1939年、「大浦農産加工場」から
大浦葡萄酒は、山形県南陽市赤湯にあるワイナリーです。公式サイトの社長あいさつと沿革によれば、1939(昭和14)年、初代・大浦九一郎が「大浦農産加工場」としてワイン・果実酒・ジュースの製造を始めました。九一郎は赤湯の町議会議員も長く務めた人物と紹介されています。
創業当時、赤湯の町内と隣町には60軒ほどの葡萄酒工場があり、そのほとんどは葡萄農家が営んでいたと公式サイトは書いています。戦時中、政府はワインの成分である酒石酸から電波探知機に使う軍需物資・ロッシェル塩を取り出すため、ぶどう産地にワイン造りを推奨しました。大浦葡萄酒も「酒石酸認定工場」として国から砂糖の供給を受け、主に酒石酸を抽出するためのワインを造っていたといいます。
戦後、昭和30年代には「シャルマン」の銘柄を掲げ、昭和40年代にはパイナップルやオレンジ、アップルの清涼飲料も製造。昭和50年代は大手ワイナリーの下請けの最盛期で、秋になるとタンクローリーがワインを引き取りに来たそうです。
1995(平成7)年にワインショップを開き、1996(平成8)年ごろには毎年8月にワインの仕込み体験ツアーを開いて、遠方からも多くの人が訪れたと沿革にあります。代は、初代・九一郎、二代目・大浦俊雄、三代目・大浦晃と続き、2014年に四代目の大浦宏夫さんが父から代を継ぎました。
山形県産のぶどうだけで
公式サイトは、赤湯を「山形県のぶどうの発祥の地」と紹介しています。同社の「ぶどうの歴史」のページによれば、文献では江戸時代の1635年に赤湯へぶどうが移入され、明治に入って本格的な栽培が始まりました。赤湯の北の十分一山(じゅうぶいちやま)には、山梨から金掘りに来た人がぶどうの苗を植えたという言い伝えがあり、ここが山形県のぶどう発祥の地とされています。明治の半ばにはワイン醸造も始まり、戦前には隣町を合わせて60軒以上の葡萄酒工場があったといいます。
大浦葡萄酒は創業以来、山形県産のぶどうだけを使っています。主に地元の契約農家のぶどうと、自社で管理する畑のぶどうです。公式サイトによれば、使う品種は次のとおり。
- ヨーロッパ系——シャルドネ、甲州、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ
- アメリカ系——デラウェア、ナイアガラ、スチューベン
- 日本の交配品種——マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、ベーリー・アリカントA
自社管理畑は、赤湯のいちばん端、三間通地区にあります。公式サイトによれば、まわりはサクランボやリンゴの畑。雨よけのハウスをかけて農薬を極力使わず、除草剤も使わない草生栽培でぶどうを育てています。
社長あいさつでは、ワインの出来の良し悪しは原料のぶどうの品質にかかっているとし、「口に含むと赤湯や山形の風景が思い浮かぶようなワイン」を目指すと書いています。限られた地元産ぶどうで造るため、県外に多く販売できるほどの量はないとも。契約栽培農家は随時募集しています。
主な銘柄
価格は2026年11月1日時点の公式サイトの税込価格です(参考)。
- バレルエージング(ルージュ)——ベーリー・アリカントA単一で醸造し、フレンチオーク樽で長期間熟成した赤。3,696円
- バレルエージング(ブラン)——山形県産甲州100%をフレンチオーク樽で熟成した白。3,696円
- タルベリー——地元の契約農家が育てたマスカット・ベーリーAだけで造り、樽で熟成した赤。2,288円
- オオウラカベルネ/オオウラメルロ——どちらも山形県産100%。各2,437円
- アイススウィートナイアガラ/アイススウィートスチューベン——ぶどうの果汁を凍らせて糖度を高め、発酵させた極甘口のシリーズ。スチューベンは2,371円
- ピュアスウィート 山葡萄——山ぶどうを使った一本。2,981円
- おしょうしなワイン——一升瓶(1.8L)。2,574円
樽熟成の考え方は第63講 樽熟成完全編、極甘口のワインは第19講 甘口ワイン完全編で扱っています。
公式サイトの受賞歴によれば、日本ワインコンクール2023で「アイススウィートスチューベン2018」が極甘口部門の金賞、サクラアワード2022で「バレルエージング(ルージュ)2018」がダブルゴールド、サクラアワード2024で「タルベリー2020」がダブルゴールドを受けています。GI山形の公式サイトには、「THE YAMAGATA」のデラウェア(甘口・辛口)やアリカンテ、「オオウラカベルネ2018」「オオウラシャルドネ2018」、ロゼ「ブラッシュベリー2020」などがGI山形の認定ワインとして載っています。
訪ねるなら
所在地は山形県南陽市赤湯312。公式サイトによれば、国道399号線沿いで、JR赤湯駅から車で約3分、徒歩で15〜20分。樽の看板と黄色い大きな看板が目印です。駐車場があり、道路を挟んだ西側に第2駐車場、北側に第3駐車場も用意されています。
敷地内のワインショップ「Wine Shop 312」では、自社製のワインやジュース、グッズを販売し、地方発送とギフトにも対応しています。公式サイトに載る問い合わせの受付時間は9:00〜17:30(日曜・祝日を除く)。ただしショップ自体の営業時間・定休日や、試飲・見学の有無は公式サイトで確認できませんでした。条件は変わることがあるので、出かける前に電話(0238-43-2056)で確かめてください。仕込みの時期は8月から11月です。
赤湯の町のワイナリーとして
赤湯温泉の周辺には、1892年から続く酒井ワイナリー、1940年創業の金渓ワイン 佐藤ぶどう酒と、戦前から続く蔵が集まっています。市内の新田には、2015年設立のグレープリパブリックも。大浦葡萄酒と金渓ワインは、どちらも戦時中に酒石酸のためのワイン造りを担ったと公式サイトに記しており、この町のワインの歩みを知る手がかりになります。日本の産地の全体像は第9講 日本ワイン産地巡りにまとめています。


