余市町で3番目、「ワイン特区」の第一号
リタファーム&ワイナリーは、北海道余市町の登(のぼり)地区にある造り手です。運営はリタファーム&ワイナリー合同会社。公式サイトは自らを、余市ワイン、ドメーヌ・タカヒコに続く余市町で3番目のワイナリーと紹介しています。北海道庁の資料(2026年2月現在)によれば、2013年に醸造免許を取り、余市町の「ワイン特区」を活用して開かれた第一号でした。
名前の「リタ」は、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝の妻、竹鶴リタから取られています。余市町のワインツーリズムのサイト(英語版)によれば、菅原さん夫妻の隣人がリタの世話をしていた縁があったそうです。ウイスキーの町として知られる余市で、その名前をワインに受け継いだ造り手です。
公式サイトの沿革は、ワイナリーより前から始まります。
- 1998年── 余市町登町2016番地に「余市リタファーム」開園
- 2009年── 登町1824番地のりんご畑だった斜面3haを整地
- 2010〜2011年── 自社圃場に2ha、続けて1haを植栽。2011年に果実酒製造免許を申請
- 2013年6月── 余市町内で3番目となるワイナリーが完成し、免許を取得
- 2014年3月── 自社畑のワインを初出荷
- 2016年── 4月にワインショップ「バラッド オブ ヨイチ」を開き、同じ年にカリフォルニア州への輸出を開始
- 2017年── フランス、ハワイ州への輸出を開始
造り手は、余市生まれの菅原由利子さん
醸造を担うのは、余市町出身の菅原由利子さんです。北海道庁の資料は「フランスで醸造を学んだ」オーナーとして紹介し、余市町のワインツーリズムのサイトは、ワインの輸入の仕事をしていたこと、シャンパーニュで6回仕込みを経験したことを伝えています。日本ワイナリー協会のサイトでは代表は菅原誠人さんで、公式サイトは「夫婦二人で営む小さなワイナリー」と書いています。
北海道庁の資料によれば、ワイナリーを開く予定のぶどう農家から仕込みを引き受ける受託醸造も行ってきました。2024年の「日本ワイナリーアワード」では、余市町内で入賞した10か所のワイナリーのひとつに挙がっています(広報よいち 2024年7月号)。
海へ風が抜ける3ha、「風のヴィンヤード」
自社畑は「風のヴィンヤード」。公式サイトによれば、余市町登地区の最南部にある約3haの緩やかな南斜面で、南からの風が余市湾へ吹き抜けることからこの名が付きました。後志総合振興局の紹介ページは、登地区でもっとも日照量が多いとされる畑だと書いています。
育てているのはシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、メルロー(北海道庁の資料)。後志総合振興局の紹介ページには、ピノ・グリとピノ・ムニエも並んでいます。栽培は低農薬で、公式サイトは、害虫と呼ばれる虫とも共存し、畑の生態系をできるだけ崩さない畑づくりに取り組んでいると書いています。
野生酵母と重力で、ストレスをかけずに
公式サイトによれば、専用品種のワインはすべて自社畑のぶどう100%。テロワールを映すために野生酵母による自然発酵で仕込み、瓶内二次発酵のスパークリングも野生酵母で発酵させます。ワインの移動はできるだけ重力だけで行い、瓶詰めも重力式の充填機を使います。北海道庁の資料は、酸化防止剤もできる限り減らした造りと紹介しています。
『風のヴィンヤード』と、余市のぶどうで造る『十六夜』『花火』
自社畑の看板は『風のヴィンヤード』のシリーズです。公式サイトによれば、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2023で『風のヴィンヤード ピノ・ノワール 2019』が銀賞、『風のヴィンヤード ソーヴィニヨン・ブラン 2021』が銅賞を受けました。瓶内二次発酵の泡は『キュベリタ』。10周年を記念した『キュベリタ・ノンデゴルジュ ソーヴィニヨン・ブラン 2020』は、北斜面のソーヴィニヨン・ブランを例年より2週間早く摘んだ一本で、750mlで2,500円でした。
余市のぶどうを使った、日常に開けるラインもあります。公式サイトに載る2022年製造分のリストでは、白の『十六夜』がデラウェア、ナイアガラ、小樽市塩谷で見つかった品種「旅路」の3種で各1,980円。泡の『花火』は余市町の花火大会にちなんだ名で、ナイアガラ、旅路、ニューマスカットを5〜6気圧の瓶内二次発酵で仕上げ、澱を残したノンデゴルジュマンで各2,400円。デラウェアを数日醸してから古樽で発酵させたオレンジワイン『タルデラ・バタフライ』(2,300円)もありました。いずれも掲載時点で完売と表示されており、価格は当時のものです。
見学はなし。買うなら余市駅前と酒販店で
公式サイトには「見学はお断りしております」「ワイナリーでのワイン販売は行っておりません」とあり、北海道庁の資料も直売所なし・訪問見学不可です。畑や醸造所を目当てに訪ねるのは避けてください。
余市町内でボトルを手に取れるのは、公式サイトによれば駅前の柿崎商店と、JR余市駅内のエルラプラザ。ほかは各地の酒販店が扱っています。公式サイトの問い合わせフォームは使えない状態で、連絡はメールでと案内されています。
公式サイトのトップには、もうひとつ大きな告知があります。海外のワイナリーを買収することになり、これまで支えてくれたスタッフに畑を贈ったこと、そしてスタッフが醸すワインは2026年からになること。風のヴィンヤードのぶどうが、これからどんな名前とラベルで出てくるのかは、公式サイトでの続報を待つことになります。
同じ登地区の造り手は、ツヴァイゲルトでロゼを造る登醸造、ピノ・ノワールのドメーヌ・タカヒコ。余市を含む北海道の産地の全体像は産地:北海道と第68講 北海道完全編でまとめています。
