1933年、牧丘の家族の蔵
三養醸造は、山梨市牧丘町窪平にある家族のワイナリーです。公式サイトによれば、創業は1933年。初代社長の山田八十八に始まり、2代目山田武雄、3代目山田稔、そしていまの代表は4代目の山田啓二さんです。当家には、1933年(昭和8年)に甲府税務署が発行した「葡萄酒製造免許指令書」が残っています。2026年10月4日の公式Instagramの投稿は「創業93年」を伝えていました。
社名は、宋代の詩人・蘇東坡が唱えた「三養訓」から。身の丈に落ち着いて心を養い、胃を楽にして気を養い、無駄遣いをやめて財を養う——その3つの「養」に、「美味しい葡萄酒を飲んで楽しく生きよう」という思いを込めたと公式サイトは書いています。
山田啓二さんは1975年、牧丘町生まれ。30歳を前に東京からUターンして家業のワイン造りに取り組み、栽培も醸造もほぼ独学で自分のスタイルを築いてきた人です。山梨大学認定ワイン科学士。妻の紀子さんはJSAワインエキスパートで栽培とPRを担い、弟の勝哉さんが醸造と栽培、父の稔さんも栽培と経理で現役と、公式サイトの「サンヨーの人々」には家族の顔が並びます。
南東南の斜面、約1.2haの自社農園
公式サイトによれば、三養醸造は整備中を含めて約1.2haの牧丘町の自社農園を管理し、甲州、マスカット・ベーリーA、シャルドネ、メルローのほか、複数の欧州系品種を育てています。畑は南東南に傾いていて、日がよく当たる。除草剤やボルドー液を使わない栽培を選び、土とぶどうづくりに取り組んでいると書かれています。創業以来、自社農園のぶどうを中心に山梨のぶどうを使い続けてきました。
醸造所は創業時からの古い蔵を修理・増築しながら使い、道具や資材は新しいものを積極的に入れているとのこと。いまは「より自然な造りの、体に沁み渡るワイン」が多くなっていると公式サイトは説明しています。
この蔵を象徴するのがフィールドブレンドです。複数の欧州系の黒ぶどうと白ぶどうを同じ畑に混ぜて植え、一緒に仕込む。毎年少しずつ品種と造りが変わる、ここにしかないワインだと紹介されています。山梨県公式観光サイトでは、フィールドブレンドの『窪平』が代表ワインに挙げられていました。
主な銘柄と参考価格
公式オンラインショップ(2026年11月1日時点)に並ぶ主な銘柄です。価格は750mlの税込で参考、在庫切れのものも含みます。
- 『mäkioka2024』——自社農園のメルロー(48%)を主体に、アルモ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンなど12品種を混醸。果梗を残して醸したと醸造家のコメントにあります。2,420円(参考)
- 『mäkiokaペティヤン2025』——カベルネ・ソーヴィニヨン(39%)とアルモ・ノワール(32%)を主体に11品種を混醸した微発泡。酸化防止剤無添加。2,860円(参考)
- 『甲州トリオ2024』『甲州デュオ2024』——県内の3人と2人の栽培者の甲州で、ほぼ同じ醸造設計で仕込んだ飲み比べの2本。各1,980円(参考)
- 『甲州2025』——牧丘町の自社農園の甲州。2,200円(参考)
- 『マスカットベーリーA 2025』——自社農園のマスカット・ベーリーA。2,090円(参考)
- 『デラウェア2024』——笛吹市境川町産のデラウェア。2,420円(参考)
ワイン名の「mäki」はフィンランド語で「丘」の意味で、牧丘で育てた欧州系ぶどうのワインに付けたと説明されています。ほかに、甲州ぶどうの栽培農家を支える『にごり甲州』『オレンジ甲州』、甲斐ノワールの微発泡『マダムノワールペティヤン』、シャインマスカットの微発泡も並びます。多くのラベルを、猫好きのイラストレーターネコユウコさんが描いています。
訪ねる——常時4種の試飲と、看板の猫たち
公式サイトによれば、売店では常時4種類の試飲ができます。「チャリティ試飲」として動物保護募金への協力をお願いしているとあり、決まった料金は書かれていません。営業は9:00〜17:00、不定休。代々犬や猫と暮らしてきた家で、いまも犬のシロと複数の猫が暮らし、地元の動物保護団体の活動を支援しています。
山梨県公式観光サイト(2022年10月27日時点の情報)では、ワイナリー見学はなし、テイスティングあり、直営ショップありとされ、普通車4台の駐車場があり、マイクロバスも停められるとのこと。来店の際は事前に電話かメールで連絡するよう案内しています。簡単な英語での対応ができ、英語表記のワインリストもあると書かれています。
アクセスは、JR中央本線塩山駅北口からタクシーで約10分、中央自動車道勝沼ICから約20分。電話は0553-35-2108です。条件は変わることがあります。出かける前に電話か公式サイトで確かめてください。
牧丘の造り手とあわせて
牧丘町には、倉科にカンティーナ・ヒロ、千野々宮に四恩醸造があり、山梨市の上神内川にはサントネージュワイン。90年を超える家族の蔵が、自社農園の十数品種を一緒に仕込むという新しい試みを続けているのが三養醸造です。山梨全体の産地像は産地:山梨と第70講 山梨完全編に、ワイナリーを訪ねる準備は第51講にまとめています。


