どんなワインか
サッシカイアは、トスカーナ州のティレニア海沿岸、ボルゲリにあるテヌータ・サン・グイドの赤ワインです。名前は畑に多い**石や小石(サッシ)**に由来すると、生産者自身が説明しています。マリオ・インチーザ・デッラ・ロケッタ侯爵が、この石の多い土地をボルドーのグラーヴ地区に似ていると考え、1944年に標高およそ400mのカスティリオンチェッロに1ヘクタールあまりのカベルネ・ソーヴィニヨンを植えたのが始まりとされます。
1945年から1967年まで、サッシカイアは家族と親しい友人のためだけのワインでした。市場に出た最初のヴィンテージは1968年で、発売は1971年です。生産者の公式サイトは、評論家ルイジ・ヴェロネッリが1974年に寄せた賛辞を、このワインの価値を最初に認めた言葉として紹介しています。誕生の経緯と、テーブルワイン扱いから専用DOCに至るまでの流れは、海外ワイナリー:サッシカイアと銘醸図鑑:ボルゲリで詳しく扱っています。
味わいは、ボルゲリの同輩に比べてしなやかで香り高く、どこか涼しげと評されることの多いスタイルです。ワイン・スペクテーター誌は2015年ヴィンテージを、カシスやブラックベリー、スミレの香りを持ち、生き生きとした酸が長い余韻を導くワインとして評しています。
畑と造り
公式サイトによると、ぶどうは自社畑のカスティリオンチェッロ、アイア・ヌオーヴァ、チェッレータ、サッシカイア・ディ・ソプラ、サン・マルティーノで育てられています。2,500ヘクタールの敷地のうち、土壌・微気候・向きの面で最も適した土地だけをぶどう畑にしている、というのが生産者の説明です。土壌は泥灰岩に富む石灰質、石や小石、一部に粘土が混じる複雑な構成で、畑は西〜南西を向きます。標高はおよそ100〜400mとされますが、ページによって100〜360m、100〜300mと表記に幅があります。
品種はカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランです。公式の年次資料は比率を示していませんが、一般にはカベルネ・ソーヴィニヨン85%、カベルネ・フラン15%程度と紹介されます(1993年までは比率が異なり、カベルネ・フランが30%の年もあったとイタリアの専門媒体は伝えています)。原産地呼称の規定はカベルネ・ソーヴィニヨン80%以上です。
造りは年次資料から具体的に読めます。2021年は、選果台でぶどうを選り分けたあと、28〜29℃を超えない温度管理でアルコール発酵を行い、マロラクティック発酵はステンレスタンクで自然に進めました。その後は**新樽約40%、1回使用約40%、2回使用約20%**のフレンチオークのバリックで24か月熟成させ、タンクでのブレンドと瓶熟成を経て出荷されています。2020年は新樽約45%で25か月あまり。2015〜2019年の資料では、フレンチオークを主体に一部アメリカンオークも使い、熟成期間は20〜25か月の間で作柄に合わせて決めると説明されています。
ボルゲリの中での位置づけ
テヌータ・サン・グイドの赤は、サッシカイア、グイダルベルト(2000年〜)、レ・ディフェーゼ(2002年〜)の3本です。生産者はこれらを「グラン・ヴァンとセカンド」という序列ではなく、それぞれ個性を持つ3つのワインとして紹介しています。グイダルベルトはカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー、レ・ディフェーゼはカベルネ・ソーヴィニヨンとサンジョヴェーゼを組み合わせ、どちらもサッシカイアより早くから親しめる設計です。
同じボルゲリで、のちに生まれたオルネッライアと比べると、オルネッライアはメルローやプティ・ヴェルドも使う、より豊潤な方向性と評されます。同じ海辺の丘で、品種構成と熟成の考え方がどう違うかを見比べるのも面白いところです。
飲み頃と楽しみ方
サッシカイアは長期熟成型とされ、若いうちはタンニンが引き締まって感じられることがあります。ワイン・スペクテーター誌は2015年ヴィンテージの飲み頃を2023〜2042年としており、少なくとも数年以上寝かせてから開けるのが一般的な目安です。ただし熟成の進み方はヴィンテージと保管状態で変わります。
温度は16〜18℃前後、ボルドー型の大ぶりなグラスが目安です。若いヴィンテージは、少し早めに抜栓して空気に触れさせると香りが開きやすいでしょう。仔羊や牛肉のロースト、ジビエなど、しっかりした肉料理と合わせるのが定番です。価格は3.5万円前後からが目安ですが、ヴィンテージと為替で大きく変動します。イタリアワイン全体の中での位置は第7講 イタリア完全編で整理しています。