1940年、赤湯で始まった「金渓葡萄酒」
金渓ワイン 佐藤ぶどう酒は、山形県南陽市赤湯にある家族経営のワイナリーです。公式サイトの会社概要によれば、1940年に佐藤友弥が「金渓葡萄酒」の名で創業しました。製造を担う佐藤和洋さんは、創業者を「ひいじいちゃん」と呼び、親戚一同から大きな借金をして果実酒の製造を始めたと父から聞いた、と公式サイトに書いています。
創業時の事情も、公式サイトは隠さずに記しています。ワインに含まれる酒石酸からつくるロッシェル塩は、敵艦のスクリュー音を探る集音器に欠かせない「軍需物資」で、そのためにワインが必要とされた時代でした。昭和に入ると、山形県は国産ぶどうを原料にしたワインの生産で全国4位となり、生食で出荷できないデラウェアの受け皿として、ぶどう産地を支える役割を担ったといいます。
代替わりの歩みは次のとおりです(公式サイトの会社概要)。
- 1940年——初代・佐藤友弥が「金渓葡萄酒」として創業
- 1970年ごろ——高畠町上和田から婿に入った佐藤十八が代表となり、友弥の名を襲名
- 1994年——二代目友弥が亡くなり、息子の佐藤佳夫が代表に
- 1997年——佳夫が有限会社佐藤ぶどう酒として法人化
- 2007年——佳夫が59歳で亡くなり、妻の佐藤アサ子さんが代表取締役に
アサ子さんは、工場に隣接する店舗で毎日販売の当番に立っていると紹介されています。従業員は代表・取締役を含めて6名。量を追わない小さな蔵です。
祖父と父の「三つの話」
公式サイトには、約40年前、祖父と父が晩酌をしながら話していたという三つのことが残されています。山形県産ぶどうを100%使い、山形県民に愛されるワイナリーになること。契約ぶどう栽培者の収入を上げ、共存共栄すること。そして山形県を日本のワイン銘醸地へ、さらに世界へ。
いまも原料は山形県産100%で、売上の90%以上が県内だと公式サイトは書いています。ぶどうの原料代は30年前の倍近くに上がったものの、もともとが低かったため高いとはいえず、付加価値の高い商品を造って売っていかなければ、という考えも添えられています。
自家ぶどう畑と品種
公式サイトの「自家ぶどう畑」のページは、一年の作業を写真で追う記録です。紹介されている品種は、デラウェア、メルロー、マスカット・ベーリーA、シャルドネ、甲州。樹齢およそ20年のメルローの木には「佐藤A」と名前を付け、成長を追っています。
デラウェアの一部は、雨よけのビニールハウスで生食用にも育てています。マスカット・ベーリーAは、1本のツルにできる3房前後のうち2房を落として1房だけ残す「摘房」を行うと書かれており、赤ワインの原料のぶどうに手をかけていることがわかります。なお、このページは記録の年が明記されていないため、現在の栽培面積や品種構成は確認できませんでした。
GI山形の公式サイトに載る認定ワインには、ナイヤガラ(ナイアガラ)、ブラック・クイーン、北醇、キャンベル・アーリー、ベーリー・アリカントAを使ったものもあり、山形の生食用・交配品種を幅広く使っていることがわかります(交配品種は第69講 交配品種とクローン完全編)。
主な銘柄
価格は2026年11月1日時点の公式サイトの税込価格です(参考)。
- 金渓ワイン——定番の赤ミディアム、白(辛口・甘口)、ロゼ。各1,562円。1800mlもある
- 友弥ノート——現在の製造責任者の祖父・友弥のワイン造りを再現したシリーズ。「ルージュ2025」「ブラン2025」各1,782円、「友弥ノートベーリーA 2025」2,332円。いずれも酸化防止剤無添加
- 酸化防止剤無添加のシリーズ——酸化防止剤を加えない赤・白など。2026年産の白・辛口は1,672円
- 金渓セレクション——赤・白とも「極上の甘口」。各2,332円
- 金渓スパークリング——白・辛口と、酸化防止剤無添加の赤・辛口。各1,782円
- 新酒——2026年産の赤・白(辛口・甘口)が2026年10月1日から販売。各1,672円
訪ねるなら
工場と直売所は山形県南陽市赤湯1072-2、国道13号線沿いにあります。公式サイトによれば、JR赤湯駅から徒歩15〜20分、車で約5分。東京からは山形新幹線で赤湯駅まで2時間30分強です。
2026年11月1日時点、公式サイトには改装工事のため工場見学は受け付けていないとあります。一方で直売所は営業しており、営業時間は9:00〜17:00(12:00〜13:00は昼休み)。直売所には全商品が並び、一般の小売店で買えないワインや、サイトに載っていないワインもあると案内されています。試飲もでき、工場見学ページの画像には「試飲無料」とあります。仕込み蔵は1940年からの石造りの建物だそうです。
定休日と駐車場は公式サイトで確認できませんでした。条件は変わることがあるので、出かける前に電話(0238-43-2201)で確かめてください。試飲をするなら運転は避けましょう。
赤湯のワイナリーとして
南陽市赤湯は、温泉街のすぐそばに古いワイナリーが集まる町です。歩いて回れる距離に、1892年から続く酒井ワイナリーや、1939年創業の大浦葡萄酒があります。市内の新田には、2015年設立のグレープリパブリックも。戦前・戦中から続く蔵と新しい蔵を並べて訪ねると、山形のワインの歩みが一日でたどれます。日本各地の産地との比べ方は第9講 日本ワイン産地巡りにまとめています。


