幼稚園の自然教育から生まれたワイナリー
四恩醸造(四恩醸造株式会社)は、山梨県山梨市牧丘町(まきおかちょう)千野々宮にあるワイナリーです。甲府盆地の北東、山梨市の北部にあたる牧丘町は、巨峰の産地として知られる土地です。
その始まりは、少し変わっています。公式サイトによれば、1986年、横浜の学校法人四恩学園が、自然教育の拠点として牧丘町でぶどうの栽培を始めました。公式サイトは自らを「横浜の幼稚園の自然教育施設として誕生」したと紹介しています。子どもたちが自然にふれる場だったぶどう畑から、2007年にワイナリーが生まれました。
公式サイトによれば、事務所は昔懐かしい古民家です。かつての訪問記にも、看板がなければ民家にしか見えない、と書かれています。大きな観光ワイナリーとは対照的な、小さな造り手です。
料理に合う辛口と、花のラベル
日本ワイナリー協会の紹介によれば、ワインの原料は牧丘町の巨峰と、地元・峡東地区の契約農家のぶどうです。自社で育てたぶどうも使い、白ワインの一部は「自社管理畑の白ブドウ」から造られています。設備はステンレスタンクと樽。公式サイトは料理に合う辛口を得意とし、年に6種類のワインと、ぶどうジュース1種類を造っていると説明しています。
ワインのラベルは、すべて花の絵です。公式の商品ページには、次のような銘柄が並びます(容量はいずれも750ml、スクリューキャップ)。
- マーガレット(白)——笛吹市・甲州市産の甲州。シュール・リー(澱の上で寝かせる製法)により、タンクで5か月熟成させた、極辛口の白
- カサブランカ(白)——甲州を主体に、プティ・マンサン、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネを合わせた白
- 希望(白)——山梨市産のソーヴィニヨン・ブラン、プティ・マンサン、シャルドネ
- 向日葵(ロゼ)——山梨県産の巨峰
- 薔薇(赤)——マスカット・ベーリーA
- カサブランカ(赤)——マスカット・ベーリーAとメルロー
- 紫陽花(赤)——2025年6月に出た新しい赤。メルロー、ベーリー・アリカントA、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンを笛吹市と牧丘町で育て、タンクで醸したあと樽で熟成
アルコール度数は12〜13%ほどと、どれも穏やかです。甲州のシュール・リーの白は刺身や塩焼きの魚、巨峰のロゼは揚げ物や中華の前菜、ベーリーAの赤は醤油味の煮物や焼き鳥のたれ——という具合に、ふだんの食卓に合わせやすい顔ぶれです。和食との合わせ方は、第71講 和食とワイン完全編も参考にしてください。
評価と、造り手の歩み
2020年、四恩醸造は「日本ワイナリーアワード2020」でコニサーズワイナリーに選ばれたと、公式サイトで報告しています。
2010年代には、亜硫酸を加えない微発泡の甲州「クレマチス」など、自然派の造りで愛好家に知られた時期がありました。販売店や雑誌の記事によれば、当時の醸造を担った小林剛士さんは2015年のヴィンテージを最後に独立し、自身の造り手を立ち上げています。現在のラインナップは、上に挙げた花のシリーズです。いまの醸造責任者の名前や、現在の造りでの亜硫酸の扱いは、公式サイトでは公表されていません。
訪ねる前に・買える場所
日本ワイナリー協会の掲載では、現在、ワイナリー訪問は受け付けていません。紹介文には、年4回ほどのイベントのときだけ見学できる、製造中心の営業と書かれています。直売所や試飲、営業時間の案内も、公式サイトにはありません。
ワインは、公式サイトの取扱店一覧に載っている酒販店で買えます。地元・山梨市では、笛吹川フルーツ公園の中にある売店「さんさんマルシェ」も取扱店に挙がっています。問い合わせは公式サイトのメールフォームから。公式サイトには、作業中で電話に出られないことが多いと書かれています。
同じ山梨市の造り手には、金井醸造場(CANEY WINE)などがあります。山梨の産地全体は第70講 山梨完全編と産地:山梨へ。

