調香師だった造り手と、屈斜路湖の町
弟子屈町は、日本最大のカルデラ湖・屈斜路湖、透明度で知られる摩周湖、噴気を上げ続ける硫黄山を抱える道東の町です。北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(道東エリア)は、弟子屈ワイナリーを「国内最東端に位置する」ワイナリーとして紹介しています。
運営は株式会社セナヴィーノ(CENAVINO)。公式サイトの会社概要によれば、設立は2023年9月15日、代表取締役会長は小嶋昭男さん、代表取締役社長は髙木浩史さんで、事業はワイナリー事業と温泉熱水耕栽培事業です。北海道庁の資料では、醸造免許の取得は2024年。
公式サイトの「想い」には、出発点が書かれています。山梨の『香り甲州』という日本ワインを飲んだことをきっかけに日本ワインを意識し始め、前職の調香師として培った香りの知見を生かして、自分たちにしかできないワインづくりに挑みたいと考えた。学生時代を過ごした道東で、美幌峠から見下ろした屈斜路湖の風景が忘れられなかった——。その風景の中で、北海道の独自品種を軸に「弟子屈テロワール」を確立したい、というのがこのワイナリーの掲げる目標です。
3つの畑、山幸と清舞、そして温泉
公式サイトによれば、ヴィンヤードは町内に3か所あります。屈斜路湖のそばにある屈斜路ヴィンヤード、天然温泉の源泉を敷地内に持つ美留和(びるわ)ヴィンヤード、ワイナリーに直結する仁多(にた)ヴィンヤード。仁多でも源泉を保有しており、できる限り自然を生かしたワインづくりを追うと書かれています。北海道庁の資料では栽培面積は6haです。
育てる品種は、公式サイトが「北海道の独自品種」と呼ぶ山幸と清舞。北海道庁の資料でも、主な醸造品種はこの2つです。公式サイトは「無農薬・無添加・天然酵母」に加え、温泉水まで活用すると掲げ、北海道庁の資料も、地熱エネルギーを生かした温泉や温泉熱を用いた栽培・醸造法を特徴に挙げています。醸造について公式サイトは、ぶどうに付いた天然酵母の働きを衛生管理と温度管理で引き出すと説明しています。
ワイナリーの隣接地では、温泉熱を使った無農薬の水耕栽培で野菜も育て、「道の駅 摩周温泉」で販売しています。3つの畑の余力でブルーベリー、ラズベリー、ハスカップを育て、北海道産の砂糖でジャムにもしています。
主な銘柄
公式サイトのワイン紹介(2026年11月1日確認)より。北海道庁の資料が挙げる主なラインナップは、赤ワインとロゼスパークリングワインです。価格は公式サイトでは確認できませんでした。
- 『和~NAGI~ YAMASACHI ROUGE』——弟子屈町産山幸の赤。野生酵母で発酵し、樽熟成約6か月、無清澄・無濾過。アルコール分11%。
- 『琴~KOTO~ KIYOMAI ROUGE』——弟子屈町産清舞の赤。公式の商品説明では、木苺やスミレの香りにフレッシュな酸が調和した赤と紹介され、少し冷やして飲むことを勧めています。樽熟成約6か月。アルコール分11.5%。
- 『幸桜~KOHARU~ ROSE』——山幸と清舞のロゼ。白ツツジを思わせる甘い花の香りと紹介。
- 『Viruwa ROSE』——山幸を全房のまま2週間マセラシオン・カルボニックしてから搾り、野生酵母で発酵。樽熟成約3か月、無清澄・無濾過。
- 『Caldera ROSE SPARKLING』——清舞主体。一次発酵のあとに果汁を加えて瓶詰めし、瓶内二次発酵させたロゼのスパークリング。酸化防止剤無添加のため要冷蔵。
なお、『和』『琴』『幸桜』の商品情報には、醸造所として帯広市の相澤ワイナリーを営む「あいざわ農園合同会社」の名前が記されています。
訪ねる前に:見学・直売はなし、町の酒販店で
北海道庁の資料(R8.2現在)では、弟子屈ワイナリーは直売所なし、訪問・見学は不可です。公式サイトにも見学や試飲の案内は見当たりません。
ワインは、北海道庁の資料では弟子屈町内と釧路市の酒販店で販売されています。公式サイトの販売店一覧に載るのは、弟子屈町のかくふじ商店(湯の島)と西沢商店(川湯温泉駅前)、釧路市の銘酒のさとう、東京のIMADEYA GINZA SIX。グラスで飲める店として、釧路市の炉ばたとワインK、La Bozza、弟子屈町の屈斜路プリンスホテルが挙がっています。取り扱いは順次広がっているとのことなので、条件は変わることがあります。最新の情報は公式サイトか各店で確かめてください。問い合わせは公式サイトのフォームから(返信はメールのみ)。
道東のワインの中で
同じ弟子屈町の屈斜路には、2024年に開いた町の公設の屈斜路カルデラワイナリーがあり、ひとつの町に新しい造り手が二つ並ぶことになりました。十勝には山幸を生んだ池田町の十勝ワイン、帯広の相澤ワイナリー、オホーツクには北見市のInfeeld winery。道東は、寒さに強い北海道の品種で土地の個性を探る産地として形をなしつつあります。北海道全体は北海道の産地ガイドと第68講 北海道完全編にまとめています。
