ワイン好きにとって、いちばんの贅沢は「ワイナリーに泊まる」ことかもしれません。昼はぶどう畑を歩き、夕には併設レストランでワインと料理のマリアージュを楽しむ。運転を気にせずグラスを重ね、そのまま一泊——翌朝は、畑の緑とともに目覚める。
ホテルや温泉、グランピング、キャンプ場を備えた、日本の滞在型ワインリゾートを集めました。数はまだ多くありませんが、どこも「ワインを軸に過ごす一日」を叶えてくれる特別な場所です。宿泊プランや料金は変わりやすいので、各公式サイトで最新情報をご確認ください。
滞在型ワイナリーの選び方——4つのタイプ
ひとくちに「泊まれるワイナリー」といっても、過ごし方はタイプでかなり変わります。自分の旅の目的に合わせて選ぶのが失敗しないコツです。
①オーベルジュ・温泉型——ワインと食事、湯までを一か所で完結させたい人へ。草分けのカーブドッチ(新潟)はレストラン・スパ・温泉・宿を敷地内に揃え、「ワインを軸にした一日」をまるごと設計できます。中伊豆ワイナリー(静岡)はホテル・温泉に加えてグランピングや乗馬まで備えた大型リゾートで、家族旅行との相性が抜群です。
②ホテル型——景色と食事を静かに楽しみたい大人の旅へ。NIKI Hills Winery(北海道・仁木町)は約33haの丘に醸造所・庭園・レストラン・ホテルが点在し、樽庫を併設した地下レストランでのディナーと、森に面した客室での一夜が核になります。
③宿泊ドメーヌ型——造り手の暮らしのそばに泊まりたい人へ。ウッディファーム&ワイナリー(山形・上山市)は蔵王の麓で畑見学ツアーから試飲、滞在までを一体で楽しめる「宿泊できるドメーヌワイナリー」。派手さより、畑と蔵の日常に近い時間が魅力です。
④アウトドア型——自然の中で一杯やりたい人へ。奥利根ワイナリー(群馬・昭和村)は標高約700mの赤城高原、ぶどう畑のなかにキャンプ場「Camp in the vineyards」を構えます。焚き火とワインという組み合わせは、ホテルでは得られない開放感があります。
「泊まる」からこそできること
ワイナリー滞在の最大の価値は、運転の心配が消えることです。ワイナリー巡りの最難関はいつも「足」の問題——試飲も飲酒ですから、車で来た人はグラスに口をつけられません。泊まってしまえばこの制約がなくなり、テイスティングでもディナーでも、心置きなくグラスを重ねられます。
もうひとつは、時間帯の特権です。日帰り客が帰ったあとの夕暮れの畑、朝もやの中のぶどう樹——ワイナリーがいちばん美しい時間は、実は営業時間の外にあります。夕食の前に畑を散歩し、翌朝もう一度同じ道を歩く。それだけで、昼に見た景色とはまったく違う産地の顔に出会えます。
滞在を最高にする段取り
計画はシンプルで構いません。順番だけ押さえておきましょう。
- 宿泊とディナーは別予約かを確認する——施設によってはレストラン(特にディナーコース)が宿泊と別枠の事前予約制です。泊まれたのに食事の席がない、が滞在型でいちばん多い失敗です。
- 見学ツアーの時間を先に押さえる——ツアーは開催時間が決まっていることが多く、チェックイン前後のどちらに入れるかで一日の設計が変わります。予約制の蔵(カーブドッチ、ウッディファームなど)は公式サイトから先に確保を。
- 買ったワインの持ち帰りを考えておく——せっかくの蔵元限定ボトルも、夏場の車内放置は厳禁です。クール便での発送に応じてくれるワイナリーが多いので、迷ったら送ってしまうのが安心です。
試飲の作法や予約の細かなコツは、第51講 ワイナリー訪問とワインツーリズム完全編にまとめてあります。あわせてどうぞ。

