牡蠣の季節に、海を見ながら開ける一本
南三陸ワイナリーのShop & Kitchenは、テーブル席から志津川湾が見えます。公式サイトのメニューには牡蠣のバターパテが並び、2026年10月に発売された白『VERDELEE 2026』は、これからシーズンを迎える牡蠣をはじめ魚介に合う一本と案内されています。屋外のテラスでも、海を眺めながらグラスを傾けられます。
協力隊から始まったプロジェクト
公式サイトの沿革によれば、町内で最初にぶどうが植えられたのは2016年春です。秋保ワイナリーを運営する仙台秋保醸造所から寄贈された100本が、入谷地区に根を下ろしました。翌2017年4月、南三陸町地域おこし協力隊による南三陸ワインプロジェクトが始まり、同じ春に700本を植えています。この年の夏からは秋保ワイナリーで栽培と醸造の研修を受け、委託醸造で約300本のスパークリングワインを造りました。
代表の佐々木道彦さんは、大手楽器メーカーで新規事業の開発に携わった人物です。公式サイトと宮城県の記事によれば、震災後に三陸沿岸を訪れたことをきっかけに2014年に仙台市へ移り、2019年1月に協力隊に着任、同年2月に南三陸ワイナリー株式会社を設立しました。J.S.A.認定ソムリエでもあります。
会社を設立した2019年、委託醸造の『DELAWARE 2018』が日本ワインコンクール2019で奨励賞を受けています。沿革はこれを、宮城県で同コンクール初の受賞と記します。入谷地区のシャルドネの初収穫は同じ年の10月でした。
2020年10月、水産加工場だった建物で開業
ワイナリーは2020年10月、志津川地区に開かれました。2022年3月のBusiness Insider Japanの記事によれば、建物は震災後に仮設の水産加工場として使われたプレハブを借りて改修したものです。錆落としや塗装など、できる作業は自分たちで進め、海の見えるテラスはクラウドファンディングの寄付で新築したと伝えられています。ショップには南三陸杉の家具が置かれています。
公式の沿革には、2023年の第43回東北建築賞作品賞、2024年度のグッドデザイン・ベスト100も並びます。
入谷、田束山、そして山形の畑
ぶどう畑は3つの土地に広がりました。始まりの入谷地区には童子山の葡萄畑があります。2020年4月には町の北端、気仙沼市にまたがる田束山(たつがねさん)に約2,300本を植え、同年5月には山形県上山市にも約500本を植えました。公式サイトは田束山を選んだ理由に、昼夜の寒暖差、日当たり、風通しに加えて、志津川湾を一望できる眺めを挙げています。
2026年11月時点のオンラインショップで、産地が書かれた銘柄の多くは山形県産のぶどうです。デラウェアは山形市本沢地区、マスカット・ベーリーAとヴェルデレーは上山市、甲州は鶴岡市、シャルドネは寒河江市と続きます。上山市の自社管理畑からはソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・ソーヴィニヨンが届きます。公式サイトは「南三陸産ブドウ100%のワインを1本でも多く」造ることを掲げており、町内のぶどうを使う銘柄としては、童子山のシャルドネをフレンチオーク樽で3か月熟成させた『MINAMISANRIKU CHARDONNAY 2023』があります。シードルは入谷地区のフジとサワールージュから造ります。
牡蠣棚で寝かせる海中熟成
本格的に始めたのは2020年2月で、相手は南三陸町戸倉の漁師です。戸倉の牡蠣養殖は、2016年に日本で初めてASC認証を取得しました。ボトルは志津川湾の牡蠣棚に吊るされます。公式サイトは、海中では音が微振動として広く届き、熟成が早まると言われている、と説明しています。
2026年7月に引き上げた分は、7月31日に発売されました。瓶には貝やフジツボが付いていることがあります。
- 志津川湾海中熟成ワイン CHARDONNAY 2023── 2025年11月から2026年7月まで8か月、海中で熟成。5,500円(税込)。
- 志津川湾海中熟成ワイン MERLOT / YAMA SAUVIGNON── 樽で23か月の後、海中で7か月。6,600円(税込)。
2年連続の『DELAWARE ORANGE』
デラウェアを果皮ごと醸したオレンジワインが、『DELAWARE ORANGE』です。第12回サクラアワード2025で2024年産が最高賞のダイヤモンドトロフィーを受け、第13回サクラアワード2026では2025年産が再び同じ賞を受けました。2026年の受賞は同じ一本で全8賞にのぼります。ぶどうは山形市本沢地区産で、公式ショップは合わせる料理にタコのマリネ、餃子、ヤンニョムチキンを挙げています。2026年11月7日時点の表示は2,420円(税込)で、在庫なしでした。
同じ2026年のサクラアワードでは、山形県天童市産のメルローを主体にした『MERLOT / YAMA SAUVIGNON』がダブルゴールドを受けています。
ラベルのキリコ
ラベルの図柄は、神社の神主が始めたとされるキリコ(切り紙)の創作です。南三陸では2010年から、町の人の宝物や思い出を切り紙で表して軒先に飾る取り組みが行われてきました。公式サイトによれば、ラベルは志津川の上山八幡宮の禰宜、工藤真弓さんが実際に切り、毎年その年のワインにまつわる物語を図柄にしています。
訪ねる前に
Shop & Kitchenの営業は水〜金が13:00〜18:00、土日祝が10:00〜18:00、定休は月・火です。祝日に営業した場合は翌営業日が振替休業になります。2026年11月8日(日)は「ブドウ畑でワイン会」のため14:00〜18:00の営業です。
醸造棟内のツアーは約40分で1人1,000円、小学生以下は無料です。前日までの予約が必要で、作業やイベントの都合で開催できない日もあります。ランチとディナーは予約制です。駐車場の案内は確認できませんでした。
宮城の産地については産地:宮城に、日本全体の見取り図は第9講 日本ワイン産地巡りにまとめています。
