
オレンジ果汁は、一滴も入っていないWhat orange wine actually is
ワイン売り場で琥珀色のボトルを見かけて、「オレンジワイン? フルーツワインの一種かな」と手を止めたことはないでしょうか。答えははっきりしています——オレンジは一滴も入っていません(ややこしいことに、スペイン南部にはオレンジの果皮を漬け込むビノ・デ・ナランハという別種の酒精強化ワインが実在しますが、まったくの別物です)。第55講は、赤・白・ロゼに続く「第4の色」の正体を、丸ごと解きほぐす回です。
定義は一行で済みます。オレンジワインとは、白ぶどうを果皮ごと漬け込んで(=赤ワインのように醸して)造るワインのこと。ふつうの白ワインは、収穫したぶどうをすぐに搾って果汁だけを発酵させます。果皮も種も、搾ったあとは捨てる。オレンジワインはその工程をやめて、果汁と果皮を一緒に発酵させる——たったそれだけの違いです。すると、白ぶどうの皮に含まれる色素とフェノール類が液体に溶け出し、黄金色から琥珀色、濃いものでは紅茶のような茶褐色まで、色が深まっていきます。
ここで第53講のロゼと並べると、四つの色の関係がすっきり見えます。色を決めているのは「品種の色」と「果皮と過ごした時間」の掛け算にすぎません。
| 色 | 使うぶどう | 果皮との接触 | 渋み(タンニン) |
|---|---|---|---|
| 白 | 白ぶどう | ほぼゼロ(すぐ搾る) | ほとんどない |
| ロゼ | 黒ぶどう | 数時間〜1日程度 | ごく軽い |
| オレンジ | 白ぶどう | 数日〜数か月以上 | ある |
| 赤 | 黒ぶどう | 1〜4週間程度 | しっかりある |
※接触期間はいずれも一般的な目安。造り手や狙うスタイルによって幅があります。
つまりオレンジワインは、白ぶどうを赤ワインの作法で造ったもの。「白なのに渋い」「白なのに冷やしすぎない」という一見ちぐはぐな性格は、すべてここから来ています。ロゼが「黒ぶどうを白ワイン寄りに造ったもの」だとすれば、オレンジはそのちょうど裏返し。四つの色は対称の関係にあるわけです。
産地ではもっと古くから別の名で呼ばれてきました。ジョージアでは色からアンバー(琥珀)ワイン、イタリアでは製法からヴィーノ・マチェラート(醸したワイン)、英語圏ではスキンコンタクト・ワインとも。呼び名が乱立してきたのは、長らくこれが法律上のカテゴリーではなかったから。書類の上ではあくまで白ワインで、ラベルに「Orange Wine」と書かれていないことも多く、探すときは造り手や販売店の説明が頼りになります。
ただし、状況はここ10年で変わりつつあります。2015年、南アフリカがワイン・スピリッツ委員会の公式カテゴリーとして「スキン・マセレイテッド・ホワイト」を制定し、果皮とともに最低96時間発酵させることという要件を定めました。2017年にはカナダ・オンタリオ州のVQAが「スキン・ファーメンテッド・ホワイト」(果皮とともに最低10日間の発酵)で続きます。さらに2020年には、ジョージアの提案を受けたOIV(国際ブドウ・ワイン機構)が「マセラシオンを伴う白ワイン」という国際的な定義を採択します。要件は、白ぶどう品種のみを使うこと、果皮・果肉・種子(場合により果梗)と接触させること、そして浸漬期間が最低1か月であること。
国や産地の単位でも、少しずつ居場所ができつつあります。オーストリアには「オランジェヴァイン(Orangewein)」という表示のルールがあり——ただしこれは濁りや酸化的なニュアンスを持つワインを流通させるための表示規定で、醸し期間などの製法基準を定めたものではありません。スペインではカタルーニャのDOテラ・アルタが2022年に「ビ・ブリサット(Vi Brisat)」を規約に加え、地下のコンクリート槽で全房発酵させる土地の古い作法を、公式の呼称として復権させました。EU全体としては、いまも赤・白・ロゼと並ぶ独立したカテゴリーは存在しません——それぞれの産地の規約のなかで、少しずつ場所を与えられている段階です。
