和(かのう)地区の小さなワイナリー
ナゴミ・ヴィンヤーズは、長野県東御市和3420-10にあるワイナリーです。運営はナゴミ・ヴィンヤーズ合同会社。公式サイトの年表は短く、2010年に東御市でぶどうの栽培を始め、2018年に醸造免許を取得してワイナリーを設立、2019年にファーストヴィンテージを発売した、と記しています。
和地区は、ヴィラデストワイナリーも所在する東御市の地区です。地名の「和」は「かのう」と読みます。オランダの輸入元の紹介では、ワイナリー名の「ナゴミ」はこの「和」の字の別の読み方(なごみ=和み)から取った、と説明されています。
造り手について、公式サイトは名前を出していません。英国のワインジャーナリスト、ジェイミー・グッド氏の記事(2020年)や輸入元の紹介では、Toshihiro Ike(トシヒロ・イケ)氏と妻のKazumi(カズミ)氏が営むワイナリーとされています(名前の漢字表記は公式で確認できませんでした)。これらの記事によれば、トシヒロ氏は東京出身で、通信ネットワークのエンジニアとして働いたのち、2010年に東御市へ移り住みました。グッド氏の記事には、移住を考えて初めて東御市を訪ねたとき、市内のワイナリーはヴィラデストワイナリーの1軒だけだった、という本人の話も紹介されています。
栽培の始まりと、各資料の年の違い
ぶどう栽培を始めた年は、資料によって書き方が違います。公式サイトは「2010年 東御市にてぶどうの栽培を開始」。グッド氏の記事では、最初は生食用の巨峰から始め、2012年に農家から借りた土地へソーヴィニヨン・ブランを植えたとあります。オランダの輸入元は、ワイン用ぶどうの栽培開始を2013年、委託醸造の開始を2016年としています。生食用ぶどうから始め、数年かけてワイン用品種に広げていった、という流れは各資料で共通しています。
2018年に自前の醸造所ができる前のワインは、委託醸造で造られていました。公式サイトには2017ヴィンテージの取扱店リストへのリンクが残っており、2018ヴィンテージからはコルク栓に切り替えたと書かれています。
畑と品種
公式サイトの各銘柄の説明では、原料の多くが「東御市和(かのう)地区の自社畑」産とされています。2018年のピノ・ノワールは、和の上ノ山地区の自社畑と明記されています。畑の広さは、グッド氏の記事(2020年)と輸入元の紹介でともに約2.5ヘクタール。輸入元は、南西向きのゆるやかな斜面で、土は粘土質だと紹介しています。グッド氏の記事では、当時の収穫量は年に約4トン、生産量は約6,000本でした。
銘柄の原料欄から読み取れる品種は、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング(2019年のGRASSHOPPERに使用)と、生食用の巨峰、ナガノパープル、シャインマスカットです。長野県上田地域振興局のリーフレット(2023年)は、シャルドネ・メルロー・ピノ・ノワールといった欧州系品種は100%自社畑産と紹介していますが、公式サイトのメルロー単体の銘柄は確認できませんでした。2018年には和地区のりんごで造ったシードル(500ml)も出しています。
2025年の「ta.to chardonnay」は、自社畑のシャルドネに立科町で育った買いぶどうのシャルドネとソーヴィニヨン・ブランを合わせたものです。2024年は相方が高山村のシャルドネで、産地の頭文字(立科町+東御市/高山村+東御市)から「ta.to」と名付けたと説明されています。立科町には、りんご農家が始めたたてしなップルワイナリーもあります。
造りの考え方
公式サイトの銘柄データには、毎回「酵母:野生酵母」「補糖・補酸:なし」「清澄剤:使用せず」「濾過:なし」といった項目が並び、亜硫酸の量も銘柄ごとに「少量添加」「なし」と書き分けられています。ピノ・ノワールは機械を使わずに手で除梗し、樽で約1年熟成させたのち、さらに瓶で寝かせてから出荷する年が多いようです。房ごとタンクに入れて発酵を始めるマセラシオン・カルボニック(MC)で仕込んだ「Pinot Noir MC」もあります。輸入元の紹介では、ポンプではなく重力で果汁を動かし、畑と醸造所の2回、手で選果しているとされています。
野生酵母や亜硫酸を控える造りの考え方は、第45講 自然派ワインと用語:自然派ワインで整理しています。
主な銘柄
公式サイトのリリース一覧(2018〜2025年)に載る主なシリーズです。価格は公式の税抜表示で、2026年10月時点ではほとんどが「SOLD OUT」です。
- Pinot Noir(3,600〜4,200円+税)── 自社畑のピノ・ノワール。2021年はベリーの香りに腐葉土やきのこの香りが重なる、と紹介されています。
- Chardonnay Oak(3,200〜4,000円+税)── 樽で野生酵母発酵・約1年の樽熟成。2022年は全房でプレスしています。
- GRASSHOPPER(2,200〜3,000円+税)── 果皮と一緒に漬け込んだソーヴィニヨン・ブランが主体の白。年によってオレンジワイン寄りの色合いになり、王冠で栓をしています。
- Labrusca Frizzante(1,800〜2,200円+税)── 巨峰やナガノパープルなど生食用ぶどうの微発泡。2025年はナガノパープル主体にピノ・ノワールを加えています。
- ta.to chardonnay(2024年は2,600円+税)── 県内2産地のぶどうを合わせた気軽な白。
- Veronica Persica Extra Brut Rosé(3,600円+税)── 2020年に瓶詰めし、2025年7月に澱を抜いたロゼの泡。名前はオオイヌノフグリの学名です。
2026年10月時点の公式サイトのトップには「Labrusca Frizzante 2020」と「今後のリリース予定について」の告知が出ていますが、リリース予定のページは開けませんでした。パリの日本ワイン試飲会(Salon des Vins Japonais)でピノ・ノワールがフランスの評論家に評価された、と旅行誌PAPERSKYの記事(2026年)は伝えています。
訪ねる前に
公式サイトには、見学・試飲・営業日の案内がありません。長野県上田地域振興局のリーフレット(2023年1月31日現在の情報)では、見学は可(要予約)、試飲は不可とされています。訪ねたいときは、電話・FAX(0268-80-9100)かメール(shop@nagomivineyards.jp)で事前に問い合わせてください。最寄り駅や駐車場の案内も公式では確認できませんでした。訪問の心得は第51講 ワイナリー訪問へ。
ワインを確実に手に入れるなら、公式サイトに載る酒販店を頼るのが近道です。東御市内では「とうみワイン&ビアミュージアム」「東御ワインチャペル」「酒乃うちやま」「関酒店」などが挙がっています。同じ東御市のリュードヴァンやドメーヌ・ナカジマと合わせて、千曲川沿いの小さな造り手を巡るのも楽しいでしょう。長野の産地全体は産地:長野と第72講 長野完全編で整理しています。

