市が造るワイン
胎内市は新潟県の北部に位置する町です。市のパンフレットによれば、始まりは「まちに特産品を生み出そう」という試みでした。山の斜面に桃や栗を植えたところ、ワイン用のぶどうがひときわよく育ち、果樹園はワインのためのぶどう畑へ。2007(平成19)年に胎内高原ワイナリーが生まれました。
いまも胎内市が運営しています。市の公式ページは、目的を果樹の生産振興、地域外との交流人口の増加、地域の活性化と書き、パンフレットは「全国でも珍しい市営」と紹介しています。ぶどうは100%自分たちの畑のもの。市の職員と地元の年配の人たちが力を合わせて造っており、急斜面の畑で働く人たちの平均年齢は70歳だと書かれています。生食用ではなくワイン専用の品種にこだわったことが、2012年の日本ワインコンクール初受賞につながった、というのがパンフレットの振り返りです。
高坪山の急斜面、25度の畑
畑は高坪山の中腹にあります。市によれば面積は約6ha、標高は最も高いところで約250m。日当たりのよい南南西向きの急斜面を使い、昼と夜の温度差が出る場所です。土は赤土色の粘土質ですが、斜度が25度あるため水は溜まりません。パンフレットでは地質を泥岩と花崗閃緑岩、土質を礫混じりの粘土としています(用語:テロワール)。
畑にはいつも風が吹きます。海風と、山からの吹き下ろし。市の説明では、この風が湿気を飛ばすため病害虫の被害が少なく、化学的なものはほとんど使わずに済んでいるとのこと。冬は2mの雪に埋もれ、雪が深い時期は山に入れません。痩せた土地で収量が少なく、約6haの畑から生まれるワインは年に約1万5000本。晴れた日には畑から佐渡島が見え、眼下に町並みと田園が広がる、と市のページは書いています。
ツヴァイゲルトとメルロー
市が挙げる主な品種は、赤ワイン用がメルローとツヴァイゲルトレーベ、白ワイン用がシャルドネとソーヴィニヨン・ブラン。寒冷地に向いた欧州系品種を垣根仕立てで育てています。パンフレットの畑の図にはカベルネ・フランも載り、育てる品種は6種類とされています。
看板はツヴァイゲルトです。オーストリアで生まれた交配品種で(交配品種については第69講 交配品種とクローン完全編)、パンフレットによれば、区画ごとに収穫して単品種で醸造し、いくつものタンクから最もよいものを選んで「ツヴァイゲルト」の名で出しています。市の受賞歴には、日本ワインコンクールで『2012 ツヴァイゲルトレーベ』が2013年に金賞とコストパフォーマンス賞、『2012 ツヴァイゲルトレーベ 樽熟成』が2014年に金賞。その後も『ツヴァイゲルト2019』が2023年・2024年に銀賞、『ツヴァイゲルト2021』が2026年に銅賞を受けています。
パンフレットがもう一本の「フラッグシップ」と呼ぶのがメルローです。畑の中でも大切にされている緩やかな斜面の一角があり、粒が小さく皮の割合が多いぶどうから造られると紹介されています。泡では、瓶の中で二度目の発酵をさせ、澱を引かずに仕上げる微発泡の『ヴァンペティアン』(ロゼと白)。ブレンドの『アッサンブラージュ ルージュ レゼルヴプリヴェ 2019』も2022年に銅賞を受けています。造りについて市は、「必要以上に手を加えず、丁寧に醸しています」と書いています。価格は市のページに載っていません。
買える場所
胎内高原ワイナリーには売店・レストラン・見学スペースがありません。市の公式ページとパンフレットの両方に明記されています。購入の窓口は次のとおりです(2026年11月1日に市の公式ページで確認)。
- 公式オンラインストア(tainaiwinery.stores.jp)
- 胎内市のふるさと納税
- ロイヤル胎内パークホテル(市が「お立ち寄りください」と案内)
- 中条駅、市内の酒販店(パンフレットの案内)
製造元の所在地は胎内市宮久1454。パンフレットに載る営業時間(月〜金曜9:00〜17:00)は問い合わせの窓口の時間で、来訪を受け入れるものではありません。取扱店は変わることがあるので、出かける前に市の農林水産課やワイナリーに確認してください。
新潟のワインのなかで
新潟のワインといえば、上越の岩の原葡萄園や、新潟市の海辺に集まるカーブドッチワイナリーなどの「新潟ワインコースト」が知られています。胎内高原ワイナリーは、県北の山の斜面で、市がぶどうを育てワインを造るという別の形です。新潟の産地全体は第76講 新潟完全編で、日本の産地の見取り図は第9講 日本ワイン産地巡りでまとめています。


