赤玉の工場から始まったワイナリー
サントリー信州塩尻ワイナリーは、長野県塩尻市にある、サントリーのワイナリーです。始まりは1936年。サントリーの前身・壽屋(ことぶきや)が「壽屋塩尻工場」を開き、コンコードなどのぶどうから、当時の看板商品「赤玉ポートワイン」の原料をつくりました。長野県の観光サイトによれば、いまも赤玉の原料づくりを続けながら、日本ワインを造っています。創業から間もないころに建てられた、半地下の低い木造の貯蔵庫が、道路からも見えると紹介されています。
1930年代、壽屋の工場が桔梗ヶ原に進出したことは、この土地がワイン産地として育つきっかけの一つになりました。桔梗ヶ原は長野県で最も古いワイン産地とされ、塩尻の歩みは第72講「長野完全編」で詳しく扱っています。
農家とともに積み重ねた歩み
サントリーの日本ワインの通販サイトにある紹介ページによると、1960年代に塩尻周辺のぶどう農家が「壽屋赤玉出荷組合」をつくり、この組合はいまも契約栽培を続けています。1980年代にはメルロの契約栽培を本格的に始め、北安曇郡池田町や千曲市ではシャルドネの契約栽培も始めました。
その後も、造りの見直しが続きます。
- 2001年──畑ごとに作業の時期を決め、収量を抑えて、よく熟したぶどうを得る取り組みを始めました。醸造では選果台、ピジャージュ(果帽を突き崩す作業)、新樽での熟成を取り入れています
- 2004年──瓶詰め機を入れ、発酵から瓶詰めまでを一貫して行えるようになりました
- 2013年──新しい棟を建て、小さな仕込みタンクと新しい選果の仕組みを導入
- 2017年──上位の銘柄として「塩尻ワイナリー」シリーズを立ち上げ
- 2026年9月1日──「サントリー塩尻ワイナリー」から「サントリー信州塩尻ワイナリー」へ名称を変更。あわせて「岩垂原」「塩尻」を冠した銘柄のラベルを新しくしました
岩垂原と、県内の畑
看板の産地は、桔梗ヶ原の一角にある岩垂原(いわだれはら)です。長野県の観光サイトでは、ワイナリーの畑が岩垂原の小高い丘にあると紹介されています。サントリーは、岩の多い水はけのよい土で、力強い赤に向く土地と説明し、ぶどうを十分に熟させることを重んじています。
ぶどうは塩尻のほかにも、県内の各地から集めています。北アルプスのふもとの松本市梓川地区、2016年から甲州を育てている蓼科、標高およそ500〜750mの9つの畑と契約する高山村などです。高山村は白ワイン用の品種に向く土地とされています。
主な銘柄
2026年9月8日に数量限定で発売された新ヴィンテージは次のとおりです(いずれも750ml、長野県産ぶどう100%、価格はオープン価格)。
- 岩垂原 メルロ 2022──赤・フルボディ。ワイナリーの看板の一本
- 塩尻 メルロ 2023──赤・フルボディ
- 塩尻 マスカット・ベーリーA 2023──赤・ミディアムボディ
- 塩尻 メルロ ロゼ 2025──ロゼ・辛口
- 高山村 シャルドネ 2025、信州松本 アロマティック アッサンブラージュ(ブラン/ロゼ)2025
受賞では、「岩垂原 メルロ 2019」と「岩垂原 メルロ キュベスペシャル 2020」が日本ワインコンクール2024で金賞を受けています。サントリーの通販サイトでは、「信州富士見町産 甲州 ブリュット 2023」が日本ワインコンクール2026で金賞と紹介されています。
訪ねるなら
長野県の観光サイトによれば、一般向けの見学は行っておらず、建物は外から眺めるだけになります。常設の試飲も確認できませんでした。同じサイトでは、ワインの購入は平日10:00〜16:00と案内されていますが、時期によって変わる可能性があるため、出かける前に確認してください。場所はJR塩尻駅の西口から近く、塩尻のワインタクシーのコースでも前を通ります。
中を見たい場合は、塩尻市観光協会の「ワイナリーめぐりバス」が手がかりになります。2026年は11月28日の回で、五一わいん(林農園)、信濃ワインとあわせて訪問先に入っています(旅行代金は1人18,000円・税込)。塩尻市には16のワイナリーがあり(同協会、2024年8月時点)、近くのドメーヌ・コーセイなど、メルロを手がける造り手が集まっています。訪問の心得は第51講「ワイナリー訪問」にまとめています。
山梨のサントリー登美の丘ワイナリーが自社畑で造る「登美 赤」と、農家と組んで育てた岩垂原のメルロ。同じ会社の二つのワイナリーを飲み比べると、畑のあり方の違いが見えてくるかもしれません。
