広島から蘭越へ、ミュラーに魅せられた造り手
松原農園をひらいたのは松原研二さんです。北海道庁「北海道内のワイナリー紹介」(後志エリア、R8.2現在)によれば、広島の醸造メーカーに勤めていた松原さんは、北海道のミュラー・トゥルガウのワインに魅せられて移住しました。小樽でワイン造りの経験を積んだのち、1993年、磯谷郡蘭越町で葡萄栽培家として独立しています。
同じ資料は、1995年が初ヴィンテージで、松原農園を「家族経営ワイナリーを目指した道内の先駆け」と紹介しています。公式サイトのトップページには、初めてワインを出荷できたのが1996年、そこから30年にわたってワインを届けてきたと書かれています。長いあいだ、ぶどうは自分で育て、醸造は外部に委ねる形でした。
転機は2014年秋です。公式サイトは「念願の醸造場が完成し」、ワイナリーとして再スタートしたと記しています。公式サイトのトップページによれば、この新しい醸造場から数えて第11号酒となる2024年産のミュラー・トゥルガウが、今年の春にリリースされています。
1.3haの畑と、二つの品種
北海道庁の資料によれば、栽培面積は1.3ha、主な醸造品種はミュラー・トゥルガウとナイアガラです。公式サイトは、自家生産したぶどうだけを原料にしていると書いています。農園ではアスパラガスも育てており、季節にはワインと一緒に送る「ワイン&アスパラSet」も出しています。
公式サイトによれば、2024年産ミュラー・トゥルガウは予約割引が終わったあとも在庫が十分にあり、本数の制限なく受け付けているとのこと。一方で、ほかの商品は在庫が少ないため、申し込みの前にメールや電話で確かめるよう求めています。
「ホームワイン」という目標と、主な銘柄
公式サイトで松原さんが掲げているのは、「今までと同じ、飲みあきしない良質のテーブルワイン」です。派手ではなく、料理の邪魔をせず、食卓を陰で支えるワイン。どんな料理にも、どんな好みの人にも合う懐の深さを目指す、と書かれています。さらに今の目標を「ホームワイン」と言い表し、飲む人の普通の日常をちょっと彩る、その家の懐かしい味のワインになることを考えている、と続けています。
いま出ている主な銘柄は次のとおりです(公式サイトのトップページ、2026年11月1日確認)。
- 松原農園 ミュラー・トゥルガウ:2024年産。公式サイトでは春のリリースと案内。
- ミュラー・スパークリング:フルサイズとハーフサイズ。どちらも3年貯蔵。
- ナイヤガラ・スパークリング:フルサイズとハーフサイズ。新酒を冬にオリ抜き(デゴルジュマン)したと書かれています。
公式サイトによれば、このワインは蘭越町内と、松原農園からの通信販売でしか手に入りません。ワイン3本分が入る冷蔵庫に収まりやすいオリジナルの「ワインボックス」も用意され、春と秋に分けて送ることもできます。買ったワインを北海道の地下蔵で次の新酒が出るまで1年間無料で預かるサービスもあります。3本以上(またはワインボックス1個以上)買った人には、年4回の「農園だより」が届きます。価格表は公式サイトのワインボックスのページに載っています。
訪ねる前に:看板のないログハウス
農園での直接の販売もあります。ただし公式サイトのshopページは、不在のこともあるので事前の連絡を勧めています。車があるのに姿が見えなければ畑にいることが多い、とも書かれています。北海道庁の資料では直売所あり、訪問・見学可(繁忙期は不可)、営業時間は不定です。試飲ができるかどうかは確認できませんでした。
所在地は北海道磯谷郡蘭越町字上里151-8、電話・FAXは0136-57-5758です。公式サイトの地図ページによれば、山に向かってまっすぐ登っていく一本道の左側に三角屋根のログハウスが建っていて、看板はなく、犬とヤギとぶどう畑が目印です。在庫や訪問の可否は時期で変わるため、出かける前に必ず電話かメールで確かめてください。
後志の中での位置づけ
後志地方には、町で最初のワイナリーである余市町の余市ワイナリー、区画ごとの造りを掲げる平川ワイナリー、小樽の北海道ワインなど、規模も考え方も違う造り手が並びます。その中で松原農園は、1990年代から家族でぶどうを育て、町と通信販売だけで届けてきた小さな造り手です。北海道の産地全体は第68講 北海道完全編に、スパークリングワインの基本は用語集にまとめています。