面白いのは、この公式定義と売り場の実態が一致していないことです。数日しか漬けていないワインも、日本の店頭では「オレンジワイン」として売られています。厳密に言えばOIVの定義には収まらない——けれど飲み手にとっては同じ棚の仲間。定義が現実に追いついていない、成長中のカテゴリーだと考えるのが実際的でしょう。
甕の底からきた——ジョージアと8000年Qvevri & the Georgian origin
「新しいトレンド」として紹介されがちなオレンジワインですが、実際にはおそらく人類がいちばん長く造ってきたスタイルです。舞台はコーカサス、第30講で歩いたジョージア。

ジョージアの伝統はクヴェヴリ(qvevri)——素焼きの巨大な甕に、収穫したぶどうを果皮も種も、しばしば梗ごと入れて蓋をし、自然に発酵させる方法です。東部カヘティでは甕を蔵の床に埋めますが、西ジョージアでは密閉して地上に置くという違いもあります(西部では「チュリ」とも呼ばれます)。温度調節も、酵母の添加も、基本的にはしません。地面そのものが冷却装置であり、甕の内側に塗られた蜜蝋が壁の役目を果たす。この製法は2013年、「古代ジョージアの伝統的クヴェヴリ製ワイン製法」という名でユネスコの無形文化遺産(代表一覧表)に登録されました。ワインの造り方そのものが人類の無形遺産に認められた、数少ない例です。ユネスコの記載によれば、果汁・果皮・果梗・種子をクヴェヴリに入れて密封し地中に埋め、発酵にはおよそ5〜6か月をかけるとされます。
「約8000年前から」という数字には、はっきりした根拠があります。トビリシ南方のガダチリリ・ゴラとシュラヴェリス・ゴラという新石器時代の遺跡から出土した土器を分析した2017年の研究(PNAS掲載)が、紀元前6000〜5800年ごろのぶどう酒の指標となる化学的痕跡(酒石酸など)を検出したのです。従来の定説を600〜1000年さかのぼらせた発見でした。ただし論文が主張しているのは「近東で最古の、化学分析による証拠」という限定つきの最古で、「世界最古のワイン」と言い切るものではありません。アルメニアのアレニ1洞窟には紀元前4100〜4000年ごろの圧搾機と発酵槽が現存し、こちらは「最古の醸造施設」——競い合う説というより、証拠の種類が違うのだと理解しておくのが正確です。土器の形が現代のクヴェヴリとよく似ている、という事実の重みは変わりません。
ジョージアには数百におよぶ土着品種があるとされ(数え方により400種から500種超まで諸説あります)、白ではルカツィテリがよく知られ、キシやムツヴァネ、西部のツォリコウリも醸しに使われます。醸し方には、国内で大きくふたつの流儀があると言われます。
カヘティ方式
東部カヘティ地方の伝統。果皮も種も梗まで一緒にクヴェヴリへ入れ、長く漬け込むとされる(半年ほどに及ぶ例も)。渋みと構造がしっかり出て、色も濃い。「これぞアンバーワイン」という骨太なスタイル。
イメレティ方式
西部イメレティ地方の流儀。果皮の一部だけを使い、梗は基本的に入れず、漬け込みも短めとされる(数週間規模)。渋みは穏やかで果実味が軽やか。同じ「醸し」でも印象はかなり違う。
同じ国のなかにこれだけの幅がある——この事実は、オレンジワインを味わうときの大事な前提です。「オレンジワインは渋くて重い」も「オレンジワインは軽やか」も、どちらも半分だけ正しい。スタイルの幅は、赤ワイン全体の幅と同じくらい広いと思っておくのが正解です。
フリウリの反逆——現代のオレンジワインが生まれた場所Friuli & Brda
古代からの伝統が、なぜ21世紀のワインバーの定番になったのか。転機は1990年代、イタリア北東部フリウリと、国境をまたいだスロヴェニアの丘で起きました。

震源地は、イタリア・フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州のオスラーヴィアという小さな集落です。1980年代、この地の造り手たちは近代的な設備で清潔・端正な白ワインを造り、高く評価されていました。ところがその頂点にいたヨスコ・グラヴネルが、1990年代に自らの造りを根本から疑い始めます。転機は1996年6月の二度の雹害——18ヘクタールの畑から収穫できたのは2トンに満たず、蔵の公式記録はこの年を「考え抜き、大きな変革を始めた年」と記しています。翌1997年に長期の果皮浸漬へ全面的に舵を切り、2000年5月にジョージアを訪ねてクヴェヴリを買い付けます。ところが甕が届いたのは11月、しかも11個のうち9個が輸送中に割れていた。甕での初仕込みは2001年の白、赤がクヴェヴリに移るのはさらに2006年のことでした。
