余市・登の谷で、40年分の畑を受け継ぐ
キャメルファームワイナリーは、北海道余市町の登(のぼり)地区に畑と醸造所を持つ造り手です。運営は株式会社キャメルファーム。公式サイトの会社概要によれば、設立は2014年4月14日、代表取締役は尾田信夫さん、関連企業としてキャメル珈琲グループの名前が挙がっています。
始まりは、ひとりのぶどう栽培家の畑でした。北海道庁のワイナリー紹介(令和8年2月現在)によれば、1980年代から余市町登で醸造用品種を育ててきた藤本毅さんから、畑とともに長年の栽培の技術や知恵を受け継いで設立されました。2017年には、13.5haの畑に隣接する醸造所が完成し、同じ年に醸造免許を取っています。いまの保有面積は16ha、醸造所の床面積は1,372.23㎡(415.09坪)です。
設立前から関わってきたのが、イタリアの醸造家リカルド・コタレッラ氏。道の資料は、コタレッラ氏の助言のもと、冷涼な余市の気候を表したスパークリングワインを中心に、自社畑・自社醸造で世界基準のワインを目指していると紹介しています。公式サイトも、醸造所の建物や設備の設計に「イタリアで培われたノウハウ」を注いだと書いています。2023年12月の Discover Japan の記事では、コタレッラ氏のもとで醸造を担うアンジェロ・トタロさんが、ぶどうの熟し方に合わせて収穫を2〜3回に分けるようにしたこと、年間の生産量が約10万本であることが紹介されていました。
標高45〜55m、日本海から4kmの谷
公式サイトによれば、畑の標高は45〜55m。北へ4kmほどで日本海に出る位置にあり、三方を山に囲まれ、山から海へ南北に流れる余市川と登川に挟まれた谷です。土壌は凝灰質の砂岩と粘土が混ざっています。仕立ては垣根です。
余市は北緯43度。公式サイトは、アメリン&ウィンクラーの気候区分でシャンパーニュ地方などと同じ「RegionⅠ」に入る冷涼な産地だと説明しています。一方で、対馬海流の影響で北海道の中では比較的温暖。冬は雪が多いものの凍害を受けにくく、梅雨や台風の影響も受けにくいとされます。公式サイトは、この土地がきれいな酸味のある味わいをもたらすと書いています。
8品種と、泡を中心にしたワイン
公式サイトに並ぶ主な品種は8つ。白はケルナー(樹齢の高い樹が多く、主に白ワインに)、バッカス(樹齢40年を超える樹もあり、スパークリングなどに)、シャルドネ(瓶内二次発酵のスパークリングに)、試験栽培中のピノ・ブラン。黒はレジェント、ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルト、ピノ・ノワールです。ドイツやオーストリアで育つ品種が多く、公式サイトは樹齢の高いケルナーやバッカスがワインに深みや複雑さを与えるとしています。
販売を担うヴィナルテには、15銘柄が並んでいます(2026年11月時点の表示)。泡では『レガミ ブリュット』『ケルナー ブリュット』『ブラウフレンキッシュ ブリュットナチュレ・ドサージュゼロ』がいずれも3,850円、『レジェント ブリュット』が3,630円。瓶内二次発酵の『キャメルブリュット メトード・トラディショネル キュヴェ・バリック ブラン・ド・ノワール』が8,250円です。スティルでは『ピノ・ノワール プライベート・リザーブ』が10,780円、『ブラウフレンキッシュ プライベート・リザーブ』と『シャルドネ』が6,600円、藤本さんの名を冠した『ピノ・ノワール フジモトヴィンヤード』が4,620円。乾杯の一本なら3,000円台の泡、記念日に開けるならプライベート・リザーブ、と選び分けられます。
国際コンクールで続く評価
公式サイトの受賞歴には、ワイナリーとしてベルリン・インターナショナルワインコンペティション2019「ジャパン・ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」、ニューヨーク・インターナショナル・ワイン・コンペティション2019「ジャパン・スパークリング・ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」が並びます。
とくに評価が続くのが『ブラウフレンキッシュ プライベート・リザーブ』です。デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)で2020年ヴィンテージがゴールド、2022年ヴィンテージが97点でプラチナ(2024年)、2026年7月のお知らせでは2023年ヴィンテージのゴールドを伝えています。Japan Wine Challenge 2025では『ケルナー ブリュット 2024』と『ツヴァイゲルト フリッツァンテ ロッソ セッコ 2024』がゴールドでした。
畑は訪ねられない。グラスで出会う造り手
訪ねる前に知っておきたいのは、いまはワイナリーを開けていないことです。以前はショップとカフェがあり、ツアーや有料テイスティングも行っていましたが、公式サイトのお知らせによれば2024年2月23日から「運営体制見直しのため」shop&caféを臨時休業し、ボトル販売・カフェ・ツアー・有料テイスティングのすべてを休止しました。再開は未定です。北海道庁のワイナリー紹介(令和8年2月現在)でも、直売所なし・訪問見学不可とされています。
例外は秋の収穫祭です。2025年は9月20日に開かれ、申し込みフォームから参加を募り、収穫のあとはワインで乾杯する内容でした。開催の有無は年ごとに公式サイトのお知らせで確かめてください。
ワインは、2024年12月に公式オンラインショップを閉じてから、販売担当のヴィナルテで扱っています。道の資料では購入方法を酒販店・百貨店・ヴィナルテとしており、2024年の公式お知らせではカルディコーヒーファームも取扱先に挙げていました。
同じ登の谷には、モンガク谷ワイナリーやドメーヌ・タカヒコがあります。キャメルファームで3ヴィンテージの醸造に関わった井坂真介さんは、いま北斗市でDue Punti Vineyardsを営んでいます。北海道の産地の全体像は産地:北海道と第68講 北海道完全編でまとめています。
