荒れた農地をぶどう畑に戻す
塩尻ファーム ドメーヌ・スリエは、長野県塩尻市の広丘郷原にあるワイナリーです。運営する株式会社塩尻ファームは、長野県の公式サイト「NAGANO WINE」によれば、塩尻市の建設・飲食業の会社が遊休農地を再生するために設立した会社とされます。2013年にぶどう栽培を始め、2019年にワイナリーを開きました。塩尻市のワインPRパンフレット(2021年)でも「2019年創業」と紹介されています。
公式サイトは、農家の高齢化や後継ぎ不足で荒れていった農地を再生することを「REVIVRE(ルヴィーブル)」と呼び、これを自分たちの原点としています。ワイナリー名の「スリエ(sourire)」はフランス語で「ほほえみ」の意味です。地元の人、造る人、飲む人を笑顔にすることを目標に掲げ、官民や産学の連携による地域づくりにも取り組むとしています。
1つの畑に1つの銘柄
もとが荒れた農地なので、ぶどう畑は塩尻市内に点在しています。公式サイトによれば、畑ごとに土や環境(テロワール)が違うため、それぞれの畑に合う品種を植え、畑ごとに分けて仕込んでいます。その結果として「1つの畑につき1銘柄」のワインが生まれる、というのがドメーヌ・スリエの考え方です。
畑の面積について、公式サイトには記載がありません。英国のワイン評論サイト「Wine Anorak」の2021年の取材記事では、約3ヘクタールが8区画に分かれていると紹介されていましたが、その後の変化はわかりません。
所在地の広丘郷原を含む一帯は、長野県が「桔梗ヶ原ワインバレー」と呼ぶ地域で、NAGANO WINEでもドメーヌ・スリエはこのワインバレーのワイナリーとして載っています。桔梗ヶ原は、寒い土地でのメルロー栽培を切り開いたことで知られる産地です。ドメーヌ・スリエの「メルロ119」も、塩尻で昔から行われてきた棚栽培の、樹齢40年以上のメルローから造られています。
2025年から新しい醸造責任者に
2026年7月のプレスリリースによれば、2025年はドメーヌ・スリエにとって醸造責任者が交代した節目の年でした。新しく醸造責任者になったのは、長年醸造を支えてきた唐沢義信さんで、30年以上の経験があり、「基本を積み重ねる」ことを大切にしたワイン造りをしたとされています。会社の代表取締役は御手洗大祐さんです。
同じリリースによれば、2025年ヴィンテージからは銘柄名の付け方も変わりました。これまでメルローのシリーズに付けていたローマ数字に代わり、品種・栽培方法・醸造と熟成の方法を3桁の数字で表す仕組みにしたとされます。ただし、それぞれの数字が何を意味するかは公開されていません。
新しい体制のワインは、フェミナリーズ世界ワインコンクール2026での金賞や、GI長野プレミアムの認定を受けたと発表されています。
2025年ヴィンテージのラインナップ
2025年ヴィンテージは2026年7月22日に発売されました。公式サイトやリリースで紹介されている主な銘柄は次のとおりです(価格は発売時の税込。2026年9月1日出荷分から価格改定があるため、最新の価格は公式で確かめてください)。
- メルロ119──樹齢40年以上の棚栽培メルロー。オークキューブ(小さな木片)を漬け込んで樽のような風味を加えた赤。4,950円
- カベルネ・ソーヴィニヨン320──同社初のカベルネ・ソーヴィニヨンで、GI長野プレミアムの認定銘柄。房ごと発酵させて造る。4,400円
- メルロ120「Code Ⅳ」──新しいメルローのシリーズの第1弾で、公式サイトでは海外コンクールでの初受賞銘柄とされる
- AKA──メルロー、ビジュ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、ブラック・クイーン、マスカット・ベーリーAの5品種をいっしょに発酵させた赤。3,520円(720ml)
- ビジュ・ノワール──山梨27号(甲州三尺×メルロー)とマルベックを掛け合わせた日本生まれの黒ぶどう。3,520円
- マスカット・ベーリーA──いちごの香りの赤。3,300円
- 白──ピノ・グリはフリーラン(最初に流れ出る果汁)、プレスラン(搾って得た果汁)、10月に摘んだレイトハーベストの3種類。ほかにソーヴィニヨン・ブラン
このほか、2024年ヴィンテージのブラック・クイーンも公式サイトに並んでいます。少量生産の銘柄が多いので、在庫は公式オンラインショップで確認してください。
訪ね方と買い方(2026年10月時点)
訪問の条件は、ここ1年ほどで変わっています。公式サイトによれば、ワイナリー見学は2025年9月10日で受付を終了しました。ワイナリーの本質であるぶどう栽培と醸造に力を注ぐため、とされています。
また、敷地にあったベーカリー・スリエが閉店したことにともない、直売所も2026年6月29日から一時休業しています。2026年7月20日のお知らせでは、自社の畑を望む試飲スペースと売店を「今秋」リニューアルオープンする予定とされました。2026年10月15日時点では、再開の日程はまだ発表されていません。
それまでの間は、予約制でワインを販売しています。
- 訪問の3営業日前までに、公式サイトの問い合わせフォームか電話(0263-53-5878)で連絡する(月曜に訪ねる場合は前週の水曜まで)
- 当面、土曜・日曜・祝日は休み
- 支払いは現金かPayPayのみ
- 車で行く場合は、連絡するときに伝えると敷地内の駐車場に案内される
遠方からなら、公式オンラインショップのほか、塩尻市内の酒店「リカーハウスながはら」や、道の駅木曽ならかわの「木曾くらしの工芸館」でも扱いがあるとされています。ワイナリーを訪ねるときの心得は第51講「ワイナリー訪問」にまとめています。
塩尻には、桔梗ヶ原のメルローで知られるシャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリーや、株式会社アルプス、サントリー信州塩尻ワイナリーといった歴史ある造り手から、ヴォータノワインのような小さな造り手までが集まっています。長野県全体の産地の流れは第72講「長野完全編」で解説しています。