近隣のスタニスラオ(スタンコ)・ラディコンも、蔵の公式年表が1995年を「転機」と記しています——リボッラを果皮とともに醸した年です。ただし「最初から亜硫酸を捨てた」わけではありません。浸漬期間を年々延ばしながら亜硫酸を段階的に減らし、2001年に半量と無添加を並べて比べ、全量を亜硫酸無添加にしたのは2002年。同じ年、彼は浸漬を3か月に統一し、いまも同蔵の目印である500ml・1000mlという変則的な瓶を導入しました。革命はある朝に起きたのではなく、7年かけて進んだわけです。
ふたりが軸に据えたのが、この土地の土着品種リボッラ・ジャッラ(スロヴェニア側ではレブラと呼ばれる同じ品種で、栽培面積はスロヴェニアのほうが広い)。高い酸を保ったまま熟すのが身上で、醸してこそ本領を発揮します。
しかし、制度は彼らに冷たかった。1990年代末からコッリオDOCの審査は、醸した白を落とし始めます——「色が典型的でない」「白ワインとして同じ香りが感じられない」。このタイプを評価する物差しが、当時の審査には存在しなかったのです。結果として造り手たちは格上のDOCを離れ、広域のヴェネツィア・ジューリアIGTへ自ら降りる道を選びました。グラヴネルのラベルも2000年代半ばを境にDOCからIGTへ変わります。ラディコンの息子サシャは、父がこの決断を最後まで「苦渋のもの」として抱えていたと語っています。格付けの階段は、ワインの価値の順番とは限らない——ラベルの読み方を扱った第41講に、これ以上ない実例です。
潮流は国境を越えて広がりました。同じ丘のスロヴェニア側ゴリシュカ・ブルダ、内陸のヴィパヴァ、石灰岩のカルスト——このあたりの造り手たちは、第38講で見たとおり、いまや世界のオレンジワインの中核を担っています。2000年代に入ると、その先へ。イタリア中南部やシチリア、オーストリア、スペイン、フランス、アメリカ西海岸やオーストラリア、そして日本まで——「醸す白」は、特定の産地の伝統というより世界共通の技法になりました。冒頭で触れたとおり、この技法にいち早く法的な定義を与えたのは南アフリカで、その規定づくりには現地の造り手も関わっています。「小さな自然派だけのもの」という印象とは裏腹に、英国のスーパーマーケット向けに量産されるオレンジワインすら登場しているのが現在地です。
そして物語は、始まった場所へ戻ってきました。2024年12月、コッリオDOCは総会で規約改正を可決し、「醸したぶどうのワイン(Vino da uve macerate)」という区分を自らの規約に組み込みます(発酵中の果皮浸漬は最低7日間。色調をパントーンの色見本で客観的に評価するという、他に例のない仕組みつき)。かつて醸した白を落とし続けた呼称が、30年近くを経て、それを迎え入れる側にまわったわけです。
造り方——「どれだけ漬けたか」がすべてを決めるSkin contact, step by step
オレンジワインの味わいを決める変数は、驚くほど少ないのです。品種、そして果皮と過ごした時間の長さ。この二つでほとんど説明がつきます。
- 房を潰して、果皮ごとタンクへここまでは赤ワインとまったく同じ手順です。除梗するかどうか、梗まで入れるかは造り手の判断(梗を入れると渋みと骨格が増します)。容器はクヴェヴリでも、木樽でも、ステンレスタンクでも構いません。容器がオレンジワインを定義するわけではないのです。
- 果皮と一緒に発酵させる(=スキンコンタクト)ここが分岐点。数日で搾れば、ほんのり色づいた「軽い醸し」。数週間なら渋みと香ばしさが乗り、数か月から半年に及べば、紅茶のように濃く力強い一本になります。同じ品種でも別のワインになる、と言っていいほどの差です。前述のOIVの定義が「最低1か月」を求めているのは、この分岐のどこかに線を引く必要があったからでしょう。
