炭鉱の町で、市の試験栽培を受け継ぐ
上歌ヴィンヤードは、空知地方の歌志内市、上歌(かみうた)地区にあります。北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(空知エリア)は、歌志内市を北海道で最も人口の少ない市と書き、このヴィンヤードを、かつて炭鉱で栄えた土地の記憶を受け継ぎながらぶどうを育てる造り手として紹介しています。
公式サイトの「about」によれば、始まりは2016年。歌志内市の事業として、ワイン用ぶどうの試験栽培が始まりました。その畑を2021年に個人で受け継いだのが、遠藤真人さんとミキさんです。公式サイトには、身長186cmの真人さんと169cmのミキさん、そして4匹の猫と1匹の犬が紹介されています。英語版を見ると、猫の名前はムニエ、ピノ・グリ、トラミナー、マルヴァジア、犬はガメイ——ぶどう品種から付けた名前です。運営会社はカミウタロクシ合同会社です。
北海道庁の資料では、醸造免許の取得は2025年、栽培面積は約2.5haです。公式サイトの「Why」の欄には、一行だけ「Life is too short to be boring.」とあります。
13品種を育て、泡とロゼに仕立てる
公式サイトによれば、育てているのはピノ・グリ、ピノ・ノワール、ムニエ、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラミナーを中心とする13品種。それらを毎年スパークリングワインに仕立て、黒ぶどうではロゼワインを造ります。北海道庁の資料は、冷涼な気候とミネラル感のある土壌を生かした栽培に取り組み、酸を軸とした味わいを特徴に、スパークリングワインをフラッグシップに位置づけていると紹介しています。
造りの考え方は、公式サイトの「How」にまとまっています。ワインは質がすべてと考え、栽培では状況に応じて質を高めるために必要な作業を施す。醸造は自然発酵。スパークリングは主に伝統的製法の瓶内二次発酵、ロゼは果皮の軽やかな要素を引き出すマセレーションを意識している、と書かれています。
主な銘柄
公式サイトのリリース情報(2026年11月1日確認)に載るワインです。価格は公式サイトでは確認できませんでした。
- 『泡沫 fleeting 2022』——オーセロワ、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラミナー、シャルドネ、ザラジェンジェ。全房プレスのあと自然発酵の途中で瓶詰めし、瓶内で2年8か月熟成させて2025年6月17日にデゴルジュマン。アルコール分12%。亜硫酸塩は全工程で無添加(自然に生じる分を考えてラベルには記載)。2025年12月リリース。
- 『泡沫 fleeting 2021』——同じ6品種。全房プレス後ステンレスタンクで6か月熟成し、同じワインの果汁を加えて瓶内二次発酵。リリース時点で瓶内熟成31か月。アルコール分11.5%、亜硫酸塩無添加。
- 『momo 2023 Barrel aged』——ツヴァイゲルトレーベ、ブラウフレンキッシュ、ピノ・ノワール、ピノ・グリ。除梗して20日間醸し(自然発酵)、プレス後に古樽で8か月熟成。アルコール分11%、亜硫酸塩は瓶詰め時に20ppm。
- 『momo 2022』——同じ4品種。除梗後8日間醸してプレスし、ステンレスタンクで11か月熟成。アルコール分10.5%。
公式サイトは『泡沫』を毎年違う方法で造ると書いており、2021年と2022年でも泡の作り方が違うことがリリース情報から読み取れます。収穫日、瓶詰め日、亜硫酸の量まで一本ごとに公開しているのも、この造り手の特徴です。
訪ねる前に:見学・直売はなし
北海道庁の資料(R8.2現在)では、上歌ヴィンヤードは直売所なし、訪問・見学もなしです。公式サイトにも見学の案内はありません。
ワインの窓口は、酒販店と公式サイトのオンラインショップ。公式サイトの取り扱い店一覧には、上川郡東川町、札幌市、夕張郡栗山町、中標津町、滝川市などの飲食店・酒販店のほか、青森県むつ市、東京、石川県金沢市、京都の店が並びます。公式サイトは、取り扱いレストランの料理とあわせて楽しんでほしいと書き、歌志内市のふるさと納税の返礼品にも出品予定としています。取り扱いは変わることがあるので、最新の情報は公式サイトかInstagramで確かめてください。
空知のワインの中で
空知地方は、北海道でもワイナリーが集まる地域です。歌志内市から南へ下ると、三笠市にタキザワワイナリーと山崎ワイナリー、岩見沢市に10R Wineryや宝水ワイナリーがあります。その中で上歌ヴィンヤードは、市の試験栽培から生まれた畑で、泡とロゼを軸に造る小さな造り手です。北海道の産地全体は北海道の産地ガイドと第68講 北海道完全編にまとめています。
