部品メーカーが「夢」と名づけたワイナリー
ダイナックス アーロムワイナリーは、北海道勇払郡安平町追分柏が丘46-41にあるワイナリーです。運営するのは株式会社ダイナックス。千歳市に本社を置き、北海道新聞によれば1973年創業で、エンジン車向けのクラッチを主力とする自動車部品メーカーです。そのワイン事業の名前が「アーロム」。公式サイトは、ハンガリー語の álom、つまり「夢」だと説明しています。
始まりは一人のエンジニアでした。公式サイトの「私たちのストーリー」は、ある社員がハンガリーで出会ったぶどう畑の絶景がプロジェクトの出発点だったと書いています。2026年8月17日の北海道新聞のインタビュー記事によれば、発案者は開発部門にいた社員で、ハンガリー出張で見たぶどう畑がきっかけ。2019年に始まった社内の公募制度から生まれた事業で、発案者はいまワイン事業を率いています。同じ記事で、ダイナックスの小川真社長は、ワイナリーと畑あわせて7人が働き、うち4人は新たに採用したと話しています。
舞台に安平町を選んだ理由も、公式サイトに書かれています。安平町はダイナックスの拠点がある東胆振のまちで、新千歳空港に近く、国内のチーズ発祥の地ともいわれる土地。ワインとの相性に可能性を見たとしています。2025年9月2日の北海道新聞は、ワイナリーの建物が完成して竣工式が開かれたことを伝え、事業の目的に、胆振東部地震で被災した安平町の復興、雇用の創出、障害のある人がぶどうづくりに携わる農福連携を挙げています。
110本から29,000本へ ── 畑の歩み
公式サイトの「ぶどう畑」のページは、畑の歩みを数字でたどれます。ワイン用ぶどうのテスト栽培を始めたのは2021年。最初に植えた苗は110本で、一本ずつ手で植えたと書かれています。1年間のテスト栽培で生育が良好だったことから規模を段階的に広げ、いまは約14haの畑に、シャルドネ、ピノ・ノワール、ケルナー、ツヴァイゲルトなど約29,000本が育っています。作業は機械と手を使い分け、野生動物への対策もしながら畑を守っているそうです。
北海道新聞(2026年8月)は、品種を16品種・約3万本と伝え、安平町の冷涼な気候に合った、果実味と生き生きとした酸を大切にしたぶどうづくりを目指していると紹介しています。技術面では、岩見沢の宝水ワイナリーから剪定や栽培方法の支援を受けたとされます。北海道庁の資料(令和8年2月現在)の「主な醸造品種」は、ピノ・ノワール、シャルドネ、ツヴァイゲルト、ケルナーの4つです。ツヴァイゲルトはオーストリア生まれの赤ぶどうで、公式インスタグラムでも最後の圧搾の様子が投稿されています。
初めてのワインと、三つのシリーズ
2025年9月の北海道新聞によれば、醸造は2025年10月に始まり、2026年3月の出荷開始と、年5万本の生産を目標に掲げていました。2026年8月の記事は、販売と飲食のコーナーが2026年3月に開き、多くの客が訪れていると伝えています。
北海道庁の資料は、主なラインナップとして「クラッチシリーズ」「プラネタリーシリーズ」「110シリーズ」の三つを挙げています。「110」は最初に植えた苗の数と同じ数字、「クラッチ」はダイナックスの主力製品と同じ言葉です。各シリーズの中身(品種・価格)は、公式サイトでは確認できませんでした。2026年10月21日のお知らせでは、丸井今井札幌本店でもワインを扱いはじめたとされています。
訪ねる ── 金・土・日曜だけ開くショップ
公式サイトによれば、ショップの営業日は毎週金曜・土曜・日曜、営業時間は11:00〜16:30(ラストオーダー16:00)。駐車場は9台(うち多目的駐車場1台)あります。よくある質問によれば、営業時間内なら予約なしで立ち寄れます。一方で、個人向けのワイナリー見学は行っておらず、団体の見学は問い合わせフォームから事前に相談する形です。店内の飲食はおつまみセットのみで、ワインの試飲の有無や料金は公式サイトに書かれていません。
冬は休業します。2026年10月のお知らせでは、在庫が残りわずかになったため今年度の営業は10月15日で終了し、10月12日〜15日の特別営業では店から醸造作業の様子が見られる予定だと案内されていました。2026年11月1日時点で公式サイトには「冬季休業中」と出ています。次のシーズンの開始日や条件は変わることがあるので、出かける前に公式サイトとインスタグラムで確かめてください。公共交通での行き方は公式サイトに記載がありません。
北海道のワインのなかで
2026年8月の北海道新聞によれば、北海道のワイナリーはいまや70を超えます。そのなかでアーロムワイナリーは、空港から近い札幌近郊エリアに、異業種の製造業が一から畑を拓いた例です。同じく空港の近くで石蔵の醸造所を構える千歳ワイナリー、空知の10R Wineryや山崎ワイナリーと並べると、北海道の南側でも土地と造り手の顔ぶれが広がっていることが見えてきます。産地の全体像は第68講 北海道完全編、畑の仕事の一年は第59講 ぶどう畑の一年・栽培完全編で。