- 搾って、寝かせる果皮を離して熟成へ。果皮由来のフェノール類が「天然の防御」として働くため、亜硫酸(SO2)を最小限にとどめる造り手が多いのは事実です。ただし亜硫酸を通常どおり使う造り手もいます——オーストラリアの研究機関AWRIも、このスタイルは添加の有無どちらでも造られると整理しています。酸化に比較的強いことが、ナッツや紅茶を思わせる風味につながります。
※長さと仕上がりの関係はあくまで傾向。品種・温度・容器・造り手の意図で大きく変わります。「オレンジワインなのに色がほとんどオレンジでない」ことも珍しくありません。
ここで、いちばん多い誤解をほどいておきましょう。「オレンジワイン=自然派ワイン」ではありません。オレンジワインは醸造の技法、自然派は介入を減らす姿勢——測っている軸がそもそも違います。両者はよく重なりますが(自然派の造り手が果皮浸漬を好むのは事実です)、果皮浸漬をしない自然派の白も、亜硫酸をふつうに使う整然としたオレンジワインも、どちらも普通に存在します。この区別は第45講でも扱いました。醸造の原理そのものをもう一段掘りたい方は第47講をどうぞ。
もうひとつ。「オレンジワインは古代の造り方がそのまま生き残ったもの」という言い方も、正確ではありません。ジョージアのクヴェヴリ製法にはたしかに長い連続性がありますが、ソ連時代には大きく衰退し、1991年の独立後に復興したという断絶を挟んでいます。加えて、現代のオレンジワインの多くは甕ですらなく樽やステンレスタンクで、温度も衛生も現代の水準で管理された意図的な選択の産物です。古代の技法に着想を得た、現代の再解釈——そう捉えるのがいちばん実態に近いでしょう。
飲み方と買い方——「白の温度」で開けないServing & buying
オレンジワインは、白ワインのつもりで扱うと必ず損をします。覚えるべきは「白より高く、赤より低く」の一点です。
香りから。よく挙げられるのは、紅茶、干し杏、オレンジピール、ナッツ、蜂蜜、カモミール、そして乾いた花。味わいにはタンニン由来の渋みと、うま味に近い厚みがあります。とはいえAWRIの整理によれば、その収斂味は多くの場合、赤ワインより穏やか。「白なのに渋い」といっても、赤ワインほど強くはない、という感覚です。白ワインの華やかな果実味を期待して開けると「あれ?」となりますが、軽い赤ワインの親戚だと思って飲むと、途端に腑に落ちるはずです。表現の引き出しは第31講に。
温度は、『アンバー・レヴォリューション』の著者サイモン・ウルフがDecanter誌で示した目安が実用的です——浸漬の短い軽いタイプは10〜12℃、しっかり醸した重いタイプは12〜14℃から始めて、香りが開かなければ温度を上げていく。冷蔵庫から出したての7〜8℃で注ぐとタンニンがざらつき、香りが閉じてしまいます。逆に室温では膨らみすぎる。「白より高く、赤より低く」を、グラスの中で微調整すると考えてください(温度の考え方は第26講)。グラスは、細身の白ワイングラスよりボウルに膨らみのあるもの——ブルゴーニュ型や万能型のほうが香りが開きやすいとされます(第49講)。しっかり醸した若いタイプは、開けてから30分ほど置くと角が取れることが多いはずです。
料理との相性は、オレンジワインの最大の武器かもしれません。だしのうま味、発酵食品、スパイス——白では物足りず、赤では強すぎる、あの困った領域を一手に引き受けてくれます。きのこ料理、鶏の照り焼き、味噌や醤油を使った煮物、中華、カレーやエスニック、熟成チーズ。渋みが油をさばき、うま味が発酵の風味と手を組む理屈です(合わせの原則は第27講)。和食に強いというのは、日本の飲み手にとって決定的な利点でしょう。
そして日本。日本ワインとオレンジワインは、実はきわめて相性のいい組み合わせです。というのも主要品種の甲州が、淡く灰色がかった紅紫色の果皮を持つ白ワイン用品種だから。果皮ごと醸せば、ほんのりオレンジがかった色と、甲州らしい穏やかな渋みが同時に手に入ります。栃木のココ・ファーム・ワイナリーは2004年から「甲州 F.O.S.」——Fermented on Skins(果皮の上で発酵)の頭文字を名乗る一本を造り続けていますし、マンズワインの「甲州 醸し」のように、いまでは売り場の定番として並ぶものもあります。第9講で歩いた産地を訪ねると、蔵ごとの解釈の違いも楽しめます。
