札幌の酒蔵が、余市に開いた最初のワイナリー
余市ワイナリーを営むのは、札幌市中央区に本社を置く日本清酒株式会社です。日本酒「千歳鶴」の蔵元として知られる会社が、ぶどうの町・余市にワイナリーを開いたのが1974年。公式サイトはここを「余市町最古のワイナリー」と紹介しています。
北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(後志エリア)は、その出発点を「余市のブドウを余市で仕込む地ワイン」を目指した開設と書いています。いまの余市町には小さなワイナリーが次々に生まれていますが、その中でもっとも早くワインを造り始めたのがこの蔵です。半世紀前、町のぶどうを町で仕込むという考えを最初に形にした場所、と言い換えてもいいかもしれません。
公式サイトの「余市ワインについて」は、余市の果樹の歴史から語り起こします。明治8年(1875年)にりんごの苗木が植えられ、りんご園は昭和46年(1971年)に1,700haまで広がったのち、面積が減るのと入れ替わるように、ぶどうや梨の栽培が増えていった。ワイナリーの開設は、ちょうどその転換期と重なっています。
契約農家と登地区の自社畑、ドイツ系の品種
公式サイトによれば、余市町で植えられている主なワイン用ぶどうは、面積の多い順にケルナー、ツヴァイゲルトレーベ、ミュラー・トゥルガウ。いずれも寒さに強いドイツ系の品種です。積丹半島の付け根にあり、北を日本海に、三方を丘に囲まれた余市は、対馬暖流の影響で北海道の中では穏やかな気候とされ、夏の平均気温は20℃前後、冬の最低気温が-10℃を下回ることはあまりないと説明されています。晩夏から初秋にかけて晴れの日が多く、昼夜の寒暖差が色づきと糖度をのせる、というのが公式の見立てです。
ワイナリーは余市の契約農家を「大切なパートナー」と呼び、そのぶどうを軸にしています。北海道庁の資料ではこれに加え、余市町登地区の自社畑でケルナー、ツヴァイゲルトレーベ、ミュラー・トゥルガウ、ピノ・ノワール、アルモノワール、ナイアガラ、キャンベル・アーリーを中心に育てているとされ、栽培面積は7.5haと記されています。
主な銘柄
公式サイトの商品一覧に並ぶのは、ラベルに品種名を掲げた「余市ワイン」のシリーズです。メルロー、芳醇デラウェア、ピノ・ノワール、アルモノワール、樽熟ツヴァイゲルトレーベ、ツヴァイゲルトレーベ、キャンベルアーリー、ケルナーシュール・リー、ケルナー、ミュラートゥルガウ(720mlのほか360mlも)が載っています。
北海道庁の資料が主なラインナップに挙げるのは『樽熟ツヴァイゲルトレーベ』『ケルナーシュール・リー』『ピノ・ノワール』『アルモノワール』『ミュラートゥルガウ』『ナイアガラ』『キャンベルアーリー』。このうちケルナーの白は、発酵のあと澱引きをせずに置くシュール・リーで仕込んでいると紹介されています。価格は公式のオンラインショップに載っており、ヴィンテージや時期で変わるため、ここでは書いていません。
訪ねる:工場見学、ショップ、レストラン、カフェ
余市ワイナリーは、余市の中でも訪ねやすいワイナリーのひとつです。以下は公式サイトの各施設ページと、2026年9月10日掲載の「営業時間のお知らせ【10月、11月】」で確かめた内容です(2026年11月1日確認)。
- 工場見学:自由見学で無料。10:00〜16:30。団体は電話で予約。
- ワインショップ:10:00〜16:30。ワイナリー限定のワインを含む余市ワインの全商品、余市産果汁100%のジュース、地元の陶器、千歳鶴の日本酒も扱います。試飲ができると案内されていますが、料金は書かれていません。
- レストラン:11:30〜(ラストオーダー14:30)。石窯で焼くピッツァ、道産牛100%のハンバーグ、地元の食材を使った季節の料理を出し、ピザはテイクアウトもできます。
- カフェ:10:00〜16:00。赤または白の余市ワイン3種を飲み比べる「余市ワインセット」のほか、余市ワインと余市産りんごのソースをかけたソフトクリームがあり、運転する人や子ども連れでも立ち寄れます。
- ギャラリー&アトリエ:北海道の作家の作品を2〜3か月ごとに入れ替えて展示(4〜10月)。犬を連れて遊べるドッグランもあります。
定休日は5月〜12月が火曜、1月〜4月が火・水曜。北海道庁の資料も、定休日は季節で変わるのでホームページで確かめるよう書いています。所在地は余市郡余市町黒川町1318番地、JR余市駅から車で約5分。電話はショップ・工場見学が0135-21-6161、カフェが0135-22-3375です。駐車場の有無は公式サイトでは確認できませんでした。
余市・後志の中での位置づけ
余市町は、ドメーヌ・タカヒコやOcciGabi Winery、平川ワイナリーなど、2010年代以降に生まれた造り手が集まる北海道有数のぶどう産地です。その中で余市ワイナリーは、1970年代から契約農家と組んできた古株であり、隣の仁木町のNIKI Hills Winery、小樽の北海道ワインとあわせて回ると、後志のワインの層の厚さが見えてきます。北海道の産地全体は第68講 北海道完全編、ワイナリーを巡る準備は第51講にまとめています。
