン・ブラン、セーベル9110
垣根には、ぶどうの木に雨が当たらないよう屋根(レインカット)を掛けています。白ワイン用のシャルドネ、ケルナー、セーベルは8月下旬から順に、赤ワイン用のメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンは10月初旬から収穫が始まるそうです。栽培では低農薬の農法を採っていると、公式サイトは説明しています。
雪が冷やす貯蔵庫 ── 雪室の仕組み
このワイナリーの建物は、雪室(ゆきむろ)を中心に設計されています。雪室は地上2階・地下1階分の高さがあり、開閉式の屋根からも直接雪を入れられて、最大250トンの雪を蓄えます。その冷気を地下の雪室貯蔵庫へ送り、隣り合うフレンチオークの樽が並ぶ熟成庫にも伝えます。年間を通じて雪室貯蔵庫は約5℃、木樽熟成庫は約15℃。公式サイトは「雪が育む、雪が守る、雪が醸す」と表現しています。
造りの工程も公開されています。赤は収穫、破砕・除梗、発酵、圧搾のあとマロラクティック発酵を経て、滓引き、清澄、雪室熟成、濾過、瓶詰め。白は圧搾してから発酵させ、滓引き、清澄、雪室貯蔵、濾過、瓶詰めの順です。
主な銘柄と受賞歴
公式オンラインショップ(2026年11月1日確認、税込)に並ぶ主な赤は次のとおりです。価格は参考です。
- 雪室貯蔵ワイン『雪季(せっき)』2024 赤 ── 2,200円(375mlは1,210円)
- 雪室熟成ワイン『レッドウルフ』2023 赤 ── 2,860円。2026年の受賞案内では南魚沼市産カベルネ・ソーヴィニヨン52%・メルロー48%
- 『越後ワイン メルロー』2021 赤 ── 3,630円
- 雪室熟成『ゆきむろおばけ』2022 赤 ── 5,500円。南魚沼市産メルロー100%
- 『ドメーヌ越後メルロー』2021 赤 ── 6,600円。南魚沼市産メルロー100%
- 『ドメーヌ越後カベルネソーヴィニヨン』2017 赤 ── 6,600円
白ではトップページに『越後ワイン シャルドネ』(3,630円)が載り、2026年9月には新酒『越後ワイン セーベル(白)2026』の発売が告知されています。ロゼの『ピンクウルフ』2024(2,860円)、スパークリングの『梅』(1,760円)もあります。
受賞歴は公式サイトに一覧があります。日本ワインコンクールでは、2005年の『越後メルロー2002』銀賞に始まり、メルロー、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ケルナー、セーベルで入賞を重ねてきました。2026年は『ドメーヌ越後メルロー2021』が銀賞、『雪室熟成ゆきむろおばけ2022』と『越後ワイン レッドウルフ2023雪室熟成』が銅賞。フェミナリーズ世界ワインコンクール(日本ワインカテゴリー)では、2022年に『ドメーヌ越後メルロー2016』と『越後ワイン シャルドネ2019』が金賞を受けています。
訪ねる ── 試飲は1杯100円、貯蔵庫は自由に見学
ワイナリーショップは、八色の森公園のぶどう園を進んだ先にあります。公式サイトによれば、営業は9:30〜17:00、年中無休(元旦を除く)。店内で1杯100円の有料試飲ができ、甘口・辛口あわせて全12種類。ワインのランクによって1杯約15〜30mlと量が変わり、レジで専用コインを買って使う仕組みです。オリジナルのぶどうジュースも1杯100円。雪室の貯蔵庫見学は無料で、案内なしで自由に見て回れます。館内にはワインケーキや雪室貯蔵コーヒーなどのオリジナル商品も並びます。ペット同伴での入場はできません。
隣のワインレストラン「葡萄の花」は60席、全面ガラス張りで、ぶどう畑を望みます。営業は11:00〜15:00(L.O.14:00)と17:00〜21:00(L.O.20:30)、火曜はランチのみで、水・木曜が定休。団体向けのコース(5名以上・要予約)にはグラスワインが付きます。入口にはクレープショップMERLOTもあります。毎年9月には「ぶどう収穫祭とワイン祭り」が開かれ、2026年は第25回でした。
アクセスは、上越新幹線の浦佐駅から車で約5分、徒歩約20分(約1.5km、なだらかな坂道)。駅前から公共バスはないため、公式サイトはタクシーを勧めています。車なら関越自動車道の大和スマートICから約3分。駐車場は無料で、バス5台・普通車25台分あります。営業時間などの条件は変わることがあるので、出かける前に公式サイトで確かめてください(2026年11月1日に確認)。
新潟のワイン地図の中で
新潟のワインは、上越の岩の原葡萄園、新潟市の海辺に集まるカーブドッチワイナリーなどの「新潟ワインコースト」、県北の胎内高原ワイナリーと、土地ごとに顔が違います。越後ワイナリーは、県のほぼ中央、魚沼の豪雪地帯で垣根仕立ての欧州品種を育て、雪の冷気でワインを寝かせるという、雪国そのものを造りに組み込んだ一軒です。新潟県ワイナリー協会の会員にも名を連ねています。新潟の産地全体は第76講 新潟完全編で、ワイナリーの回り方は第51講 ワイナリー訪問とワインツーリズム完全編でまとめています。