なお同じ文書は、「ヴァン・グリ/グリ・ワイン」はオレンジワインとは別物だと明記しています。灰色がかった色調を指す呼び名であって、醸しの有無で定義されるものではないからです。売り場で「グリ」と名のつく甲州を見かけたら、そこは区別して読んでください。ただしこれは業界の自主基準であって、法令ではありません。日本の酒税法や表示基準は、そもそもワインを色で分類していないのです。
ついでに正直なことを書いておくと、日本の甲州オレンジは浸漬が3〜5日ほどのものが中心で、第I章で触れたOIVの国際定義(最低1か月)には届きません。フリウリの2〜3か月ものとは、同じ呼び名でも別の飲み物だと思ったほうがいい。これは優劣の話ではなく、甲州の穏やかさに合う長さが選ばれているということです。淡い色と軽い渋みは、和食の食卓ではむしろ美点になります。
まず1本目なら
2,000〜3,500円前後の入門クラスから。浸漬が短めで色の淡いタイプ、あるいは日本の甲州の醸しが入りやすい入口です(マンズワインの「甲州 醸し」のように、この帯で買える国産の醸しもあります)。売り場では「スキンコンタクト」「醸し」「アンバー」の表示を探してください。
実力を確かめるなら
日本の売り場でいちばん品数が多いのは3,000〜4,000円台で、ジョージアのルカツィテリのクヴェヴリ仕込みなどが4,000円前後。ここから長期浸漬の骨格がはっきりします。草分けの銘柄は別格で、ラディコンは500mlで7,000円台、グラヴネルは1万5,000円前後が日本での実勢。まずは同じ産地の後続世代から入るのが現実的です。
ここに挙げた価格は2026年時点で日本の売り場に見られる目安で、ヴィンテージや為替で動きます。この手の「売り場に少ししか置いていないカテゴリー」は、第33講のとおり信頼できる輸入元と店で選ぶのがいちばん確実。濁りや澱があっても欠陥とはかぎらないスタイルなので、状態の判断も含めて売り場に相談してしまうのが早道です。用語の整理は用語辞典:オレンジワインにもまとめてあります。
よくある質問Questions
出発点のぶどうが逆です。ロゼは黒ぶどうから淡く色を取ったもの、オレンジは白ぶどうを果皮ごと醸したもの。ロゼが「赤を白のように造る」なら、オレンジは「白を赤のように造る」。色が近く見えても、造りの発想は正反対です。渋みはオレンジのほうがはっきり出ます。
違います。オレンジワインは醸造の技法、自然派は介入を減らす姿勢で、軸が別です。重なることは多いものの、果皮浸漬をしない自然派の白も、亜硫酸を通常どおり使う端正なオレンジワインもあります(研究機関AWRIも「添加の有無どちらでも造られる」と整理)。「オレンジ=自然派=濁っている」と決めつけないほうが、選択肢は広がります。なお亜硫酸が少ないから二日酔いしないという話には、確かな科学的裏づけはありません。
白より高く、赤より低い温度帯です。目安は軽いタイプで10〜12℃、しっかり醸した濃いタイプで12〜14℃から始め、香りが開かなければ手で温めるつもりで少し上げていく。キンキンに冷やすと渋みがざらつき、香りが閉じます。グラスはボウルの膨らんだ型を選び、若いものは30分ほど置くと開いてきます。
色は四つ、四つめがいちばん古いThe fourth colour
第55講の持ち帰りを一言で。オレンジワインとは「白ぶどう+果皮=琥珀色」という一行の話です。オレンジ果汁も、着色料も、特別な魔法もありません。あるのは、果皮と過ごした時間の長さだけ。それがジョージアでは8000年続き、1990年代のフリウリで現代に呼び戻され、いま世界中の食卓に並んでいます。「新しいワイン」の顔をした、いちばん古いワイン——これがこの色の正体です。
次の一本。 入門価格帯で2本買ってみてください。浸漬の短い淡いタイプと、しっかり醸した琥珀色のタイプ。同じ日に、淡いほうは12℃、濃いほうは14℃くらいで開けて、きのこのソテーや味噌を使った一皿と合わせてみる。「白なのに渋い」の意味が、説明ではなく体感で分かるはずです。そのとき、冷やしすぎないことだけは忘れずに。
次回は銘醸図鑑へ。ローヌ北部の断崖に張りつく畑、「コート・ロティ」。シラーに白ぶどうを少し混ぜて醸すという、これもまた常識の裏をゆく銘醸地を歩きます。
