牧草地と果樹園を拓いた、余市町15番目のワイナリー
Misono Vineyardの公式サイトは、歩みを3行で記しています。2019年に牧草地を開墾・整地し、2020年に隣の果樹園も同じように整え、2021年に余市町内で15番目のワイナリーとして認可を受けた。植栽できる面積は、牧草地と果樹園でそれぞれ3haと書かれています。
北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(後志エリア)は、その動機を「ピノ・ノワールとシャルドネの栽培適地を求めて」と書いています。運営はバーガンディー株式会社。2021年に酒類製造免許を取り、さくらんぼの選果場を改装したガレージ・ワイナリーを開いたとされます。同資料では栽培面積は5ha、植栽できる面積は8haとされています。
公式サイトの「想い」には、欧州でワインは宗教・歴史・文化・教養を彩る嗜好品であり、外交の道具でもある、という一文があります。大好きな人と飲む、仲直りをしたいときに飲む、ひとりで考えごとをしながら飲む――人生の大切な場面で開けてもらえる、香りと余韻に深みのあるワインを造りたい、と結んでいます。
美園の東向きの丘と、垂直仕立ての垣根
畑は、余市湾と余市川、町並みを見下ろす丘陵地にあります。公式サイトによれば東向き(一部は東南向き)の斜面で、朝日をたっぷり浴びるところからぶどうの一日が始まり、四方から吹き抜ける風が病気を防いでくれる、と説明されています。土は灰色の火山礫が風化した白灰色の細かい土で、水はけに優れているそうです。余市町は北海道の中では比較的温暖で、年間を通して雨が少ないことから果樹の適地とされています。
栽培は、有機肥料を使い、化学農薬の散布を可能な限り行わない方針です。堆肥は、もとの牧草地の地主だった牧場主から分けてもらっていると書かれています。耕さない不耕起栽培と、下草を生やす草生栽培でぶどうに適度なストレスをかけ、強く育てる考え方です。
仕立てにも特徴があります。北海道では雪への備えとして斜めの仕立てが一般的ですが、ここではフルーツラインを通常より高い1mに取り、生育のバランスがよいとされる垂直仕立てに挑んでいます。芽を摘む摘芯もできるだけ行わず、ぶどう本来の姿で実らせる、と公式サイトは説明しています。
植えられている品種は次のとおりです。
デラウェアとナイアガラは、もとの果樹園主から引き継いだ樹齢30年と50年の古木です。北海道庁の資料では、アルバリーニョは原産地と同じく棚で育て始めた品種で、「海のワイン」と呼ばれ和食との相性が期待される、と紹介されています。
ワイン造りと主な銘柄
公式サイトが掲げる造りは、無添加(無補糖・無補酸・無発酵補助剤)、天然酵母、無濾過。この土地のぶどうをありのままに活かした品質の高いワインを目指す、と書かれています。
北海道庁の資料が挙げる主な醸造品種はピノ・ノワール、シャルドネ、アルバリーニョ、デラウェア、ナイアガラ。主なラインナップはピノ・ノワール、デラウェア、ナイアガラで、古木のナイアガラとデラウェアからは、気軽に楽しめる微発泡のペティアンを造るとされています。公式サイトには銘柄ごとの説明や価格の掲載はなく、ここでは味わいや価格を書いていません。
訪ねる前に:訪問は受け付けていない
Misono Vineyardは、公式サイトのアクセス欄に「ご訪問は受け付けておりません」と明記しています。北海道庁の資料でも直売所はなく、訪問・見学は不可です。畑やワイナリーを目当てに出かけるのではなく、全国の酒販店で一本を探すのがこの造り手との出会い方になります。問い合わせは公式サイトに載っているメールアドレスで受け付けています。
所在地は余市郡余市町美園町ですが、番地は公式サイト(138番地1)と北海道庁の資料(133番地3)で表記が異なります。条件は変わることがあるので、最新の案内は公式サイトで確かめてください。
余市の丘の、新しい世代のひとつ
余市町は、ドメーヌ・タカヒコやOcciGabi Winery、平川ワイナリーなど、2010年代以降に生まれた造り手が集まる北海道有数のぶどう産地です。1974年から続く余市ワイナリーのような古株と、Misono Vineyardのような2020年代の小さな造り手が同じ町に並んでいます。牧草地とりんご・さくらんぼの果樹園だった土地をワインのための畑に変えていく流れは、余市の果樹の町としての歴史の延長にあります。北海道の産地全体は第68講 北海道完全編に、自然な造りの考え方は用語「自然派ワイン」にまとめています。
