達磨葡萄酒から大泉へ——農家が支える百年の蔵
大泉葡萄酒の歴史は、明治35年(1902年)12月に9人の発起人で設立された「達磨葡萄酒合資会社」から始まります。公式サイトのヒストリーは、ワインへの一般の認識が低く、原料ぶどうの供給も経済環境も不安定だった黎明期に、厳しい生存競争があったと振り返っています。
沿革によれば、明治43年に甲州葡萄酒株式会社、昭和3年にマルキ葡萄酒に吸収合併されたのち、昭和16年に「祝第三区共同醸造組合」として再出発。太平洋戦争のさなかも醸造を止めずに戦後へつなぎ、昭和38年3月18日、地元とともに発展するようにと所在地の地名「大泉」を社名にして大泉葡萄酒株式会社となりました。昭和54年には株主106名、平成元年に資本金を2,160万円とし、現在地に移っています。
いまの大泉葡萄酒は、岩崎地区の103軒のぶどう栽培農家が共同出資して経営する蔵です。代表取締役の内田護さんは会社案内で「たわわと棚に実る甲州ぶどうの姿を未来のこどもたちにつなげたい」と書いています。創業当時から受け継ぐ信念として公式サイトが掲げるのは、ワインは生きていて、一本一本に愛情を込めて熟成を待つ心がなければおいしいワインは造れない、という言葉です。
岩崎地区の甲州と、祝地区・御坂の一本
看板の『勝沼の地ざけ』は、勝沼町岩崎地区で育てた甲州を100%使うことにこだわったワインです。公式サイトは、製造量に限りがあり、首都圏など山梨以外の地や百貨店では買えないワインだと紹介しています。業務内容には醸造用ぶどうの農園経営も挙げられ、ブログでは「サポーター」と一緒に冬の剪定やマスカット・ベーリーAの新梢管理、房づくり・花穂切除をした様子を伝えています。2026年6月の記事には、気温の高い日が続き、ぶどうの生育が前年より5〜7日早いと書かれていました。
商品の説明を読むと、地区名がラベルの手がかりになっています。『達磨甲州』と『甲州祝』は勝沼町祝地区産の甲州100%。『甲州祝』2019は公式の商品説明でシュール・リー製法による、ふくよかで深みのある香りと紹介されています。『香り甲州』には「岩崎」「岩崎華」のほか、「御坂」「御坂黒駒」の名を冠したものもあります。
主な銘柄と参考価格
公式サイトの商品一覧(2026年11月1日時点)から。価格は720mlの税込で参考です。
- 『勝沼の地ざけ 白』——岩崎地区の甲州。1,900円(参考)。1800mlの辛口・甘口もあり
- 『香り甲州 岩崎華』2025——3,100円(参考)
- 『香り甲州 岩崎』2023/『香り甲州 御坂』2023——各2,700円(参考)
- 『達磨甲州』2022——祝地区の甲州、すっきりとしたキレのある味わいと紹介。1,900円(参考)
- 『甲州祝 やや甘口』2022——2,200円(参考)
- 『甲州樽』2022——3,500円(参考)
- 『ベーリーA遅摘み』2025——2,800円(参考)。樽熟成の『ベーリーA遅摘み 樽』2024は3,500円(参考)
- 『オリジナル地ざけ赤』2022——2,300円(参考)
- 『香りアジロン辛口』2025——アジロンダックのワイン。2,600円(参考)
商品一覧には、『香り甲州 岩崎華』2025と『ベーリーA遅摘み』2025が2026年日本ワインコンクールの銀賞と記されています。在庫は時期で変わり、お知らせ欄では残りわずかや終売の案内も出ています。
訪ねる——9時から開く売店と試飲
公式サイトによれば、営業時間は9:00〜17:00で、試飲の受付は16:30まで。定休日は年末年始です。会社案内には「現在の売店・事務所」の写真が載っています。試飲の料金や予約の要否、蔵の見学ができるかどうかは公式サイトに記載がありませんでした。
所在地は甲州市勝沼町下岩崎1809。JR中央本線の勝沼ぶどう郷駅からタクシーで約5分、中央自動車道の勝沼ICから車で約3分と案内されています。駐車場の有無は公式サイトでは確認できませんでした。条件は変わることがあるので、出かける前に電話(0553-44-2872)か公式サイトで確かめてください。
下岩崎の蔵を歩く
大泉葡萄酒のある下岩崎は、蔵が近くに集まる地区です。同じ下岩崎には蒼龍葡萄酒、樽を使った甲州で知られるイケダワイナリー、岩崎醸造(ホンジョーワイン)、まるき葡萄酒があります。明治から続く農家の蔵と、1990年代に独立した醸造家の蔵が同じ地区に並び、甲州の造りの違いを確かめながら巡れます。山梨の産地全体は産地:山梨と第70講 山梨完全編、ワイナリーを巡る準備は第51講にまとめています。


