犀川のほとりの「西の蔵」
西飯田酒造店は、長野市篠ノ井小松原に蔵を構える酒蔵です。公式サイトによれば創業は江戸末期。北アルプスに源を発する犀川のほとり、善光寺平に位置し、地元の浅井戸から汲み上げる硬水の地下水と、契約栽培・自家栽培の酒米で酒を造ってきました。NAGANO WINE(長野県の公式サイト)の紹介ページは、冬の冷え込みが厳しい善光寺平で、長く「西の蔵」として地域に親しまれてきた蔵元と書いています。
主軸は日本酒の二つの銘柄です。善光寺で光り輝くような信濃の美酒にとの願いを込めた代表銘柄「信濃光」と、積み重ねてきた善行を意味する特定名称酒「積善」。会社概要によれば会長は八代目の飯田基さん、社長は九代目で杜氏も務める飯田一基さんです。
酒蔵が果実酒をつくるようになった理由
この蔵とワインの縁は、戦時中にさかのぼります。公式サイトの「西飯田酒造店の歩み」によれば、七代目・大太郎さんの時代、国の「酒造業の企業整備」で蔵の転廃を迫られた際に果実酒の製造免許を取得し、ブランデーを軍に納めていたこともありました。清酒の免許が戻ったのは、終戦から約10年後の1956年1月です。
1970年代からは、りんごのワインを手がけるようになりました。蔵のある地区は長野県内でも上質なりんごの産地として知られ、公式サイトはりんごの酒を蔵の象徴的な酒のひとつとしています。同じころからリースリングやナイアガラなどのぶどう栽培も始まり、ワインの醸造が本格化していきました。
花酵母——酒にもワインにも
西飯田酒造店を特徴づけるのが花酵母です。公式サイトの説明によれば、花酵母は東京農業大学短期大学部の研究室が、自然界に咲く花の糖に集まる酵母を分離培養したもの。蔵が使い始めたのは八代目の基さんの代、1990年代のことで、花酵母の生みの親である中田久保さんと大学の同級生だった縁から、試験的に「なでしこ」の花酵母を使ったのが始まりでした。
九代目の一基さんは東京農大で花酵母を学び、研究室で年間2,000もの花を試験して「りんご」「桜」「ぼたん」「りんどう」の4種を分離したと書かれています。いまは毎年15種前後の花酵母を入れ替えながら使い、一基さんが蔵に入ってからは、日本酒を全量花酵母で醸すようになりました。公式サイトは、ワインとシードルにも共通して花酵母を使っていると説明しています。NAGANO WINEの紹介ページによれば、ワインの花酵母は東京農大との連携から生まれたものです。
主な銘柄と参考価格
公式オンラインショップ(2026年11月1日確認)に並ぶワインと果実酒です。価格はショップの表示で参考です。
- 『信州の地ワイン メローズ』——自社栽培のナイアガラを日日草(にちにちそう)の花酵母で発酵させた辛口の白。公式の商品説明では、芳醇なナイアガラの香りが余韻よくキレる味わいと紹介。アルコール度数11度。720ml 1,420円/1.8L 2,200円(参考)
- 『minori no awa(みのりのあわ)』——長野市南部の川中島白桃をふんだんに使ったスパークリング。アルコール6度、500ml 1,815円(参考)
- 『シードル 辛口』——長野市内の農家の完熟りんご(サンフジ)を瓶内二次発酵で仕込んだキレのある辛口。アルコール6度、1,980円(参考)
- 『シードル 甘口』も扱っています。
NAGANO WINEの紹介ページは『メローズ』を、地元産のナイアガラを日日草の花酵母で仕込み、丁寧に瓶に詰めた一品と紹介しています。「ワイナリーのオンラインショップ一覧」では、販売本数が少なく完売することがあると案内されています。
訪ねる前に・長野市周辺の造り手
公式サイトには営業時間9:00〜17:30、休業日は日曜・祝日、年末年始(臨時休業あり)と書かれていますが、蔵での直売・試飲・見学の案内は見当たりませんでした。NAGANO WINEでは定休日を土・日曜、祝日としており、情報が分かれています。所在地は長野市篠ノ井小松原1726番地、電話は026-292-2047。訪ねる前に電話で確かめてください。条件は変わることがあります。
長野市内には有旅ワイナリーがあり、千曲川をさかのぼれば千曲市のイルフェボー ワイナリー、坂城町の坂城葡萄酒醸造、北へ向かえば飯綱町のサンクゼール・ワイナリー。日本酒の蔵が花酵母で仕込むナイアガラは、千曲川ワインバレーの中でも少し違う角度の一本です。長野の産地全体は産地:長野と第72講 長野完全編にまとめています。

