小谷地の沢に拓いた畑——ラン・セッカの成り立ち
Lan Seqqua(ラン・セッカ)は、余市町登地区、小谷地(こやち)の沢にあるヴィンヤード+ワイナリーです。公式サイトは自らを、ワイン造りをメインに「百姓として生活」していると紹介しています。
造り手の山川惇太郎さんは仁木町の果樹農家の生まれ。北海道大学を卒業後に本州へ渡り、アスリートとして活動したのち、子どものころからの「農家になる」という思いを抱いて2015年に北海道へ戻りました。翌年から2年間、余市町のワイナリーで研修生として栽培と醸造に携わり、2018年は仁木、2019年は札幌で醸造を学んでいます。もう一人の造り手、りゅうこはるさんは北海道大学農学院で造林学を修め、2012年から4年間、余市のNPOスタッフとして登町モンガク地区で果樹を学びました。白の区画を担当し、自社の白『pon nitay』の醸造も受け持っています。
公式サイトの年表は、2018年5月に登地区の農地を取得してぶどうを植え始め、2020年9月に酒類製造免許を取得、2023年3月に自園の『KOYACHI』と『pon nitay』を初めてリリースした、と記しています。名前は「ランランラン♪」の音と「雪華」をもじった造語で、意訳すれば「楽しい雪」。冬に2m近く積もる雪が、ぶどうの樹を厳しい寒さから守ってくれるからだといいます。
西の斜面と南の斜面
公式サイトによれば、畑は勾配のある西南西向きの斜面と、少しの南向きの斜面で計1.6haほど。2018年からピノ・ノワールとツヴァイゲルトの赤ワイン用品種を中心に植えています。「西畑」は黒ぶどうだけで、ピノ・ノワールが6割ほど、残りがツヴァイゲルト。ほかにシラーが1列、ガメイが4列ほどあります。
「南畑」と呼ぶ南向きの急斜面約30aには白ワイン用品種を混植しています。公式サイトでは、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ノワールを主に、シルヴァネール、リースリング、ピノ・ブランを少しずつ植え、比率はおよそ6:6:2:1。肥料は使わず、農薬は石灰硫黄合剤とボルドー液数種で、剪定枝で焼いた炭を株元に撒いていると書かれています。年間の醸造量は、公式サイトで1万3千〜1万5千本ほどと紹介されています。2026年10月下旬の近況では、収穫量が過去最高の7tを少し超えたと報告されていました。
主な銘柄
公式サイトの「銘柄について」から主なものを挙げます。
- 『KOYACHI(小谷地)』——自園の西畑のぶどうによる赤。単一品種では仕込まず混ぜて一本にするスタイルから「余市版パストゥグラン」と呼んでいます。発酵後は基本的に樽で1年熟成。貴腐のついたぶどうは分けて、ブラン・ド・ノワールとして別に仕込みます。
- 『pon nitay(ポン・ニタイ)』——南畑の混醸の白。アイヌ語で「小さな森」の意。約2,000本の小ロットで、基本は道内限定の販売。
- 『早花咲月(サハナサヅキ)』——同じ登地区のsunny side farmのナイアガラを主にした、瓶内二次発酵のスパークリング。2022年ヴィンテージからキャンベル・アーリーを混ぜたロゼのみ。
- 『Soumagnon Blanc』——登地区のソウマファームのソーヴィニヨン・ブランによるスティルワイン。
- 『蛙鳴千草』『雀色時』『十返りの花』——買いぶどうの試みのシリーズ。『十返りの花』は貴腐のついたケルナー主体を辛口に仕上げたもの。
北海道庁の資料は、主なラインナップに『早花咲月』と『KOYACHI パストゥグラン』を挙げています。
訪ねる前に
公式サイトは、テイスティングルームや宿泊施設のない工場型のワイナリーだと明記し、ワインの直接販売は行っていないとしています。ワインは取扱酒販店で買えます。リリースは基本的に毎年3月です。「アクセス」のページでは、夫婦二人で営み日中は畑で作業しているため、観光などを目的とした見学には基本的に対応していないと案内しており、問い合わせはメールで受け付けています。北海道庁の資料でも直売所なし・訪問見学不可です。
所在地は余市郡余市町登町612-2。余市ICから車で5分で、JR余市駅からの公共交通機関はなくタクシー利用を案内しています。収穫期には手伝いを募集することがあり、2026年の募集はすでに締め切られていました。条件は変わることがあるので、最新の情報は公式サイトで確かめてください。
登地区の造り手とのつながり
公式サイトは、畑がDomaine Montと道路を挟んだ反対側の斜面にあると案内しています。同じ登地区にはドメーヌ・タカヒコやモンガク谷ワイナリーがあり、町の古株余市ワイナリー、山川さんの出身地・仁木町のNIKI Hills Wineryと合わせて読むと、北海道・後志のワイン造りの広がりが見えてきます。産地全体は第68講 北海道完全編にまとめています。
