原野を拓いた、家族のワイナリー
モンガク谷ワイナリーは、余市町登町の丘の上にあるワイナリーです。北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(後志エリア)によれば、ぶどう栽培からワイン醸造までを家族で行うファミリーワイナリーとして、2018年に木原茂明さんが開設しました。公式サイトの署名には、茂明さんと「つむこ」さんの名前が並びます。
公式サイトは、最初に訪れたときのモンガク谷を「まだ原野だった」と振り返っています。道なき道を進んで小高い丘に登ると、茂った森の向こうにかすかに海が見え、山々に囲まれていた。そこから森を拓き、水路を整え、海の見えるぶどう畑をつくりました。商品ページの紹介によると、畑は耕作放棄地を再生したもので、植栽を始めたのは2012年。古い樹で樹齢10数年になります。
醸造蔵にも物語があります。「札幌軟石の醸造蔵を作る」のが夢だったといい、出会った築100年近い札幌軟石の蔵をていねいに移築して、断熱性を生かした半地下の石蔵にしました。夏は除湿、冬は床暖房に使うエネルギーを抑え、石造りの蔵の地下熱を生かした自然な温度帯での醸造を目指していると、商品ページに書かれています。
7品種を一枚の畑に——フィールドブレンド
北海道庁の資料によれば、畑は余市町登地区で最も標高が高い位置にあり、広さは約2ha。公式サイトでは、ここにピノ・ノワール、シャルドネ、ピノタージュ、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブラン、ゲヴュルツトラミネールのフランス系7品種(2024年時点)を植えていると紹介しています。
造りの軸は混醸です。複数の品種を同じ畑に植え、そこで実った品種を発酵の初期までに混ぜて仕込む。公式サイトは、冷涼産地らしい酸味、適度な苦味、複雑な香味の三つを意識し、野生酵母による自然発酵で、あえて無濾過・無清澄で造っていると書いています。2024年の商品説明では、2022年ヴィンテージから3シーズン続けて全キュベを酸化防止剤無添加(サンスフル)で仕込んだとされています。
畑の外にも目を向けています。搾ったあとのぶどうを放牧している動物の飼料にし、その堆肥を畑へ戻す。11haの敷地の中の「小さな循環」に加え、地元の漁師から受け取ったうにの殻を畑に還す「大きな循環」も意識していると、公式サイトのよくある質問は答えています。2021年を「放牧元年」としたとも書かれています。
主な銘柄——どんぐりの木の名前
フィールドブレンド・シリーズ「モンガク谷」の銘柄名は、すべてどんぐりの木から取られています。ラベルは、絵本『モチモチの木』の世界を描いた娘さんの絵です。公式サイトの2024年ヴィンテージの商品説明から挙げます。
- 『モンガク谷 2024 杤(とち)』——シリーズのフラッグシップ。ピノ・ノワール64%、ピノタージュ23%、ピノ・グリ5%、シャルドネ4%、ソーヴィニヨン・ブランほか4%。MLFあり、アルコール分12.5%、750ml。小売希望価格4,700円・税抜(参考)
- 『モンガク谷 2024 栢(はく)』——シリーズで唯一の白ぶどう主体。シャルドネ61%、ピノ・ノワール18%ほか。樽熟成の原酒をブレンド。
- 『モンガク谷 2024 楢(なら)』——ピノタージュ54%、ピノ・ノワール27%ほか。公式の商品説明では、ピノタージュ主体を白として仕込んだ、世界でもまれなブラン・ド・ノワールと紹介されています。
2024年は、早い雪解けで芽吹きが早く、夜温の低い涼しい夏になったヴィンテージと説明されています。公式の商品説明は、落ち着きが出るまで少なくとも2〜3年、できれば5年ほどの瓶熟成を勧めています。ふるさと納税の返礼用として『桧(かい)』もあります。
訪ねる前に
北海道庁の資料では直売所なし・訪問見学不可とされ、購入方法は全国の取扱酒販店と案内されています。公式サイトにも見学や試飲の受付の案内はなく、お取扱酒販店の一覧(北海道内では余市町の中根酒店、小樽高島加藤商店、札幌の地酒仙丸など)とオンラインショップへのリンクが載っています。景色やワイナリーの様子を体験してもらう計画が進行中とも書かれていますが、時期や内容は示されていません。条件は変わることがあるので、最新の情報は公式サイトで確かめてください。所在地は余市郡余市町登町1982-1です。
登の谷の造り手たち
余市町登地区は、ドメーヌ・タカヒコをはじめ小さな造り手が集まる、北海道でも指折りのぶどう産地です。町の古株余市ワイナリー、平川ワイナリー、OcciGabi Wineryと並べると、その中でモンガク谷は「一枚の畑を一本に」というフィールドブレンドに絞った、際立って個性の強い造り手です。北海道の産地全体は第68講 北海道完全編、日本ワインの見取り図は第9講にまとめています。
