茶臼山の上、長野市で初めてのワイナリー
有旅ワイナリー(UTABI Winery)は、長野県長野市篠ノ井有旅字峠1189-1にあるワイナリーです。地名の「有旅」は「うたび」と読みます。長野県のNAGANO WINEオフィシャルサイトの記事(2025年3月)によれば、ワイナリーは茶臼山の山頂にあって見晴らしがよく、近くには茶臼山恐竜園や茶臼山動物園があります。酒蔵が手がけるワインを除けば、長野市で初めてのワイナリーとされます。
長野市は2023年1月に「ワイン・シードル特区」に認定され、千曲川ワインバレーに加わる形になりました。有旅ワイナリーは、その長野市から生まれた最初の本格的なワイナリーといえます。
開業までの流れは、資料によって書き方が少しずつ違います。地域の情報誌の記事では、2024年5月10日に竣工式が行われ、同年9月に醸造が始まったとされます。NAGANO WINEオフィシャルサイトは2024年6月にオープンしたと紹介しています。ワインの販売とショップの開店はその後で、長野市のシティプロモーションサイトによれば、2025年6月13日にグランドオープンを迎えました。
ソムリエから造り手へ ── 田中啓さんと滝澤資大さん
代表の田中啓さんは、長野市篠ノ井の生まれです。公式サイトとNAGANO WINEオフィシャルサイトによれば、星野リゾートやザ・リッツ・カールトン東京などでソムリエとして働き、ソムリエ・エクセレンスの資格も持っています。2016年に千曲川ワインアカデミー(2期)で学び、「妥協のないワインをつくりたい」と造り手に転じました。高山村の栽培家のもとで2年間学んだあと、2018年にぶどう栽培を始め、2021年には自身の畑「Signature K」をスタートさせています。修業先として、信州たかやまワイナリー、北海道の10R ワイナリー、たかやしろファーム&ワイナリーの名前が挙げられています。
もう一人の創業者、滝澤資大さんも長野市の出身です。1983年から塩尻の株式会社アルプスで醸造、生産管理、営業に携わり、退職後の2017年に、長野市七二会(なにあい)の親族のりんご畑を受け継いでぶどう畑に変えたとされます。有旅ワイナリーでは畑の仕事を担い、醸造の判断は田中さんに任せていると紹介されています。
海の記憶をもつ土と、二つの畑
地域の情報誌の記事によれば、ワイナリーの隣には遊休農地をよみがえらせた約2ヘクタールの畑があり、標高は約650mです。土はジュラ紀の海底に由来するとされる海洋性の土壌で、風通しと日当たり、水はけがよく、ゆるやかな斜面になっています。ラベルに海の化石とぶどうが描かれているのも、この土にちなんだものだそうです。
2026年5月の専門メディアの記事では、自社の畑は長野市内の2か所、標高約650mと約730mにあり、植えている品種はおよそ9割がシャルドネ、1割がピノ・ノワールとされます。ピノ・ノワールは2025年に初めて収穫されたそうです。NAGANO WINEオフィシャルサイトでは、田中さんの栽培する品種としてシャルドネ、メルロー、ピノ・ノワール、そして善光寺ぶどうとも呼ばれる長野の在来品種竜眼が挙げられています。
選果を重んじる醸造所
醸造所には、NAGANO WINEオフィシャルサイトによれば長野県内に4台しかないとされる除梗機と大きな選果台があり、ステンレスタンクや木樽がそろっています。機械と人の手で二重に選果し、健全な房だけを使うのが特徴とされます。田中さんは、選果で取り除くのは全体の1〜2%でも、それが味わいを決める大事な工程だと話しています。亜硫酸は最小限にとどめ、野生酵母での仕込みも試みているそうです。
生産量は、開業時の記事では年間約1万5,000本を目標とし、初年度は約7,000本の見込みとされていました。販売は東京のパティスリー「メゾン・ビー」を営む株式会社メゾンビーと、グループの株式会社BEATUSが担うと紹介されています。有旅地区にはこのグループのカフェ「Rondinella(ロンディネッラ)」もあります。
代表的なワイン
開業前の2021年にリリースされた「Signature K シャルドネ 2020」は、たかやしろファーム&ワイナリーに醸造を委託したファーストヴィンテージで、GI長野のプレミアム認証を受けたとされます。
自社醸造のワインとして、2026年5月の専門メディアの記事では次の銘柄が紹介されています。
- シャルドネ 2024 ── 自社畑のシャルドネ。新樽75%とステンレス25%で4か月熟成。
- メルロー 2024 ── メルローにプティ・ヴェルド8%、カベルネ・ソーヴィニヨン2%。新樽75%。
- メルロー プレミアムキュヴェ Fummy 2024 ── 8樽のうち最良の1樽を詰めたメルロー100%、約300本。
ピノ・ノワールのワインも準備中とされています。
訪ねるときに
日本ワイナリー協会の掲載情報では、見学と試飲は「ショップ営業時のみ可能」とされています。ショップは長野市の情報サイトや専門メディアによれば基本的に土・日の営業で、繁忙期は営業日が変わることがあります。試飲の料金や予約の要否、営業時間は確認できませんでした。公式Instagram(@utabi_winery)か電話(026-299-4120)で確かめてから出かけてください。
電車の場合、NAGANO WINEオフィシャルサイトによれば、しなの鉄道・JR篠ノ井駅から茶臼山動物園まで路線バスが通っています。開業時の記事では、乗用車と中・大型バスの駐車場を設けると紹介されていました。
長野の産地の全体像は産地:長野と第72講 長野完全編で、千曲川沿いでは坂城町の坂城葡萄酒醸造も近くです。ワイナリーを訪ねるときの心得は第51講 ワイナリー訪問にまとめています。


