駒ヶ岳の麓のウイスキー蒸溜所が、ワインを醸すまで
マルス駒ヶ岳蒸溜所は、中央アルプス・木曽駒ヶ岳の麓、標高798mの森の中にある本坊酒造の製造所です。本坊酒造の公式サイトでは、蒸溜所の見学ページで「シングルモルト 駒ヶ岳」に代表されるウイスキーの造りを紹介し、あわせて宮田村の特産品ヤマソービニオンを原料に醸造したワインを販売していると書いています。NAGANO WINEのワイナリー紹介では「本坊酒造 信州マルス蒸留所」の名で、天竜川ワインバレーの造り手として掲載されています。
NAGANO WINEによれば、蒸留所の設立は1985年(昭和60年)。宮田村はかつてりんごと稲作の農家が中心の村でしたが、高齢化や後継者不足を背景に、1990年代の初めに村を「山ぶどうの里」にしようという話が持ち上がりました。その主役に選ばれたのがヤマソービニオンで、栽培農家と二人三脚で2000年にワインの醸造が始まったとされています。
宮田村のヤマソービニオン
ヤマソービニオンは、日本の山ぶどうとカベルネ・ソーヴィニヨンを掛け合わせた品種です。NAGANO WINEは、日本の気候に合い、欧州系のワイン用品種より病害虫に強く、収量も安定していると説明しています。宮田村は水はけのよい扇状地にあり、ぶどうづくりに向いた土地だと紹介されています。
本坊酒造の商品ページを見ると、『信州みやだワイン 紫輝 樽熟成』は宮田村の「やまぶどう栽培組合」の農家が育てたヤマソービニオンを醸造し、樽で熟成させたものとあります。品目はいずれも日本ワイン、原材料は宮田村産のぶどうです。NAGANO WINEは、2003年に『信州駒ヶ原ヤマソービニオン』が長野県原産地呼称管理制度の認定を受けたことにも触れています(制度の考え方は用語:原産地呼称)。
主な銘柄と参考価格
本坊酒造の公式サイト(2026年11月1日時点)に載る、宮田村のワインです。価格は希望小売価格(税込)で参考です。
- 『信州みやだワイン 紫輝』2024年——720ml、アルコール12%、生産4,000本。2,187円(参考)。公式の商品説明では、紫系の色素が多い鮮やかな色合いで、カベルネ・ソーヴィニヨンのアロマと山ぶどうの野性的な風味をあわせ持つと紹介。味わいはミディアムボディ。
- 『信州みやだワイン 紫輝 樽熟成』2023年——720ml、アルコール12%、生産2,200本。2,627円(参考)。公式の商品説明では、ラズベリーのような果実味と酸味を樽の香りが包むと紹介。
『紫輝』のラインアップ表には2005年からの各年の生産本数が並び、2016年の13,500本から2022年の3,200本まで、年によって大きく変わってきたことがわかります。NAGANO WINEは、竜眼を原料にした白ワイン『信州安曇平シュール・リー』にも取り組んでいると紹介していますが、確認時点の本坊酒造の商品一覧には見当たりませんでした。
訪ねる——無料の自由見学と、Barの有料テイスティング
公式サイトによれば、営業は9:00〜16:00(受付とBarの利用は15:30まで)、休館は12月29日〜1月3日で、臨時休業もあります。入館は無料。蒸溜所は約20分の自由見学で、ウイスキーの製造設備を見学通路から見られます。ビジター棟にはBarとショップがあり、テイスティングは有料。よくある質問では、注文は1回限りで1人3杯まで、運転する人にはアルコールを出さないとしています。
注意したいのは、ここで見られるのはウイスキーの造りだということ。NAGANO WINEの案内では、ワインの工場見学はできません。ワインはBarでのテイスティングとショップでの購入が中心です。予約なしでも入れますが、混雑時は予約が優先で、1グループ9名まで、10名以上の見学は断っています。予約は公式の予約カレンダーか電話(0265-85-0017)で。車なら中央自動車道の駒ヶ根ICから約5分で無料駐車場があり、電車ならJR飯田線の駒ヶ根駅か宮田駅からタクシーで約10分です。条件は変わることがあるので、出かける前に公式サイトか電話で確かめてください。
天竜川ワインバレーの中で
伊那谷のワインを続けて訪ねるなら、北の伊那市に山ぶどうやメルローを手がける伊那ワイン工房、辰野町にキリノカ ヴィンヤーズ & ワイナリー、南の松川町に信州まし野ワインがあります。同じ本坊酒造のワインの本拠地は山梨県笛吹市のマルス山梨ワイナリーです。長野の産地の全体像は産地:長野と第72講 長野完全編、訪ねるときの心得は第51講 ワイナリー訪問にまとめています。

