300年の酒蔵が、ぶどうを植えた
鶴岡市の奥羽自慢は、2019年のクラウドファンディング(Makuake)の説明によれば、享保9年(1724年)創業の日本酒蔵です。先代が亡くなって後継者を欠いた時期があり、2013年に酒田市の楯の川酒造の支援を受けて立て直されました。同じ説明で、若手の醸造責任者として阿部龍弥さんの名前が挙がり、日本酒の醸造で得た知識をワイン造りに生かす、としています。
ワインへの一歩は2017年3〜4月。関連会社の楯の川酒造が、地元・庄内に約3,000本のぶどうを植えました。2018年秋にシャルドネとピノ・グリを少量収穫し、2019年春に最初の白『HOCCA Blanc 2018』を300本限定で発売。当時は奥羽自慢の酒蔵の中で仕込み、「2021年を目安にワイナリーとして独立したい」と書いていました。公式サイトの「About」は、庄内平野を流れる赤川のほとりに2021年、「ホッカワイナリー」を立ち上げたと記しています。
ブランド名のHOCCAは、農家の人の「ほっかむり姿」から考えた造語だと説明されています。公式サイトのラベルやコピーには、赤ずきんや熊、「キール婆」といった物語の登場人物が出てきます。
畑とぶどう
公式サイトは、信頼できる農家と組んでぶどうを育て、山形県産の果実味の強いりんごでシードルを造っている、と書いています。各商品の表示では、ワインの原材料はいずれも山形県産ぶどうです。2019年の説明では、植えた品種としてシャルドネ、ピノ・グリ、ピノ・ノワール、シラーが挙がり、シラーは「自社栽培」と書かれています。最初の白については「海に近い砂丘地の特性」に触れた一文があります。現在の畑の場所・面積・本数は、公式サイトでは示されていません。
商品一覧にはオーストリア生まれの交配品種ツヴァイゲルトの名もあります(交配品種の考え方は第69講 交配品種とクローン完全編)。どの畑で育てたものかは公開されていません。
日本酒蔵らしい造り
山形県ワイン酒造組合のワイナリー紹介で、HOCCAは自らを「日本酒造りを極めてきた蔵人の造るワイン」と説明しています。流行の自然派風や押しの強いタイプではなく、クリーンで繊細、食事に寄り添う味わいを目指して「王道の醸造スタイル」を実践している、という立場です。そのうえで「日本酒造りとの融合」を自分たちらしさに挙げています。2019年の説明では、シードルに日本酒造りで培った瓶内二次発酵の技術を応用したとしています。
ラインナップ
公式サイトの商品一覧(2026年11月1日確認)は次のとおりです。
- 品種名のワイン——『HOCCA シャルドネ』(公式は「ホッカワイナリーのエース・シャルドネ」と紹介、アルコール12%)、『ピノノワール』『シラー』『ピノグリ』『ツヴァイゲルト』(この4本は「販売終了」表示)
- ブレンド——『HOCCA ルージュ』(アルコール9%)、『HOCCA ブラン』
- 泡・ほか——『ペティアン』『キール』(いずれも「販売終了」表示)
- シードル——『HOCCA シードル』『シードル スィート』『シードル オーガニックレモン』
山形県ワイン酒造組合のGI山形認定リストには、『HOCCA Table Blanc』(ピノ・グリ/シャルドネ、1,900本、2023年2月認定)が載っています。2019年の説明によれば、最初のシードルは「JAPAN CIDRE AWARDS 2019」でテイスト部門二ツ星、ラベル部門三ツ星を得ました。価格は公式サイトに記載がなく、オンラインストアで確認する形です。りんごのお酒の基本は第91講 シードルとフルーツワイン完全編にまとめています。
訪ねる・買う
2026年11月1日時点で、公式サイトには見学・試飲・直売所・営業時間の案内がありません。購入の窓口は、公式サイトからリンクしているオンラインストア(hocca.stores.jp)です。山形県ワイン酒造組合の紹介ページには、会社名・所在地(鶴岡市上山添字神明前123)と電話番号(050-3385-0347)が載っています。現地を訪ねたい場合は、出かける前にここへ問い合わせてください。
庄内のワインのなかで
山形のワイナリーは、上山のタケダワイナリーなど内陸の村山・置賜に多く、山形県ワイン酒造組合の一覧で庄内エリアに載るのは鶴岡市の3軒です。同じ鶴岡市には、羽黒町松ケ岡のピノ・コッリーナ松ケ岡と、月山ワイン山ぶどう研究所があります。酒どころ庄内で、酒蔵が畑から始めた日本ワインとして、ほかの2軒とはまた違う入口になる造り手です。日本各地の産地の全体像は第9講 日本ワイン産地巡りでどうぞ。


