富岡ワイナリーから、おとべワイナリーへ
おとべワイナリーは、渡島半島の西側、日本海に面した乙部町の富岡地区にあります。北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(道南エリア)によれば、醸造免許を取得したのは1976年。道南では七飯町のはこだてわいん(1973年)に続く古さで、半世紀近くこの町でワインを造ってきたことになります。
現在の運営は、札幌市西区発寒に本社を置く札幌酒精工業株式会社です。公式サイトの会社概要によれば、同社は昭和8年(1933年)に焼酎甲類メーカーとして創業し、『サッポロソフト』や、厚沢部町の自社工場で造る本格焼酎『喜多里』で知られる会社。沿革には、平成20年(2008年)7月に富岡ワイナリーを譲り受け、令和3年(2021年)10月に「おとべワイナリー」へ名称を変更したと記されています。焼酎、ウイスキー、リキュールと並べて、道産原料のワインを手がける一部門という位置づけです。
乙部の畑と、品種の顔ぶれ
公式サイトの「おとべワイン セパージュシリーズ」では、この土地を、温暖な気候、北国らしい長い日照時間、ぶどうが熟す時期の昼夜の寒暖差という三つの条件がそろった場所と紹介し、1976年から積み重ねた経験と気象の特性を生かしてワインを造っていると書いています。
北海道庁の資料が挙げる栽培品種は、セイベル13053、ヤマソービニヨン、メルロ、ヤマブドウ、セイベル9110、ザラジェンジェ、シャルドネ。寒さに強い交配品種と、山ぶどうの血を引くヤマソービニヨン、そしてヨーロッパ系のメルローとシャルドネが同じ町で育っている、道南らしい混ざり方です。同じ資料は、ワインの特徴を、品種の個性を生かしながら「おとべ」のテロワールを表したしっかりとした酸味、とまとめています。
セパージュシリーズのラベルには、乙部町の景勝地「シラフラ」が描かれています。公式サイトの説明では、アイヌ語で「白い傾斜地」を意味し、高さ20mほどの白い断崖が約500mにわたって続く場所です。
主な銘柄
公式サイトの商品一覧(2026年11月1日確認)に並ぶワインです。アルコール分はいずれも12度。価格は公式サイトでは確認できなかったため書いていません。
- 『おとべワイン メルロー 2021 樽熟成』(750ml)——乙部町産メルロー。フレンチオーク樽で熟成。公式の商品説明では、北の草原の風味に爽やかな果実味と酸味、適度な渋みのあるワインと紹介。
- 『おとべワイン ヤマソービニヨン 2021 樽熟成』(750ml)——乙部町産ヤマソービニヨン。フレンチオークとアメリカンオークの樽で熟成。濃縮された果実味としっかりした酸味、濃い色合いが特徴と紹介。
- 『おとべワイン メルロー 2020』『おとべワイン ヤマソービニヨン 2020』(各750ml)——同じ品種の樽を使わないヴィンテージ。
- 『おとべワイン ヤマブドウ』(360ml)——乙部町産の山ぶどう。力強い酸味と熟成によるまろやかさのあるワインと紹介。
- 『乙部醸造ワイン 赤』(720ml・360ml)——北海道産ぶどう100%、セイベル13053・メルロー・ヤマソービニヨン。程よい爽やかな酸味で和食にも合うと紹介。
- 『乙部醸造ワイン 白』(720ml・360ml)——ザラジェンジェ、セイベル9110、シャルドネ。柔らかな味わいとほんのりとした甘みのあるワインと紹介。
- 『あっさぶワイン セイベル13053』(750ml)——隣町・厚沢部町で2000年頃から栽培されてきたセイベル13053のセパージュ。果実味のあるライトボディの赤と紹介。
- 『ミスタージンギスカン 赤』(360ml)——セイベル13053とヤマソービニヨン。ジンギスカン料理に合わせてブレンドしたと説明されています。
樽熟成の2本は、公式サイトで同社のオンラインショップでの数量限定販売と案内されています。樽熟成の有無で同じ品種を飲み比べられるのが、このシリーズの組み立てです。
訪ねる前に:見学・直売はなし
おとべワイナリーは、訪ねて試飲するタイプのワイナリーではありません。札幌酒精工業の公式サイト「よくある質問」は、札幌工場・おとべワイナリーとも工場見学を実施していないと明記しています。北海道庁の資料でも、直売所は無し、訪問・見学は不可です。
ワインを手に取るなら、北海道庁の資料にある北海道内の酒取扱店舗か、同社のオンラインショップが窓口になります。イベントでの出品もあり、公式サイトのお知らせによれば、2026年9月11日〜10月3日の「さっぽろオータムフェスト2026」では、大通公園7丁目の「HOKKAIDOワイナリーヴィレッジ」で『乙部醸造ワイン 白』『あっさぶワイン セイベル』『おとべワイン ヤマソービニヨン 樽熟成2021』『おとべワイン ヤマブドウ』を期間ごとに出していました。ワイナリーの電話は0139-62-3155(会社概要の所在地欄)。取り扱いや販売の条件は変わることがあるので、公式サイトで確認してください。
道南・日本海側のワインの中で
乙部町の沖には、島でぶどうを育てる奥尻ワイナリーがあり、南へ下ると函館周辺に、道南の老舗はこだてわいんや、北斗市の農楽蔵など2010年代以降の造り手が集まっています。その中でおとべワイナリーは、日本海側で交配品種とヤマソービニヨンを長く育ててきた、道南でも古い蔵のひとつです。北海道の産地全体は北海道の産地ガイドと第68講 北海道完全編に、日本ワインの見取り図は第9講にまとめています。
