ロンドンで出会った洋酒文化から、勝沼へ
日和ワイナリー(HIYORI Winery)は、勝沼の日川沿いに複数の造り手が集まる「勝沼ワイン村」の一角にあるワイナリーです。運営する日和株式会社の創業は2018年4月2日。コーポレートメッセージは「その日が、吉日。」です。
公式サイトの会社概要によれば、代表の早坂茉李さんは武蔵野美術大学を卒業後、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズで学び、当時のクラフト蒸溜所の隆盛をきっかけにワインやスピリッツ、カクテルの文化に魅了されました。帰国後に勝沼の東夢ワイナリー会長・高野英一氏と出会い、ワイナリーとクラフトブランドの設立を決めたと書かれています。
最初のワインhiyoriのお披露目は2020年11月3日、勝沼ワイン村の中央広場で開かれたイベントでした。発売したのは『鳥居平 メルロ 2019』『鳥居平 甲州 2019』『勝沼 小佐手 甲州 2019』『勝沼 甲州 2019』の4品目。日和はワインのほか、山梨県産の黄檗(キハダ)を使うトニックウォーター「kizashi」や、甲州ワインと国産ボタニカルのヴェルモットも手がけています。
鳥居平・小佐手・井戸尻——勝沼の地区を仕込み分ける
公式サイトのワインのページは、勝沼の畑をそれぞれのテロワールの言葉で紹介しています。
- 鳥居平(とりいびら)——甲府盆地の東端、標高約450〜550mの南西向き斜面。日照時間が長く昼夜の寒暖差があり、「勝沼最高峰のテロワール」と紹介。自社畑があり、標高約490mの区画でシャルドネも育てています。
- 小佐手(おさで)——鬢櫛川と田草川に挟まれた、小石の転がる水はけのよいエリア。
- 井戸尻(いどじり)——勝沼扇状地の中心で、食用ぶどうや桃の果樹園が多い地区。メルロを栽培。
- 菱平(ひしだいら)——標高約450m、粘土質に礫が混じる丘陵地。
- 夏秋(なつやけ)——笹子峠から吹く涼風「笹子おろし」で朝夕の寒暖差が大きい地区。
2026年5月のお知らせでは、梅雨入り前に鳥居平の斜面の自社畑で、甲州とシャルドネの約4,000房すべてに手作業で笠をかけたと報告しています。2024年からは、北杜市清里の標高約770mの畑で葡萄栽培クラブ「八ヶ岳ブロス」が育てたヤマ・ソービニオンの仕込みも始めました。
主な銘柄
公式サイトのワインのページと、2025年8月の2024ヴィンテージ発売のお知らせから。
- 『hiyori 鳥居平 甲州』——自社畑の甲州。2024年産は限定64本で、トロピカルフルーツを思わせる熟した果実の香りと厚みのある味わいと公式で紹介されています。
- 『hiyori 鳥居平 シャルドネ 2024』——小型水圧プレスで搾った澄んだ果汁を低温発酵し、瓶詰め前の約1か月をフレンチオーク樽で熟成したシャルドネ。
- 『hiyori 勝沼 小佐手 甲州 オレンジ 2024』——枝ごと足踏みで破砕し、赤ワイン酵母で1週間醸したあと6か月樽熟成、無濾過で仕上げたオレンジワイン。
- 『hiyori 清里 ヤマ・ソービニオン 2024』——全房で足踏み破砕し、ぶどう由来の乳酸菌でマロラクティック発酵。
- 『hiyori 鳥居平 メルロ』——辛口・ミディアムボディのメルロー。
- 『hiyori 勝沼 上川久保 甲州 2022』——ワイナリーのすぐそばの上川久保地区で、三代続く農家・風間数宏さんが育てた甲州。
2019年産と2020年産の甲州のうち5品目がGI Yamanashiの認証を得たと、公式サイトで報告しています。
訪ねる——不定期のワイナリーショップ
公式サイトのお知らせ(2023年3月20日)では、2023年4月1日から不定期でワイナリーショップを開け、hiyoriワイン各種の有料試飲と直売を行うと案内しています。それ以前、2020年12月のお知らせでは金・土曜の10:00〜16:30に営業し、畑に出て不在の場合があるとしていました。毎月第1土曜には勝沼ワイン村で「Chill Time」というイベントが開かれ、日和ワイナリーにも来場があったと報告されています。
現在の営業日・時間は公式サイトでは確認できませんでした。条件は変わることがあるため、訪ねる前に公式サイトのお問い合わせフォームや公式Instagramで確認してください。公式サイトによれば、甲州市勝沼ぶどうの丘の地下ワインカーヴでもhiyoriワインの有料試飲ができます。
アクセスは、車なら中央道の勝沼ICから勝沼バイパスを甲府方面へ向かい、下岩崎交差点を右折、ぶどう橋を渡ってすぐ右折して300m。電車ならJR中央本線の勝沼ぶどう郷駅からタクシーで約7分、特急の停まる塩山駅から約10分です。
勝沼ワイン村と、周りの造り手
勝沼ワイン村には、同じ勝沼2543番地にNikkawaワイナリー(SUN BROOK)があり、同じ勝沼町勝沼にはLa belle vigne(ラ・ベルヴィーニュ)も。日和の立ち上げに縁のある東夢ワイナリーも同じ甲州市にあります。大手の老舗が並ぶ勝沼で、地区ごとの小さなロットを仕込む新しい世代の造り手として、日和ワイナリーの一本は勝沼の畑の違いを知る手がかりになります。山梨全体の産地像は山梨の産地ガイドと第70講に、日本ワインの見取り図は第9講にまとめています。


