勝沼に移り住んだ醸造家の独立から
イケダワイナリーの始まりは、ひとりの醸造家の夢でした。公式サイトの「イケダワイナリーの歴史」によれば、池田俊和さん(1950〜2023)は若いころにワインに魅せられて勝沼に移り住み、勝沼の老舗ワイナリーで醸造に携わりながら、いつか自分のワイナリーを持つためにお金を貯めていました。
転機は、ある大手食品グループのワイナリーが日本でのワイン造りから撤退すると決まったときに訪れます。株式譲渡のかたちで譲り受けることになり、新しい醸造免許が簡単には出なかった時代に、1995年、勝沼に「イケダワイナリー」が誕生しました。会社概要には「1956年創業のワイナリーをイケダワイナリーに名称変更」とあります。
最初はひとりからのスタートで、醸造設備も生産量も少しずつ増やしてきたと公式サイトは書いています。のちに勝沼町小佐手(おさて)地区から現在の下岩崎地区へ移転しました。2023年に俊和さんが亡くなったあとは、長男の池田秀俊さんが醸造責任者兼社長として跡を継いでいます。秀俊さんは東京大学で農業工学を学び、カリフォルニアやオーストラリアのワイナリーで修行、父とともに醸造に携わったのち、IT企業での開発業務を経て2023年1月に就任しました。
甲州を軸に、メルローとシラーの赤まで
会社概要に記された使用品種は、白が甲州、ロゼがマスカット・ベーリーAと甲州、赤がメルロー、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、マスカット・ベーリーA。年間の生産量はぶどう約60トン、ワインにして約5万本です。
公式サイトの「ワイン造りの想い」は、甲州の柑橘系の果実味を樽を使って丁寧に仕上げる白、果実味とタンニンのバランスにこだわった赤、と自らの造りを説明しています。白の多くは甲州から造られ、発酵や熟成に古い樽やフランス産の樽を使い分けているのが特徴です。『グラン・キュヴェ 甲州』には、勝沼の中でも優良な産地とされる菱山地区の甲州を使い、『グラン・キュヴェ シラー』は自社畑のシラーから造ると書かれています。2025年の新酒ロゼには、自社農園で育てたデラウェアを新たにブレンドしたと新着情報で紹介されていました。
主な銘柄と参考価格
公式サイトのワインリスト(2026年11月1日時点)に載る主な銘柄です。価格は750mlの税込で参考です。
- 『樽熟甲州』2025——勝沼産甲州のやや辛口。ステンレスタンクで低温発酵し、古い樽で熟成させて樽の香りを足さずに落ち着きを引き出すと説明されています。1,870円(参考)
- 『セレクト(白)』2025——甲州を樽発酵・樽熟成したやや辛口。2,420円(参考)
- 『プレミアム・キュヴェ 甲州』2025——『樽熟甲州』の樽熟成を長くしたもの。2,200円(参考)
- 『グラン・キュヴェ 甲州』2025——菱山地区の甲州をフランス産の樽で発酵・熟成。3,300円(参考)
- 『甲州エクセレント』2024——完熟した甲州のやや甘口。1,980円(参考)
- 『ヴァン・ルージュ』2025——マスカット・ベーリーA、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンのミディアムボディ。1,870円(参考)
- 『グラン・キュヴェ メルロー』2024——樽で1年熟成。3,520円(参考)
- 『甲州 ブラン・ド・ブラン』NV——甲州のスパークリング。2,750円(参考)
ほかにロゼの『ヴァン・ロゼ』、メルロー主体にシラーを合わせた『セレクト(赤)』、マスカット・ベーリーA・甲州・巨峰の泡『プレミアムキュヴェ・エマ』があり、ワイナリー限定の銘柄もあると案内されています。
訪ねる——無料試飲の売店と、ワイナリードッグ
公式サイトによれば、売店では試飲販売をしていて、試飲は無料・予約不要。試飲できるワインから2本を選び、月ごとのお薦めワイン1〜2本も試せるので、合計3〜4本を味わえます。営業時間は9:00〜17:00で、年末年始などは休むことがあります。ゴールデンレトリーバーのワイナリードッグ「ワッフル」が出迎え役を務めていると紹介されています。
ワイナリーの見学はイベント時のみで、実施するときは公式サイトの新着情報で知らせるとしています。車なら国道20号を甲府方面へ進み、下岩崎交差点を右折、祝小学校交差点を左折して約300m。甲州市民バス(勝沼地域バス)なら「生福寺」から徒歩1分、「下岩崎」から徒歩2分です。駐車場の有無は公式サイトでは確認できませんでした。条件は変わることがあるので、出かける前に電話(0553-44-2190)か公式サイトで確かめてください。
下岩崎と菱山——勝沼のつながりの中で
下岩崎は勝沼のワイナリーが集まる地区で、同じ地区には蒼龍葡萄酒やまるき葡萄酒、シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーがあります。勝沼の北の高台、菱山地区で農家のぶどう酒を造る菱山中央醸造は、自社サイトで池田社長から蔵の整備や醸造の指導を受けてきたと書いていて、イケダワイナリーのフラッグシップが菱山の甲州から生まれることと重ねて読むと、地区どうしの縁が見えてきます。山梨の産地全体は産地:山梨と第70講 山梨完全編に、ワイナリーを訪ねる準備は第51講にまとめています。


