どんなワインか
ティニャネロは、フィレンツェの名門アンティノリが、本拠テヌータ・ティニャネロの単一畑から造る赤ワインです。公式はこのワインを「ひとつの道しるべ(マイルストーン)」と呼び、三つの「初めて」を挙げています。サンジョヴェーゼを初めて小樽(バリック)で熟成したワインであること。カベルネという非伝統品種をブレンドした最初の現代的な赤であること。そして、白ぶどうを使わずに造られたキャンティ・クラシコ地区で最初期の赤であることです。
スタイルは、サンジョヴェーゼの明るい酸と赤い果実を軸に、カベルネと樽が厚みと骨格を添える、力強くも気品のある赤と評されます。公式のテイスティングノートでは、2023年は熟したチェリーやざくろ、オレンジにハイビスカスやスミレの香り、カカオや鉛筆の芯のような甘いスパイスが続き、しなやかなタンニンと長く塩味を感じる余韻を持つと紹介されています。
畑と造り
ぶどうは、ティニャネロという名の単一畑からだけ収穫されます。面積は約77ヘクタールで、南西向き、標高350〜400メートル、石灰質に富む土壌です。テヌータ・ティニャネロは、キャンティ・クラシコの中心、グレーヴェ川とペーザ川の谷にはさまれたなだらかな丘にあり、319ヘクタールの敷地のうち約165ヘクタールがぶどう畑です。同じ丘には、もうひとつの看板ワイン、ソライアの畑もあります。
品種構成について、公式は「1982年以降、現在と同じブレンド」とし、近年の資料では主にサンジョヴェーゼに、少量のカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランと記しています。専門誌Decanterではサンジョヴェーゼ80%、カベルネ・ソーヴィニヨン15%、カベルネ・フラン5%と紹介されていますが、年ごとの公式資料には比率が示されていません。同誌の記事では、醸造責任者のレンツォ・コタレッラが、年々サンジョヴェーゼの比率を高めてきたと語っており、比率は年によって変わると考えるのが安全です。なお同記事によれば、2017年は生産量を34万本から27万本へ3割減らしたとされ、高級銘柄としては生産量の多いワインです。
造りは、円すい台形のタンクで発酵・醸しを行い、果皮から分けたあと小樽に移してマロラクティック発酵を行います。熟成はフレンチオーク(一部ハンガリー産)の主に新樽で、2021年は約15ヶ月、2022年と2023年は約13ヶ月。区画ごとに熟成させてからブレンドし、樽に戻して仕上げたあと、瓶でさらに12ヶ月寝かせて発売されます。
誕生の経緯
ティニャネロの前身は、1970年に単一区画から初めて造られた「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ・ヴィネート・ティニャネロ」です。このときのブレンドには、カナイオーロ20%と、白ぶどうのトレッビアーノとマルヴァジーアが5%含まれていましたが、すでに小樽で熟成されていました。1971年、キャンティ・クラシコではなくトスカーナの赤のテーブルワインとなり、「ティニャネロ」を名乗ります。1975年には白ぶどうをブレンドから完全に外し、1982年以降は現在と同じ構成になりました。
太陽をかたどったラベルは、イタリアのデザイナー、シルヴィオ・コッポラが1974年、1971年ヴィンテージの発売に合わせてデザインしたものです。ラベルの署名は、当主ピエロ・アンティノリが、自分を信頼してくれた父ニッコロへの敬意として入れたと公式は説明しています。また、ティニャネロは出来に納得できる年にしか瓶詰めされず、1972・1973・1974・1976・1984・1992・2002年には造られていません。スーパータスカン誕生の背景は生産者ページで紹介しています。
飲み頃と楽しみ方
瓶熟成を経て発売されるため、リリース時点でも楽しめますが、熟成にも向くワインと評されます。若いうちは早めに抜栓するか、デキャンタで空気に触れさせると香りが開きやすくなります。温度は16〜18℃前後、香りが広がる大ぶりのグラスが目安です。トスカーナらしく、ビステッカ(炭火焼きのTボーンステーキ)や、ジビエ、熟成したペコリーノなどと合わせるのが定番です。
同じ造り手のソライアや、ボルゲリの海辺のカベルネと飲み比べると、内陸のサンジョヴェーゼに軸足を置くティニャネロの個性がよく見えてきます。地区の全体像は銘醸図鑑 キャンティ・クラシコ、イタリアワインの見取り図は第7講 イタリア完全編で押さえられます。