どんなワインか
オーヴァーチュアは、「序曲」を意味する名を持つ、オーパス・ワンのセカンドワインです。グラン・ヴァンの名が「作品第1番」を意味するのに対し、その前に奏でられる一曲という位置づけで、名前の上でも対になっています。
公式は、オーヴァーチュアを伝統的な意味での「セカンドワイン」と説明しています。ぶどうは自社畑で有機栽培されたもので、収穫も醸造もオーパス・ワンと同じ注意と精度で行われます。違いはブレンドの段階にあります。醸造チームは収穫中から収穫後にかけて区画ごとのワインを厳しく評価し、新鮮さ、親しみやすさ、しなやかさといったオーヴァーチュアらしさを備えたものだけを選んで組み合わせます。
味わいは、熟した黒系果実を中心にした、親しみやすく果実味豊かなスタイルと紹介されます。公式のテイスティングノートでは、2023年はブルーベリーやブラックベリー、カシスにシダーやキャラメルの香り、口に含むとチェリーやラズベリー、ざくろのような果実がはじけると表現されています。
畑と造り
ぶどうは、オーパス・ワンと同じナパ・ヴァレー、オークヴィル西部の自社畑から収穫されます。畑は名畑トゥ・カロン内の2区画と、ワイナリーを囲むバレストラ、リバーの計4区画で、有機栽培(CCOFの基準)で管理されています。
品種構成は年によって変わります。初めての単一年表記となった2021年は、カベルネ・ソーヴィニヨン89%、カベルネ・フラン4%、プティ・ヴェルド4%、メルロー3%。果皮との接触は19日間、熟成は新しいフレンチオーク樽で19ヶ月半でした。セカンドワインとはいえ、新樽で長く熟成させる手間のかけ方は、グラン・ヴァンに近いものです。
2021年は、オーパス・ワンの歴史で2番目に雨の少ない乾いた年でした。水が限られたことで収量は平年を下回り、果実は凝縮感と風味に富んだと公式は記しています。収穫は8月31日に始まり、9月24日に終わりました。
誕生の経緯
オーヴァーチュアは1993年に生まれました。長いあいだ、複数の年のワインをブレンドしたノンヴィンテージとして造られ、ラベルには年号がありませんでした。転機は2021年ヴィンテージで、公式資料はこれを「オーパス・ワンのセカンドワインとして初めての単一年表記のボトル」と明記しています。その後も2023年のように年号入りでリリースされています。
ノンヴィンテージ時代のボトルと、年号入りの新しい世代とでは、性格が異なる可能性があります。購入時にはラベルの年号の有無を確かめておくとよいでしょう。セカンドワインの考え方そのものは、ボルドーの格付けシャトーにならったもので、オーパス・ワンの生い立ちを考えれば自然な選択と言えます。家の歴史は生産者ページで紹介しています。
飲み頃と楽しみ方
公式は2023年について「今から楽しめる」としつつ、長く表情豊かな余韻が数年の熟成も期待させると説明しています。若いうちに開けるなら、少し早めに抜栓するか、デキャンタで空気に触れさせると果実の香りが開きやすくなります。温度は16〜18℃前後、ボルドー型の大ぶりのグラスが目安です。
グラン・ヴァンのオーパス・ワンが長期熟成を前提にしたワインなら、オーヴァーチュアはその家の輪郭を若いうちにつかめる入口です。米国の公式価格は、2023年ヴィンテージでオーパス・ワンの490ドルに対してオーヴァーチュアは210ドルと、半分以下に設定されています。日本でも価格はヴィンテージや市況で変わりますが、グラン・ヴァンより手に取りやすい価格帯で流通しています。同じ年の両方を並べ、ブレンドの選び方の違いを感じてみるのもおもしろい飲み方です。カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴や、ナパという産地の背景は第12講 カリフォルニア完全編で押さえられます。